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人を動かす

コミュニケーションで大切にしていること
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
デール・カーネギー著の 『人を動かす』 をご存じでしょうか?
私が学生時代に、ある経営者の方に薦められて出会った一冊です。当時は、読書の習慣がほとんどありませんでしが、この本をきっかけに読書の素晴らしさを知り、本を読む習慣が身につきました。どちらかというと自己中心的な考えで行動していた私ですが、この本を読んでから、相手の立場に立ち、柔軟に物事を考えるようになったと感じています。
病院や薬局などの職場で人間関係に悩んでいる方も多いかと思いますので、この 『人を動かす』 に書かれている内容をもとに、コミュニケーションで私が大切にしていることをご紹介します。

■人を動かすという本

1936年に出版された本ですが、今でも色褪せることなく、多くの人々に影響を与え続けている名著です。人間関係やコミュニケーションに役立つ考え方や具体的なスキルについて書かれています。大きく4つのパートに分かれており、 「人を動かす3原則」  「人に好かれる6原則」  「人を説得する12原則」  「人を変える9原則」 と、対人関係において大切なポイントが数多く記されています。
どの原則も、読んでいると当然のように感じられる内容ですが、実際に実行するとなると難しいことが多いです。何度も読み返し、意識して少しずつ自分に取り入れていくことが重要だと感じています。

■相手には相手の正義がある

「相手には相手の正義がある」 (盗っ人にも五分の理を認める)という原則があります。学生時代に一番衝撃を受けたのは、この考え方でした。相手が主張していることも、その立場に立てば正しく、自分の主張もまた、ひとつの正義にすぎないということです。
職場やプライベートでも、誰かと意見が対立することは多々あると思います。まず、 「正義は人それぞれだ」 という意識を持つかどうかで、コミュニケーションの質が大きく変わります。また、相手の立場に立ち、相手の正義を理解しながら、自分の正義との妥協点を見つけることで、対立を和らげたり回避したりすることができるため、この考え方は非常に重要だと思っています。

■相手に関心を抱く

相手の関心を引きたいのであれば、まず自分から相手に関心を寄せることが必要だという原則があります。人は基本的に自分を大切にしたい生き物です。そのため、コミュニケーションでは自分のことを話してしまいがちですが、まずは相手に興味を持ち、 「相手のこと」 を聞き出すことの重要性が説かれています。
少し意識するだけで、コミュニケーションは大きく変わります。相手の話す言葉に耳を傾け、熱心に関心を寄せることで信頼が深まり、最終的には相手からも自分に関心を持ってもらえるということを、さまざまな場面で実感しています。この考え方は、対人関係はもちろん、患者さんやそのご家族とのコミュニケーションにも大いに役立つと思います。

■名前を覚える

私たちにとって最も大切な関心事は自分自身であり、その象徴が名前です。名前は生まれてから何度も呼ばれているため、自然と意識するものです。誰かに名前で呼ばれると嬉しく感じますし、反対に、少しでも名前を間違えられると、嫌だとは感じなくても何か気になってしまうものです。
初めてこの本を読んだ時は、 「名前なんて本当にそんなに意識されるのかな?」 と疑っていましたが、意識して相手の名前を呼ぶようにすると、反応が変わることを何度も経験しました。久しぶりに会った時に、自分の名前を覚えていてくれたら嬉しくなりますよね。これは、店舗での患者さんとのコミュニケーションでも非常に大切なことだと思います。ぜひ、相手の名前をしっかり呼んでみてください。

■まとめ

今回は一部しかご紹介できませんでしたが、 『人を動かす』 は対人関係を円滑にするための大切な要素が詰まった一冊です。対人関係はもちろん、患者さんとのコミュニケーションにおいても、貴重なヒントが数多く書かれています。冒頭でお伝えした通り、私自身、この本を読んでからコミュニケーションの取り方が変わり、相手を主体にした柔軟な考え方ができるようになり、性格も以前より穏やかになったと感じています。
人間関係やコミュニケーションは非常に奥深いものであり、今でもこの本を読み返すたびに新たな発見や気づきがあります。これも読書の素晴らしさの一つです。
患者さんとのコミュニケーションにヒントを得たい方、対人関係に悩んでいる方、また経営層の方にも、ぜひ一度読んでいただきたい本です。


【2024.11月号 Vol.342 保険薬局情報ダイジェスト】