組織・人材育成

【続き】一生懸命伝えたら、伝わる?

指導すればするほど伝わらない院長先生のお話
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
筆者 「そうなのですね。2つお伝えしたいことがあります。1点目は 『伝えたこと=伝わったこと』 という式は成り立たないこと、2点目は 『分かったこと=行動が変わること』 という式も成り立たないことです。特に2点目は信じがたいかも知れません。
人は感情が動くことで行動が変わります。例えば、困っていることがあれば、それをどうにかしようとする気持ちが動くので改善行動に繋がります。逆に、健康な食生活が大切なことは多くの人が理解していると思いますが、理解していても不健康な食生活を行うことはあるのです。つまり、新人スタッフたちにとって行動を変えることが良いことであるという意味付けがあると感情を動かすことができるため、行動変容に繋がりやすくなります。新人スタッフたちは今回の勉強会をどう受け止めているのでしょうか?新人スタッフたちにとっての意味付けは彼らの中で生まれるものですので、残念ながら院長先生がいくら必要性を訴えても行動が変わるとは限らないのです」

院長先生 「仕事なのだから、院長である私が『こうしてほしい』 と伝えたことは問答無用でやるべき……こんな風に思っていた気がします。しかし 『院長が言ったから変える』 という仕事の仕方は私の望んでいることではありません。患者さんのために、一緒に働く仲間のために、スタッフが自ら考えて行動できる組織にしていきたいと思っています。スタッフがどう考えているのか、どう理解しているのかを聞くことよりも院長である自分の考えを押し付けることを優先する意
識が強いことを反省しました。スタッフ一人ひとりに考える力を身に着けてほしいと思っているのであれば、仕事の中でもスタッフの考えを聞く意識をもたなければなりませんね」

この後、院長先生は新人スタッフたちと勉強会の意図と補助を行うときの考えについて意見交換する時間を取ったのでした。自分の考えを表出することに不慣れな新人スタッフたちは最初言葉がなかなか出なかったようですが、時間が経つにつれ少しずつ発言が見られるようになったそうです。

このケース、どのような感想を持ちましたか?このように些細なことの積み重ねで業務に支障が出ることはよくある話だと思います。繊細な新人スタッフに対して 「注意をする」 ことを躊躇する場面は多くみられますが、このケースのようにお互いにより良い行動ができるよう、自分たちの行動を振り返り、話し合う機会を作ってはいかがでしょうか?このケースがスタッフ全員にとってのより良い姿を実現するためのコミュニケーション方法について考えるきっかけとなれば幸いです。


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【2024. 10. 1 Vol.601 医業情報ダイジェスト】