新着記事

薬局の売上を上げるために工夫できるポイント

処方箋枚数を増やすか、処方箋単価を上げるかの二択
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
薬局運営会社が大型倒産したというニュースを見て、これは他人事ではないと感じ、今後の薬局経営への危機感を改めて感じました。その背景には、薬局のサービス価格が国によって定められており、方針一つで売上に大きな影響が出るという事情があります。また、オンライン服薬指導や電子処方箋の導入が進むなか、Amazonなど大きなプラットフォームを持つ大手企業が薬局業界に参入し始めているという脅威も存在します。
前回は薬局の経費に焦点を当てて紹介しましたので、今回は薬局の売上を上げるための工夫可能なポイントを紹介します。

■背景

薬局の大型倒産についてのニュースを見て感じる共通点は、事業拡大を目的としたM&Aの繰り返しによって、金融機関からの借入金の負担が重荷となり、資金繰りが逼迫し、手の打ちようがなくなってしまったという流れです。財務的な観点での経営が根本的に行われていないという問題はさておき、今までのようにどの薬局も容易に利益が出る時代が終わったことは間違いありません。一つひとつの薬局をしっかり見ていくことが非常に重要な時代となりました。

■売上を上げるポイント

薬局において、サービス価格は国によって定められていますので、そのルール内で行動するしかありません。保険薬局として売上を上げるには、基本的に二つの方法が考えられます。一つは、客数(処方箋枚数)を増やすこと、もう一つは、客単価(処方箋単価)を上げることです。

①客数(処方箋枚数)を増やす
まず、売上を伸ばすために重要なのは、処方箋枚数を増やすことです。もし門前医院の集中率が高い場合、それは門前医院の集客に依存していることを意味し、薬局でのコントロールが難しい場合もあります。対策として、クリニックの誘致や移転を検討するなどの経営手法も考えられます。現場でできる努力としては、次のような方法があります。
  • 離脱を防ぎリピーターを増やす
  • かかりつけ薬局として面処方箋を増やす
  • 在宅医療に力を入れる
かかりつけ薬局として面処方箋を増やすためには、患者との信頼関係を築くことが重要です。薬剤師としての信頼はもちろん、接遇やコミュニケーションの工夫、地域とのつながりを大切にすることが求められます。また、処方箋受付アプリや服薬フォローのシステムを活用し、患者の利便性を向上させることも重要です。
在宅医療に注力することで、門前医院に依存せずに処方箋枚数を増やすことも可能です。超高齢社会で在宅医療の需要は増加しており、訪問診療を行うクリニックや訪問看護の需要も高まっています。このような状況のなか、薬局や薬剤師に求められる役割はさらに高まっていますが、対応可能な薬局はまだ十分ではありません。2024年度の診療報酬改定では、在宅医療に関する点数も強化されており、国としても重視している分野です。人手不足などの問題で対応が難しい店舗もあると思いますが、私は、在宅医療は今後の薬局の重要な方向性と考えています。

②客単価(処方箋単価)を上げる
まず、診療報酬点数としっかり向き合うことが大切です。ベースとなる加算としては、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算、連携強化加算、医療DX推進体制整備加算が考えられます。在宅医療においては、在宅薬学総合体制加算も重要です。要件が厳しく取得が難しい場合もありますが、努力によって獲得できる加算はしっかり取得することが重要です。
次に、地域支援体制加算の要件に含まれるような加算を含め、内容を理解し意識することで獲得可能な加算を確実に取りましょう。一つひとつの加算は小さな点数かもしれませんが、積み重ねれば売上に大きな影響を及ぼします。例えば、特定薬剤管理指導加算3では、RMP資材の対象医薬品や供給不安定、選定療養について意識していると取得できるケースが多いです。加算を取得することで業務が増えるという見方もありますが、小さな点数を積み重ねることが非常に重要です。

■まとめ

今回は、薬局の売上を上げるためのポイントを紹介しました。紹介した内容は、地域特性や店舗の状況によって異なるため、各薬局をしっかりと見極めながら進める必要があります。基本的には、処方箋枚数を増やすか、処方箋単価を上げるかの二択になりますので、一つひとつ可能なことから取り組みましょう。自戒の念を込めて言いますが、私自身が大切にしていることでもありますし、経営で大切なのは、当たり前のことを確実に行うことだと思います。


【2024.9月号 Vol.340 保険薬局情報ダイジェスト】