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人件費比率を下げるために必要な部署の人を増やす
高額薬剤の登場で人件費比率40%台でも赤字のがん拠点病院
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ 改定で6月〜9月の4ヶ月DPCデータを10月下旬提出
2024年診療報酬改定の新点数施行が従来と違って4月からではなく、6月から実施された。政府の医療DX推進本部が、中医協に対して電子カルテベンダーや医療機関の働き方改革のために申し入れて2カ月後ろ倒ししたからだ。最も気になるのは新点数施行後の6月以降における病院経営がどうなるかだ。これまでの改定ならば、4月〜6月の新点数DPCデータを7月下旬までに厚労省へ提出するため、同データをもとに8月には新点数影響の分析ができた。ただし、今回は6月より新点数施行であり、さらに6月〜9月の4カ月データを10月下旬までに提出となった。つまり、現時点(10月中旬)だと、そのデータが完成し始めた頃であり、分析はこれからになる。
■ 3病院団体調査では6月の病院経営状況は減収減益へ
改定後の速報値データとして、2024年6月の経営状況を調べた 「202 4年度病院経営定期調査」 (369病院)が、日本病院会と全日本病院協会、日本医療法人協会の3病院団体によって公表された。それによると前年同月比で 「減収減益」 となっていた。感覚的にはベースアップ評価料がらみで入院料や初再診料が上がったが、人件費や水道光熱費等の経費も上がっているために 「増収減益」 かと思っていた。それが「減収」 とは意外だった。
調査によると全369病院の2024年6月の医業収益(稼働100床当たり)は前年同月比0.1%減の2億1835万円、医業費用は0.9%増の2億4 015万円で、医業利益は前年同月比で241万円減のマイナス2180万円となった。医業外費用は前年同月比46万円減(20.8%減)だったものの医業外収益は158万円(20.2%)の減収となり、経常損益は前年同月比353万円減のマイナス1732万円となっていた。病床区分別(稼働100床当たり)の2024年6月の状況を見ると、一般病院(258病院)の医業利益は前年同月比323万円減収のマイナス2715万円、経常利益は443万円減収のマイナス2168万円となり、赤字幅が増加している。
一方、療養、ケアミックス病床(79病院)では医業利益が前年同月比180万円増のマイナス331万円、経常利益が121万円増のマイナス225万円となり、赤字幅は抑えられた。精神病床(16病院)では、医業利益が前年同月比45万円減162万円、経常利益が108万円減の242万円となり、黒字幅が減っている。
2023年度の全病院の100床当たりの医業利益は前年比948万円増のマイナス2億29万円、経常利益は前年比1億6848万円減のマイナス3412万円、補助金を除く損益差額は前年比1321万円減のマイナス1億6105万円、コロナ関連の補助金を除く経常利益は前年比327万円増のマイナス8391万円だった。医業費用のうち材料費が前年比6.1%増で、このうち医薬品費が7.0%増だった。委託費も前年比2.9%増、給与費も1.2%増となった。
調査によると全369病院の2024年6月の医業収益(稼働100床当たり)は前年同月比0.1%減の2億1835万円、医業費用は0.9%増の2億4 015万円で、医業利益は前年同月比で241万円減のマイナス2180万円となった。医業外費用は前年同月比46万円減(20.8%減)だったものの医業外収益は158万円(20.2%)の減収となり、経常損益は前年同月比353万円減のマイナス1732万円となっていた。病床区分別(稼働100床当たり)の2024年6月の状況を見ると、一般病院(258病院)の医業利益は前年同月比323万円減収のマイナス2715万円、経常利益は443万円減収のマイナス2168万円となり、赤字幅が増加している。
一方、療養、ケアミックス病床(79病院)では医業利益が前年同月比180万円増のマイナス331万円、経常利益が121万円増のマイナス225万円となり、赤字幅は抑えられた。精神病床(16病院)では、医業利益が前年同月比45万円減162万円、経常利益が108万円減の242万円となり、黒字幅が減っている。
2023年度の全病院の100床当たりの医業利益は前年比948万円増のマイナス2億29万円、経常利益は前年比1億6848万円減のマイナス3412万円、補助金を除く損益差額は前年比1321万円減のマイナス1億6105万円、コロナ関連の補助金を除く経常利益は前年比327万円増のマイナス8391万円だった。医業費用のうち材料費が前年比6.1%増で、このうち医薬品費が7.0%増だった。委託費も前年比2.9%増、給与費も1.2%増となった。
■ 高額薬剤の登場で人件費比率40%台でも赤字のがん拠点病院
3病院団体の中間報告書では 「近年の経営調査では増収減益傾向が続いていたが、2024年度は減収減益傾向に転じることも想定され、2024年度診療報酬改定の影響、働き方改革による人件費の負担増、さらには材料費(医薬品、診療材料、給食材料等)の高騰と合わせて病院経営はさらに厳しさを増している」 と指摘している。
病院の人件費比率は 「人件費/医業収益」 で計算され、急性期病院では50%以下が理想とされており、ケアミックス病院では55%、療養型・精神科単科病院、老健では60%が目安とされている。人が最も多い急性期病院の人件費比率が低いのは分母が医業収益のためだ。一方、医療材料や薬剤費の 「医療材料費」 は高額な薬剤等を使う急性期が最も高くなっている。多くの病院や介護施設では分子の人件費が高いのではなく、人員配置に対して分母の医業収益が低いことが多い。
つまり、分母の医業収益(1人あたり労働生産性)を増やす戦略を考えないといけない。これまでは急性期病院での人件費比率は50%以下が理想とされていたが、患者1人あたり年間数百万円、場合によっては1千万円超の抗がん剤や血液凝固因子製剤等の使用も多くなった。それらが多い病院では薬剤費(医療材料費)が大きく影響して収入は増加するが、薬価差益はほとんどないため経営的には厳しくなってしまう。百分率なので医療材料費が上がると、相対的に人件費率は40%台になるが、利益は出ない高機能ながん拠点病院が続出している。
そのために 「労働分配率」 という 「人件費 ÷ 限界利益(粗利)」 で算出する病院もある。 「限界利益」 とは 「売上高 – 変動費」 になる。いずれにしても多くの人を必要とする 「労働集約型産業」 の病院においては、収入を上げるためには、常に50%人件費に相当する必要な部署の人員を戦略的に増やさないといけない。 「必要な部署」 はどこかと聞かれるが、それは病院のビジョン(あるべき姿)を達成するために戦略的に増やさないといけない部署である。
【2024. 11. 1 Vol.603 医業情報ダイジェスト】
病院の人件費比率は 「人件費/医業収益」 で計算され、急性期病院では50%以下が理想とされており、ケアミックス病院では55%、療養型・精神科単科病院、老健では60%が目安とされている。人が最も多い急性期病院の人件費比率が低いのは分母が医業収益のためだ。一方、医療材料や薬剤費の 「医療材料費」 は高額な薬剤等を使う急性期が最も高くなっている。多くの病院や介護施設では分子の人件費が高いのではなく、人員配置に対して分母の医業収益が低いことが多い。
つまり、分母の医業収益(1人あたり労働生産性)を増やす戦略を考えないといけない。これまでは急性期病院での人件費比率は50%以下が理想とされていたが、患者1人あたり年間数百万円、場合によっては1千万円超の抗がん剤や血液凝固因子製剤等の使用も多くなった。それらが多い病院では薬剤費(医療材料費)が大きく影響して収入は増加するが、薬価差益はほとんどないため経営的には厳しくなってしまう。百分率なので医療材料費が上がると、相対的に人件費率は40%台になるが、利益は出ない高機能ながん拠点病院が続出している。
そのために 「労働分配率」 という 「人件費 ÷ 限界利益(粗利)」 で算出する病院もある。 「限界利益」 とは 「売上高 – 変動費」 になる。いずれにしても多くの人を必要とする 「労働集約型産業」 の病院においては、収入を上げるためには、常に50%人件費に相当する必要な部署の人員を戦略的に増やさないといけない。 「必要な部署」 はどこかと聞かれるが、それは病院のビジョン(あるべき姿)を達成するために戦略的に増やさないといけない部署である。
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