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続・薬局における選定療養制度

疑義解釈や個別事項などについて
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方孝行
10月号では薬局における選定療養制度を取り上げた。選定療養制度はすでに開始され、大きなトラブルはないとされているが、皆様の薬局ではいかがだろうか。選定療養が開始になるまでにさまざまな疑義解釈が出され、医療上必要な場合とそうでない場合、福祉受給者に対する特別料金の考え方、供給不安定に伴う長期収載品の使用に対する特別料金の考え方など、現場のさまざまなシチュエーションに対応できるように企業担当者は頭を悩ませたのではないか。今回は選定療養に関する続編として、疑義解釈や個別事項などについて触れていきたい。

そもそもの選定療養の考え方については、すでに10月号で記載しているため割愛するが、疑義解釈その1において、▼医療上必要と認められる場合について▼後発品の供給不安定による調剤不能の場合について▼公費負担医療についての大きく3点が整理されている。
医療上必要と認められる場合については、4項目に分けて記載されている。①長期収載品と後発医薬品で承認されている効能・効果の相違がある、②後発品使用時の副作用発現の有無・併用薬との相互作用、後発品を使用した際の効果の差を医師が認めている、③学会ガイドラインなどで状態が落ち着いてる患者に対して後発医薬品の変更を推奨しないと記載がある、④剤型の変化による服用の困難および一包化不適など患者コンプライアンスに大きな影響を与えるといった点である。
さらに④においては、薬剤師の判断で行うことが可能であり、疑義照会も不要となっている(①~③は疑義照会が必要)。つまり、薬剤師の判断のもとで保険給付として調剤することが可能となる。もちろん、その後の処方医への情報提供は必要になるが、これを契機に医療機関との連携を強化し、患者へのフォローアップを通じてかかりつけ薬剤師の同意をいただくなど、薬剤師の職能を発揮する機会が存分に見え隠れしているように感じる。また、その後の疑義解釈において、外用剤の配合変化による長期収載品使用の妥当性を薬剤師が判断した場合においても④として対応することが可能とされている。

続いて、後発品の供給不安定による調剤不能の場合においては、後発品不備として保険給付のもと、長期収載品調剤を可能としている。ここで注意が必要なのは、ここでいう供給不安定とは、出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで現に、当該保険薬局において後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断する、という点だ。実際の薬局現場において、後発品調剤を行うことが困難である場合には、後発品不備による保険給付での長期収載品調剤という対応を取る必要がある。

最後に公費負担医療については、基本的に医療保険に加入している患者においては 「対象外はない」 という回答になっている。そのため、今まで費用負担がなかった 『国の公費負担制度対象者』 や 『こども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象者』 においては特別料金が発生することとなり、薬局での丁寧な説明と対応が必要になるだろう。

その後、疑義解釈その2において、生活保護受給者における選定療養の考え方が整理された。生活保護受給者において、長期収載品を使用する場合は医療上必要と認められた場合に限られているため、特別料金を徴収するケースは生じないとされている。一方で薬局現場においては、こういったケースは散見されるものである。今回の疑義解釈の中で、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等又は調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならない、ということが明記された。そのため、患者負担が生じることになり、これも薬局によって対応に苦慮するケースだろう。

今後時間が進むにつれて、いろいろな個別事項が生じるだろう。その都度薬局で丁寧な説明を行い、患者理解を得ることは容易ではないことが想像される。また9月30日に突如として出てきた労災保険における選定療養の考え方は現場を混乱させただろう。薬局個々の説明や制度理解は必要な努力であるが、国として国民の理解を得られるよう十分な説明を行う必要もあるのではないかと感じる。いずれにしても、薬剤師は患者への説明を行い、必要に応じてフォローアップを行い、患者との信頼関係を築くことが中長期的な視点からも重要になる。また要件を満たせば、 「特定薬剤管理指導加算3-ロ(5点)」 の加算を算定し、薬局経営を意識することもまた必要な視点になるだろう。


【2024.11月号 Vol.342 保険薬局情報ダイジェスト】