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救急救命士の確保に積極的な施設

増える救急搬送を受け入れるための取り組み
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■増える救急搬送を受け入れるための取り組み

高齢化により救急搬送件数が年々増えている=グラフ1=。コロナ禍で一時的に減少したが、2022年、23年は過去を上回る件数となった。

グラフ1 救急搬送人員数の推移

総務省消防庁 救急救助の現況(平成24年版~令和5年版)、令和5年中の救急出動件数等(速報値)を基に作成

救急搬送件数が増加すれば、搬送する救急隊、受け入れる医療機関、双方の負担が重くなる。一方、医療機関側は、同時に働き方改革を進めなければならない。超過勤務の傾向が強い救急医療を担う医師に対して改革を進めるには、救急の受け入れ件数を減らすか、対応する医師を増やすか、いずれかの取り組みを進めることになる。

■ 救急受け入れは断れない、医師確保は難しい。ではどうしたらよいか

しかし、地域の医療提供体制や自院の役割によっては、救急の受け入れを断れない病院もある。また、全国的に同じような課題を抱えている以上、医師確保が難しいのは当然である。
救急を担う医師のタスクシフティング・タスクシェアリングを進めるにあたり、看護師や薬剤師、医師事務作業補助者など、さまざまな職種が価値を発揮する。ただし、地域によってはそれらの職種もまた確保が難しいことが珍しくない。そのような厳しい環境であることも影響しているのか、近年、救急救命士を採用する病院が増えている。病床機能報告(2023年度報告)では、報告施設1病院あたりの救急救命士数は0.22人と少ないものの、三次救急施設では1.39人、二次救急施設では0.33人と多少多く配置されている=表=。

表1 病院における救急救命士数と救急車の受入件数

病床機能報告(2023年度報告)を基に作成

さらに、各施設の救急救命士数の分布を見た(救急救命士が配置されていない施設は除く)=グラフ2=。

グラフ2 各施設の救急救命士数分布

病床機能報告(2023年度報告)を基に作成

現状は1~3人程度の施設が大半を占めている。しかし、なかには20人を超える救急救命士を配置している施設もある。なお、10人を超える38施設のうち、36施設が民間病院であり、残りは公的病院1施設、自衛隊病院が1施設で、公立病院は1病院もない。

救急搬送は今後も増えることが予想される。既に2024年も多くの消防本部において搬送件数が過去最多ペースで推移していると見聞きしている。積極的に受けつつ、働き方改革も進めなければならない極めて厳しい環境下において、先駆的な病院では、多種多様な人材配置を進めている。救急救命士の配置においては、一部の民間病院が圧倒的なリードを築きつつある。


【2024. 11. 15 Vol.604 医業情報ダイジェスト】