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地域から選ばれているクリニックが実践している患者対応のポイント
医師一人ではなくチーム全員で患者さんをみる
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦【相談事例】
開業1年目のクリニックの院長(大阪府、整形外科)より 「今年の5月に開業しました。開業以来、看護師の妻にも手伝ってもらっています。妻から私の診察室でのコミュニケーションは上から目線で患者満足度を上げるような対応ではないと指摘されました。医師になって20年間、患者対応について指摘されたことがなかったのでショックを受けています。他院の院長は患者さんの満足度を上げるためにどのような対応やコミュニケーションをとっているのでしょうか。他のクリニックの事例などを教えてほしい」 という相談を頂きました。
【回 答】
患者満足度の良し悪しは治療そのものだけではなく、 「患者対応」 のつまずきに依るところも大きいと思います。そこで、今回は多くの患者さんから選ばれているクリニックの院長や看護師、その他医療スタッフが実践している患者対応のポイントをまとめました。
ポイント1. 初診は通常の1.5倍の時間と手間をかける意識で丁寧にコミュニケーションをとる
弊社クライアントの整形外科クリニックのA院長は新患の方が診察室に入ってきたら、まず 「立って」 「挨拶して」 「名乗る」 ことを開業当初から徹底しています。A院長曰く、患者さんは痛みや不安を抱え、何とかしてもらおうと受診しています。患者さんの気持ちを知るために、とにかく1分間、患者さんの話を聴くことを意識して実践しているそうです。話の途中で、 「それはこういうことです」 「それは心配いりません」 などと結論付けて話の腰を折らないよう傾聴することを徹底することで、 「話を聴いてもらえた」 「苦痛を受け止めてもらえた」 と患者さんに感じてもらえます。そうすると、たとえ3時間待たされたとしても 「来てよかった」 と思ってもらえるため、長年実践されているとのことです。
ポイント2. 患者さんを個人として尊重していることを示し信頼関係を構築する
「その他大勢の一人」 ではなく、個人として認識されていると実感できれば、医師への親近感はぐっとアップします。 「〇〇さん、おはようございます」 「〇〇さん、どうぞお大事に」 など、患者さんの名前を口に出して語りかけることは、良好な信頼関係づくりの第一歩です。また、病人としてではなく生活者として、一人の人間として接する姿勢を心がけましょう。たとえば、患者さんとの会話をメモか、電子カルテに記録しておき、次回の診察時に 「〇〇の旅行はいかがでしたか?」 と話題にする。病気以外の話題を切り出すことで緊張もほぐれます。
ポイント3. 目的や詳細を説明しながら処置や検査を進める
患者さんにとって医療機関は特別な場所であり、検査も治療も多くは初めての体験です。 「いまから〇〇のために点滴をしますが、1時間程度かかります。お手洗いはよろしいですか?」 「〇〇を調べるために採血しますね。最初だけ、少しチクッとします」 など、処置や検査に先立ち、 「なぜ」 「何を」 するのか、説明・声がけをしながら進めることで、緊張や不安をできる限り和らげるよう努めましょう。
ポイント4. 治療の見通しとゴールを医師・患者間で共有する
診断結果や治療方針は、画像や図などを示しながらビジュアル的に、専門用語を使わずにわかりやすく伝える努力をしましょう。大事なことを伝える場面ではアイコンタクト、苦痛に対しては患者さんに触れる 「手当て」 の力も活用することで安心感を与えることができます。また、 「実際、どのくらいの期間治療を続け、どのような状態になれば治療を終えることができるのか」 がわからずに、不安に感じている患者さんは少なくありません。治療期間とゴールを患者さんと共有することで、先の見えない不安からくるドロップアウトを防ぎましょう。
ポイント5. 「聴く姿勢」 をみせて相談しやすい雰囲気に
診察の最後に 「ほかに何かありませんか?」 と声をかけ、言い出せなかったことや遠慮して聞けなかったことを切り出しやすい環境を整えることをお勧めします。
ポイント6. 医師一人ではなくチーム全員で患者さんをみる
すべてを医師一人で担うことは不可能です。たとえば、看護師などが診療に立ち会い、緊張やパニックで医師の話に納得・理解していない患者さんのフォローを行うなど、医療職から事務に至るまでスタッフ全員で患者さんを見守る体制を構築し、それぞれの視点で得た情報を共有する仕組みを構築していただきたいと思います。
最後にコミュニケーション力も医師の臨床能力の大切な要素ですが、前提として 「医師は患者にとって偉大な存在で気軽に相談できない」 と認識していただきたいと思います。目線を患者と同じ高さに保ち、威圧感を与えないことを心がけるだけでも患者対応はぐんとレベルアップします。ポイント1~6を参考に、ご自身に合う「患者対応」を確立していただきたいと思います。
【2024. 11. 15 Vol.604 医業情報ダイジェスト】
最後にコミュニケーション力も医師の臨床能力の大切な要素ですが、前提として 「医師は患者にとって偉大な存在で気軽に相談できない」 と認識していただきたいと思います。目線を患者と同じ高さに保ち、威圧感を与えないことを心がけるだけでも患者対応はぐんとレベルアップします。ポイント1~6を参考に、ご自身に合う「患者対応」を確立していただきたいと思います。
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