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国が推奨しているジョブ型人事について考える
医療機関に導入する際のポイント
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功最近の人事制度に関するご相談は、 「制度自体がないので1から構築したい」 といった従来の内容とは異なり、現在、制度はあるのだが年功的であるとか、人事評価が上手くいっていないので抜本的な見直しをしたいというものに変わってきました。そして、その際、ジョブ型人事への見直しを考えていると言われます。
ジョブ型人事というと、職務等級制度の基本体系と単純に結びつけて考えてしまい、30年近く前に、米国の病院の職務等級制度を見てきて、実際に病院に導入した経験からすると、あまり病院には適さない制度ではないかと思い、コンサル依頼を受けてきませんでしたが、どうやら自分は大昔の経験にとらわれ、時代の変化に対応できていなかったと反省しています。
今年の8月に、内閣官房、経済産業省、厚労省が、 「ジョブ型人事指針」 なるものを公表しましたが、それを確認しつつ、現代の日本におけるジョブ型人事と医療機関への導入について考えます。
ジョブ型人事というと、職務等級制度の基本体系と単純に結びつけて考えてしまい、30年近く前に、米国の病院の職務等級制度を見てきて、実際に病院に導入した経験からすると、あまり病院には適さない制度ではないかと思い、コンサル依頼を受けてきませんでしたが、どうやら自分は大昔の経験にとらわれ、時代の変化に対応できていなかったと反省しています。
今年の8月に、内閣官房、経済産業省、厚労省が、 「ジョブ型人事指針」 なるものを公表しましたが、それを確認しつつ、現代の日本におけるジョブ型人事と医療機関への導入について考えます。
ジョブ型人事が目指すものは何か
ジョブ型人事指針には、富士通や日立製作所等、20社の大手有名企業のジョブ型人事導入事例が掲載されています。そして、冒頭、次のように書かれています。
「働き方は大きく変化している。キャリアは会社から与えられるものから一人ひとりが自らのキャリアを選択する時代となってきた。職務(ジョブ)ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用に門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動していくことが、日本企業等の成長のために急務であり、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を進める」
この文章を読んだ病院の方は、国家資格を持つ医療従事者は、元から、ジョブ型人事の狙いに沿って動いていると感じたと思われます。看護師は、自ら急性期病院、療養型病院などと選択し移動していきます。大学病院や有名病院を除けば、採用の中心は新卒採用ではなく経験者採用です。また、賃金も、多くの所では、看護師、医師といった職種に応じて決められています。ここで職種と書いたのは、職務よりは若干広い概念だからですが、おおむね、ジョブ型人事で目指す、労働者自らが職務を選択できる状態と言えます。ただし、今後一層、新卒者の採用が困難となり、経験者で優れた人材の採用に力を入れざるを得なくなることからすれば、看護師の職務、看護主任の職務、看護専門主任(認定看護師等スペシャリスト)の職務といったように、職務の内容と賃金を明確にして、それらのスキルのある人材を外部から獲得することも重要になってくると考えます。そこで、指針にもあるように、個々の医療機関の実態に応じたジョブ型人事を検討することが肝要と考えます。
「働き方は大きく変化している。キャリアは会社から与えられるものから一人ひとりが自らのキャリアを選択する時代となってきた。職務(ジョブ)ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用に門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動していくことが、日本企業等の成長のために急務であり、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を進める」
この文章を読んだ病院の方は、国家資格を持つ医療従事者は、元から、ジョブ型人事の狙いに沿って動いていると感じたと思われます。看護師は、自ら急性期病院、療養型病院などと選択し移動していきます。大学病院や有名病院を除けば、採用の中心は新卒採用ではなく経験者採用です。また、賃金も、多くの所では、看護師、医師といった職種に応じて決められています。ここで職種と書いたのは、職務よりは若干広い概念だからですが、おおむね、ジョブ型人事で目指す、労働者自らが職務を選択できる状態と言えます。ただし、今後一層、新卒者の採用が困難となり、経験者で優れた人材の採用に力を入れざるを得なくなることからすれば、看護師の職務、看護主任の職務、看護専門主任(認定看護師等スペシャリスト)の職務といったように、職務の内容と賃金を明確にして、それらのスキルのある人材を外部から獲得することも重要になってくると考えます。そこで、指針にもあるように、個々の医療機関の実態に応じたジョブ型人事を検討することが肝要と考えます。
医療機関に導入する際のポイント
医療機関と企業で、労働者において異なる点は何かと言えば、医療機関で働く人はほとんどが国家資格を持って働いているということです。したがって、看護師が放射線技師の職務に移ることは簡単にはできません。本来、ジョブ型の職務等級制度を導入する場合、看護師の職務の等級と放射線技師の職務の等級をどうするかは、職務評価という職務の大きさや難易度を評価して決めるわけですが、そのような職務評価は行ってもあまり意味がないことになります。すなわち、職務評価までしなくても、職務の大きさは、職位や専門性でとらえて問題ないと考えます。職種ごとに、1級は看護師、放射線技師等各職種、2級は上級看護師、上級放射線技師等、3級は看護主任、放射線主任、看護専門主任、放射線専門主任等、4級は看護係長、放射線係長、看護専門係長、放射線専門係長等といったように職務等級を決めればよいと考えます。
ジョブ型人事の等級基準書である職務記述書については、個々に書き出す必要はありますが、あまり細かくせず、主な職務を中心に書くのがポイントです。また、職位で共通の職務内容は、各職務同じでよいでしょう。例えば、係長であれば、部下の指導育成は、すべての係長の職務共通で書いたほうが分かりやすいと思います。
職務記述書という形で、ある程度、主な職務内容を明確に示し、上級看護師は、どのような職務で、どの程度の賃金を得られるのか、感染管理の看護専門主任の職務は何々で賃金はこれくらい支払うといったことを明確にすることで、求人職務を担えるスキルのある人材を獲得できると考えます。
自らキャリアを選択する時代では、ジョブポスティング(社内公募制度)の仕組みも整え、感染管理の看護専門主任を病院が任命するのではなく、自ら手を挙げてもらい、社内労働移動を推進することも大事なことと考えます。
【2024. 12. 1 Vol.605 医業情報ダイジェスト】
ジョブ型人事の等級基準書である職務記述書については、個々に書き出す必要はありますが、あまり細かくせず、主な職務を中心に書くのがポイントです。また、職位で共通の職務内容は、各職務同じでよいでしょう。例えば、係長であれば、部下の指導育成は、すべての係長の職務共通で書いたほうが分かりやすいと思います。
職務記述書という形で、ある程度、主な職務内容を明確に示し、上級看護師は、どのような職務で、どの程度の賃金を得られるのか、感染管理の看護専門主任の職務は何々で賃金はこれくらい支払うといったことを明確にすることで、求人職務を担えるスキルのある人材を獲得できると考えます。
自らキャリアを選択する時代では、ジョブポスティング(社内公募制度)の仕組みも整え、感染管理の看護専門主任を病院が任命するのではなく、自ら手を挙げてもらい、社内労働移動を推進することも大事なことと考えます。
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