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増加するM&A詐欺、その対策とは?

リスク管理のポイント
アシタエ税理士法人 税理士  薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀

M&Aが多い薬局業界

薬局業界においてM&Aが多いことは、皆さんご存知のことと思います。私自身、この 「保険薬局情報ダイジェスト」 で何度かM&Aについて取り上げてきました。また、全国の薬局経営者の方々からもM&Aに関するご相談をいただいています。小規模・中規模を問わず、買い手・売り手のどちらの立場でも相談を受けており、そのお悩みは多岐にわたります。
薬局業界でのM& Aは、事業の継続や拡大、後継者不足の解決策として重要な役割を果たしています。しかしながら、M&Aのプロセスにはリスクが伴い、不適切な契約や詐欺的な手口に巻き込まれる可能性もあります。そのため、M&Aに対する正しい知識と信頼できるパートナーの存在が不可欠です。

最近話題のM&A詐欺

最近、M&A業界で問題となっている詐欺的な手口があります。M&Aの際に売り手企業が持つ借入金に経営者保証が付いている場合、買い手企業がその保証を移行する手続きを行わずに、資産だけを抜き取り、借金を元の売り手に押し付けるといった手口が問題視されているのです。
このような詐欺的な手口は、特に後継者不足に悩む法人がターゲットとなりやすい傾向があります。経営者が高齢で後継者を探している状況では、M&Aの話が持ち上がると、一見それが事業継続の救済策に見えることがあります。しかし、実際には買い手が資産を奪い、負債だけを残して去ってしまうような問題もあるのです。
こうした事例を防ぐためには、買収相手や仲介業者の信頼性をしっかりと確認することが重要です。また、契約内容についても細かく確認し、経営者保証や借入金の移行など、リスクの所在がどこにあるのかを明確にする必要があります。

信頼できるパートナーを選ぶ

こうした状況を受け、国も改善策を講じていますが、なぜM&Aにこのような詐欺まがいの手口が発生するのかというと、業界内での法整備がまだ十分でないことが一因であると考えます。
私のもとにも、普段から多くの経営者の方からM&Aに関するご相談をいただいています。なかには、ご自身で契約を進めようとする方もいますが、M&Aに伴う法的リスクは非常に複雑であり、専門知識を持たない方が理解するのは難しいものです。買い手側は支払対価以上のリスクを負うことがあり、売り手側も譲渡後に予想外のリスクを被る可能性があります。そのため、信頼できるパートナーを選ぶことが、M&Aの成功にとって非常に重要です。
具体的には、信頼のおける税理士やM&Aアドバイザーを選定し、契約に至るまでのプロセスにおいて適切なサポートを受けることが推奨されます。また、仲介手数料が高いという声もありますが、それを理由に安易に自己判断で契約を進めることは大きなリスクを伴います。専門家のサポートを受けることで、詐欺的な手口や不利な契約をある程度避けることができます。
また、こんな話をしていると、仲介契約ではなく、時間単価の相談という形でご相談いただくこともあります。しかしながら時間単価の相談では、私のほうも全部確認できるわけではないので、最後まで責任を持つことが難しい場合もあります。そのため、適切な手数料を支払ってでも信頼できる仲介業者や専門家を活用し、M&Aの安全性と確実性を高めることが重要です。

リスク管理のポイント

M&Aを進める際に重要なのは、リスクをいかに管理するかです。具体的に以下のポイントに注意することが推奨されます。

1. 買収相手の信用調査を徹底する
買収を持ちかけてきた企業が本当に信頼できるのか、過去の実績や財務状況を詳細に調査することが必要です。企業の実績を確認し、財務健全性をしっかり見極めることが、後から起こり得るリスクを減らすために非常に重要です。

2. 契約内容の細部まで確認する
契約に含まれるリスクや経営者保証の取り扱いについて、細部まで確認し、納得することが大切です。特に、契約内容に曖昧な点がないか、不利な条件が含まれていないかを専門家とともに精査することが重要です。

3. 専門家の協力を受ける
税理士や弁護士、M&Aアドバイザーなどの専門家に依頼し、契約内容を精査してもらうことでリスクを最小限に抑えることができます。専門家の知識と経験を活用することで、予想外のリスクを防ぎ、安全な取引を行うことが可能になります。

最後に

M&Aは後継者不足の解決策として非常に有効な手段ですが、リスクを理解し、信頼できるパートナーと連携して進めることが重要です。
信頼できる専門家と協力し、正しい情報を基にして意思決定を行うことで、安心して事業を承継することができるようになります。悪質なM& Aに巻き込まれないためにも、十分な注意と準備を心がけましょう。薬局経営者としての未来を守るために、信頼のおけるパートナーを選び、確実な一歩を踏み出していただきたいと思いま
す。


【2024.12月号 Vol.343 保険薬局情報ダイジェスト】