組織・人材育成
大卒初任給30万円を目標とする
人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
大卒初任給30万円台到来という報道がされる中、支援している病院や介護施設では、医療や福祉に人が来なくなるという危機感を持つ方もいます。そして、そのような方から先日、 「初任給30万円を目指したい」 とご相談を受けました。報道では、金額だけが大きく取り上げられていますが、実際は一部の有名企業に過ぎません。しかも、その内訳も不明ですから、実態はよく分からないといったところです。
そこで、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の令和6年新規学卒者の所定内給与額を見ると、大卒は、産業計で248,300円、医療・福祉で261,700円となっています。おそらく、令和7年は、さらに高い金額になっていると推測されますから、医療・福祉で平均30万円となるのもそれほど先ではないでしょう。そこで今回は、人件費増を抑えつつ、大卒初任給30万円を目指す方策について考えます。
そこで、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の令和6年新規学卒者の所定内給与額を見ると、大卒は、産業計で248,300円、医療・福祉で261,700円となっています。おそらく、令和7年は、さらに高い金額になっていると推測されますから、医療・福祉で平均30万円となるのもそれほど先ではないでしょう。そこで今回は、人件費増を抑えつつ、大卒初任給30万円を目指す方策について考えます。
賞与や退職金を月例賃金に振り向ける
病院経営が厳しい中、初任給を大幅に引き上げることを諦めている病院は多いと推察します。おそらく、精神科病院や療養型の病院等では、減少しつつある新卒者の採用は諦め、中途採用と高齢者の活用に注力したほうが人材の確保において効果的ではないかと思われます。しかし、急性期病院では、業務の内容から考えても、若い人材、特に新卒採用を一定数は毎年行っていかないと、職員が高齢化し、また人材の確保も困難となり、病院の運営が厳しくなることが危惧されます。したがって、そのような病院では、新卒者が処遇において最も関心を持つ月例賃金を見直す必要があると考えます。すなわち、賞与や退職金と比べ、関心のある基本給や諸手当を見直し、月例賃金を上げる必要があるのです。月例賃金は、所定内賃金と所定外賃金を合わせたものですが、特に所定内賃金を上げることで、求人効果が上がることが期待されます。
この際、人件費をできるだけ増やさない方策として、賞与を減額して、所定内手当のほうに持っていくことが考えられます。本給改善手当(仮称)として、賞与の一部をそのまま手当にまわせばよいわけです。例えば、現行の年間賃金を保障する形で、賞与の1.2カ月分を毎月の賃金に振り向けるのであれば、毎月0.1カ月分の手当となりますから、本給改善手当は、基本給の10%と決めればよいわけです。
さらに、退職金制度は、賃金の後払いの性格を有していますが、新卒者を確保するのに、後払いでは、採用効果は薄れます。そこで、退職金の一部を前払いの形にして、手当で支給することも考えられます。実際、医師については、ほとんどの医師が数年でローテーションしているような病院で、本人が希望する場合に退職金を前払いとする制度を導入したことがあります。なお、退職金制度は、基本給と連動して上がる方式は早急に止め、在職1年あたりのポイント数を等級や勤続年数に応じて設定し、その累積にポイント単価(1ポイント=1万円)を掛けて退職金支給額を算定するポイント制に切り替えることを推奨しています。
賞与や退職金の一部を所定内賃金に振り向けることは、時間外労働手当や社会保険料等の負担が増えるため、人件費を全く増やさないで月例賃金を上げることにはなりません。また、賞与であれば、病院の経営状況に応じて容易に支給額を下げることもできますが、月例賃金にしてしまっては、労働条件の不利益変更の問題があり、職員の同意が得られなければ難しいことになります。これらの施策においても、人件費増は避けられないわけですが、今後の若い人材の確保のための原資として、若干の人件費増はやむを得ないと考えます。
この際、人件費をできるだけ増やさない方策として、賞与を減額して、所定内手当のほうに持っていくことが考えられます。本給改善手当(仮称)として、賞与の一部をそのまま手当にまわせばよいわけです。例えば、現行の年間賃金を保障する形で、賞与の1.2カ月分を毎月の賃金に振り向けるのであれば、毎月0.1カ月分の手当となりますから、本給改善手当は、基本給の10%と決めればよいわけです。
さらに、退職金制度は、賃金の後払いの性格を有していますが、新卒者を確保するのに、後払いでは、採用効果は薄れます。そこで、退職金の一部を前払いの形にして、手当で支給することも考えられます。実際、医師については、ほとんどの医師が数年でローテーションしているような病院で、本人が希望する場合に退職金を前払いとする制度を導入したことがあります。なお、退職金制度は、基本給と連動して上がる方式は早急に止め、在職1年あたりのポイント数を等級や勤続年数に応じて設定し、その累積にポイント単価(1ポイント=1万円)を掛けて退職金支給額を算定するポイント制に切り替えることを推奨しています。
賞与や退職金の一部を所定内賃金に振り向けることは、時間外労働手当や社会保険料等の負担が増えるため、人件費を全く増やさないで月例賃金を上げることにはなりません。また、賞与であれば、病院の経営状況に応じて容易に支給額を下げることもできますが、月例賃金にしてしまっては、労働条件の不利益変更の問題があり、職員の同意が得られなければ難しいことになります。これらの施策においても、人件費増は避けられないわけですが、今後の若い人材の確保のための原資として、若干の人件費増はやむを得ないと考えます。
ジョブ型賃金に近づける
支援している急性期病院は、割と規模が大きな病院が多く、毎年の定期昇給額や昇格した際の昇格昇給額がかなり確保できています。そのため、初任給を持ち上げても昇給額を抑えることで、移行時は原資を必要としますが、数年かけて、総額人件費を現行と同程度に抑えるよう設計することは可能です。すなわち、定期昇給を廃止はしませんが、縮小してはどうかと考えます。年功的な部分は小さくなり、同じ仕事をしていたら、新卒でも経験5年の人でも、賃金の格差が小さくなるような仕組みにして、ジョブ型賃金に近づけてはどうでしょうか。
あるいは、1等級の看護師であれば、基本給30万円とし、人事考課の結果によって毎年変動するようなジョブ型賃金表を導入することも考えられます。
毎年、同じ仕事をしているのなら、定期昇給は廃止し、前年の人事考課がA評価であれば305,000円、C評価であれば295,000円というように、人事考課の結果によって賃金を変動させるようにすれば、中長期的には人件費増は抑えられます。
他産業が賃金を上げ続ける中、若者に医療の世界に目を向けてもらうためには、月例賃金を高く見せる方策は検討せざるを得ないでしょう。
【2025. 5. 15 Vol.2 メディカル・マネジメント】
あるいは、1等級の看護師であれば、基本給30万円とし、人事考課の結果によって毎年変動するようなジョブ型賃金表を導入することも考えられます。
毎年、同じ仕事をしているのなら、定期昇給は廃止し、前年の人事考課がA評価であれば305,000円、C評価であれば295,000円というように、人事考課の結果によって賃金を変動させるようにすれば、中長期的には人件費増は抑えられます。
他産業が賃金を上げ続ける中、若者に医療の世界に目を向けてもらうためには、月例賃金を高く見せる方策は検討せざるを得ないでしょう。
【2025. 5. 15 Vol.2 メディカル・マネジメント】
同カテゴリーの記事:

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20
[事務れんらクンの更新情報]
2025-06-01「疑義解釈資料の送付について(その27)」を追加しました
2025-05-27
「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
[お知らせ]
2025-06-13【セミナーのご案内】薬剤師100人カイギ Vol.14
2025-05-07
【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
2024-05-30
『九州医事新報/中四国・関西医事新報/東海・関東医事新報』で「HMレビュー」が紹介されました
お知らせ一覧
[新着記事]
2025-07-03大卒初任給30万円を目標とする
2025-07-02
「なかなか育たないスタッフ」を見捨てずに戦力化する方法
2025-07-01
乳幼児育児栄養指導料~カルテ記載と運用の留意点~
2025-06-27
法人同士の連携は進むのか
2025-06-26
生産性向上の取り組みを加速させる2つのしかけ
2025-06-26
現役薬剤師・葦立ひとみの☆ななころびやおき☆
2025-06-25
機嫌が悪い?~自分の言動に責任を持つ~
2025-06-24
変化をチャンスにする組織づくり
2025-06-23
管理職等のマネジメント研修の年間計画と実践
2025-06-20
今さら聞けない! 保険薬局における棚卸しの重要性
2025-06-16
「また来たい」 と思われるクリニックに共通する患者対応の所作!
2025-06-16
在支診薬剤師を知っていますか?