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小規模事業者は、差別化ではなく穴埋めで勝負
利用者への関わり方を変えていく
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之今年度に入り、新たに通所リハビリと通所介護のコンサルティングが増えています。特徴的なのが、これらの事業所は、通所リハビリでも定員20名や定員10名の地域密着型通所介護の小規模な通所で、さらに全部1日型の通所です。その管理者の皆さんが口をそろえて言っているのは 「以前は、稼働率70%くらいあったのに、今は50%まで落ちています」 ということです。
▼なぜ、小規模事業所が苦しいのか
例えば、定員20名の通所の場合、定員1名当たりの売上は5%もあります。一方、定員50名だと2%です。よって、定員1名当たりの売上比率が高いため、利用者が1名休むだけで、その日の売上が5%落ちてしまいます。
令和5年度の介護経営実態調査では、令和4年度の通所リハビリの収支差率は、法人税等差引後では 「2.5%」 しかありません。そのため 「トントン」 くらいで運営していた通所リハビリは、利用者が1名減るだけで 「-5%」 となり、そのまま赤字に転落してしまいます。
また、1日型の通所では入浴を提供している場合が多く、昨今の水道光熱費の高騰は、かなり収益に影響を与えています。ある通所では、水道光熱費が以前の2倍になったそうです。昨年度は、何度か国や自治体からの補助金があり賄えましたが、最近はその補助金もないため、事業者はそのまま水道光熱費を支払わなければなりません。当然、それ以外に人件費も上がってきており、 「収益減」 と 「費用増」 の二重苦になっています。
令和5年度の介護経営実態調査では、令和4年度の通所リハビリの収支差率は、法人税等差引後では 「2.5%」 しかありません。そのため 「トントン」 くらいで運営していた通所リハビリは、利用者が1名減るだけで 「-5%」 となり、そのまま赤字に転落してしまいます。
また、1日型の通所では入浴を提供している場合が多く、昨今の水道光熱費の高騰は、かなり収益に影響を与えています。ある通所では、水道光熱費が以前の2倍になったそうです。昨年度は、何度か国や自治体からの補助金があり賄えましたが、最近はその補助金もないため、事業者はそのまま水道光熱費を支払わなければなりません。当然、それ以外に人件費も上がってきており、 「収益減」 と 「費用増」 の二重苦になっています。
▼業態変化も難しい
定員20名程度だと、スペースにも限りがあります。デイルームの真ん中に大きな机と椅子が配置されているため、リハビリ機能を強化しようとしても、マシーンを置く場所がなかったり、集団で体操をすることさえ難しいところもあります。さらに、職員も少なく、入浴にほとんどの職員の手間を取られて、他のことがまったくできないこともあります。
つまり、スペース的な問題と職員数の少なさで、自由なプログラムが提供できず、その状態では新規利用者が来るはずもなく、徐々に利用者が減少しています。
つまり、スペース的な問題と職員数の少なさで、自由なプログラムが提供できず、その状態では新規利用者が来るはずもなく、徐々に利用者が減少しています。
▼A通所介護の改善事例
この4月からA通所介護(定員20名:通常規模)の改善の支援に入りました。昨年度の平均稼働率が50%~60%で、収益も平均で160万円でした。A通所介護は、入所施設の1階で運営しているため、費用の計算は、家賃や水道光熱費はほぼ按分されていないにも関わらず、人件費だけでも赤字の状態で、いわゆる 「人件比率100%以上」 の状態でした。
筆者が市場調査を行った結果、その地域には軽度者が多いため、1日型ではなく、リハビリ特化の半日型に変更してはどうかと提案しました。しかし、スペースが狭いほか、送迎車も2台しかなく、リハビリ特化型への変更はできませんでした。
次に筆者が提案したのは 「1日型での差別化戦略」 です。差別化というと 「他の施設との違いを出す」 と思われるかもしれませんが、それをやってもほぼうまくいきません。それは、1日型の通所の場合 「食事、入浴、レクリエーション」 はどの通所でもやっており、そのなかで差別化しても、あまり違いが分からないからです。
では、どのように差別化するのかというと 「今の利用者に“もっと”必要なこと」 です。筆者は、これを 「差別化戦略」 ではなく 「穴埋め戦略」 と勝手に呼んでおり、その方法について職員全員に意見を出してもらいました。下表を見ていただくと分かる通り、職員のちょっとした利用者への関わり方を変えていくだけです。
筆者が市場調査を行った結果、その地域には軽度者が多いため、1日型ではなく、リハビリ特化の半日型に変更してはどうかと提案しました。しかし、スペースが狭いほか、送迎車も2台しかなく、リハビリ特化型への変更はできませんでした。
次に筆者が提案したのは 「1日型での差別化戦略」 です。差別化というと 「他の施設との違いを出す」 と思われるかもしれませんが、それをやってもほぼうまくいきません。それは、1日型の通所の場合 「食事、入浴、レクリエーション」 はどの通所でもやっており、そのなかで差別化しても、あまり違いが分からないからです。
では、どのように差別化するのかというと 「今の利用者に“もっと”必要なこと」 です。筆者は、これを 「差別化戦略」 ではなく 「穴埋め戦略」 と勝手に呼んでおり、その方法について職員全員に意見を出してもらいました。下表を見ていただくと分かる通り、職員のちょっとした利用者への関わり方を変えていくだけです。
【穴埋め戦略】
- 送迎時に、利用日以外の様子を聞く
- 入浴は、その人のペース(時間)に合わせる
- 選択できるアクティビティーを増やす
- どんな小さな生活の困りごとでもスタッフが相談に乗る
- イベントは、利用者と一緒に準備から進行まで行う
- 食事は家庭菜園の自家製野菜で作る
この穴埋め戦略を実施し、3か月が経つと、静かだったデイルームは活気にあふれ、利用者と職員が一緒になって笑顔がみられるようになりました。さらに、ケアマネジャーへの営業活動も少しずつ反応が出始め、新規利用者が増加しました。
そして、半年が経過し、稼働率が60%を超え、売上も200万円を超えたところで、定員を20名から18名に減らして地域密着型通所介護へ移行してはどうかと提案しました。通常型より地域密着型の方が、単価が3割高く、今の利用者数でも260万円まで上がります。また、定員を18名にしてもまだ空き枠に余裕があるため、300万円近くの収益が見込めるようになります。
【2024. 10. 15 Vol.602 医業情報ダイジェスト】
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