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【続き】リフィル処方箋の交付状況は?

患者ニーズと政策誘導は?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学

■患者ニーズと政策誘導は?

本年3月の告示以降、弊社に生活習慣病管理料等の施設基準にかかる院内掲示に関する問い合わせがいくつかあった。問い合わせ内容からも、特にリフィル処方箋のことを気にしている医療機関が多い印象を持っている。なお掲示内容については令和6年3月28日の事務連絡で、以下のように示されている。
当該保険医療機関において、患者の状態に応じ、
  • 28日以上の長期の投薬が可能であること
  • リフィル処方箋を交付すること
のいずれの対応も可能であることを掲示すること。

現行でリフィル処方箋の交付に制度上のメリットがあるのは、特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床数200床以上)、紹介受診重点医療機関のような逆紹介割合を意識しなければならない病院に限られる。逆紹介割合の計算式は「逆紹介患者数÷(初診の患者数+再診の患者数)×1,000(‰)」となるため、リフィル処方箋で再診患者を減らして分母を小さくすれば、逆紹介割合が上がる。何らかの理由で地域の診療所等に逆紹介できない、でも外来の再診患者を減らしたいというときにリフィル処方箋が有効になる。

令和5年社会医療診療行為別統計から、医療機関のタイプ別に院外処方箋の交付状況を確認したところ、院外処方箋の80%近くは診療所から交付されているものの、リフィル処方箋に限ると診療所の割合は50%程度まで縮小する。絶対数が少ないとはいえ、診療所よりも、やはり病院のほうが交付しやすいようだ。
長期処方を行う時点で、多くの場合、症状の安定した慢性疾患であるケースが想定されるが、90日処方と、30日(3回まで)のリフィル処方では、服用期間中に何らかの問題が生じないかぎり、医療機関の立場からすればどちらも差はない。患者の立場でも、リフィル処方では自己負担額や保険薬局に行く手間が増えるため、同様に問題が生じないことを前提にすれば、忙しい人は90日処方を望むだろう(むしろ90日(3回まで)のリフィル処方を望むかもしれないが)。

少子高齢化の影響で大都市を除くほとんどの医療圏で外来患者の減少が見込まれている。そのような状況下でも医療費適正化計画等の動向を考えれば、リフィル処方箋の普及を推し進められる可能性は高い。また今後広がるだろう電子処方箋はリフィル処方との相性が良く、外来の受診回数の減少に一層の拍車がかかることは容易に想像できる。
医療上の必要性と患者ニーズ、さらに政策誘導に挟まれるなかで、医療機関としてどのように立ち振る舞うかは検討を始めておきたい。


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【2024.8. 1 Vol.597 医業情報ダイジェスト】