組織・人材育成
「答え」 を探し続けるリーダー
組織力が高まるケーススタディ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
当連載でよくお伝えするように、私は、ひと昔前より遥かに組織づくりに関心を寄せる医療機関の経営者が増えたと感じています。SNSの台頭もあり、医療従事者であっても多業種の経営者と交流する機会が増えたことで、業種はもちろん地域や言語、文化を超えたコミュニケーションが増えたことは、医療機関の経営者にとってさまざまな刺激になっているようです。ただ、学ぶチカラが鍛えられる一方で、学び方を違えると組織にとって必ずしも良い刺激にならないこともあります。
今回は自院以外との交流から 「何か」 を得ようとするリーダーの学びから、組織づくりについて考えを深めていきたいと思います。
今回は自院以外との交流から 「何か」 を得ようとするリーダーの学びから、組織づくりについて考えを深めていきたいと思います。
ケース
西日本にあるクリニックのお話です。このクリニックの院長先生は非常に外交的!リアルの交流に留まらず、SNS等のネットワークでの交流も積極的に行っているイマドキなリーダーです。地域に愛されるクリニックを目指し、クリニックの一部を用いた婚活パーティーの開催など、非常にユニークな取り組みを行っています。
このクリニックの最近のお悩み……それは近年のスタッフの激減です。もともとこのクリニックは近隣の医療機関に比べてスタッフが充足していたのですが、院長先生曰く 「なぜかスタッフが減ってしまって、求人を出してもあまり来てくれなくなったんです」 とのこと。院長先生自ら所属している職員に 「どうしたら職員が集まってくれるか」 というヒアリングをしましたが、どれもピンとくる内容ではありませんでした。そこで院長先生はこんな戦略を考えました。
院長先生 「求人募集は職員以外に発信するのだから、今働いている職員に聞いてもピンとくるわけがない。職を求めているイマドキの20代~30代の医療従事者のニーズを探るために、SNSで発信をしよう!」
院長先生はSNSを活用し 「医療従事者の求人ニーズを広く知りたいので、インタビューを受けてくれる若手医療従事者募集!」 と声を掛けたのでした。
インタビューを行い院長先生は満足!……すると思いきや、なかなか院長先生がピンとくる要素は見つけられない様子。
院長先生 「どれも本質をついていると思えなくて……どうしたら良いのだろうか」
スタッフ不足は解消されず仕舞いです。
一方、筆者のもとにはこのクリニックで働くスタッフからの声が届いていました。
スタッフ 「最近の院長先生のやり方には本当にうんざりしています。私たちよりもSNSの世界に目が向いているようで、私たちが何を言おうとも 『世の中ではこんな風に言っているよ』 と。確かに私たちスタッフはクリニックで働いている期間が長いので井の中の蛙になっている可能性は高いと思いますが、院長先生に業務改善の協力をお願いしたくても耳を傾けてくれるとは思えません。以前は我々スタッフと一緒にクリニックを盛り上げていく雰囲気があったのですが、最近はスタッフが置いてけぼり状態です」
このケース、どのような感想を持ちましたか?自らを振り返り、リーダーとしてのあり方を足元から見直す経営者が多い一方で、 【無意識に】 自分以外に組織改善の切り口があると信じて探し続けている経営者にお会いすることも少なくありません。ポイントは、決して自分に課題がないと信じているわけではなく、無意識に組織の課題に自分を登場させずに解決するための方法を探してしまうことがある、ということです。
仕事の場では、誰もが、自分が思う最善の行動をされていると思います。職員全員が最善を尽くしているはずですが、些細なお互いの思い違いやすれ違いが組織の雰囲気を脅かし、そうした小さな歪みが大きな問題となってしまうのが組織です。つまり、小さな歪みにどう気が付くことができるのかが、組織をより良くする近道ではないかと考えます。
実は、このケースで院長先生がスタッフに対して求人改善について質問した際、スタッフから職場改善に関わる要望が出されていました。しかし、そのスタッフの声に対して院長先生は 「求人には直接関係がないから後で考えよう」 と答え、スタッフからすると自分たちの声が後回しにされる対応が取られたそうです。このあと紆余曲折あり、この院長先生は大いに反省されることになるのですが、院長先生ご自身も 「なぜその時に気が付くことができなかったのだろう」 とつぶやいていました。
優秀なリーダーであっても、組織の小さな歪みに気付き、自分自身も含めて組織を振り返るということは本当に難しい挑戦であると感じています。 「難しい」 ということを実感しているリーダーの多くは、自分自身に対して耳の痛い話も告げてくれる存在、信頼できる存在を複数名つくり、そばにいていただくという工夫をしているようです。
皆さまには、組織の小さな歪みに気が付かせてくれる存在はおられますか?このケースが皆さまの組織づくりの参考になれば幸いです。
【2025年7月1日号 Vol.5 メディカル・マネジメント】
このクリニックの最近のお悩み……それは近年のスタッフの激減です。もともとこのクリニックは近隣の医療機関に比べてスタッフが充足していたのですが、院長先生曰く 「なぜかスタッフが減ってしまって、求人を出してもあまり来てくれなくなったんです」 とのこと。院長先生自ら所属している職員に 「どうしたら職員が集まってくれるか」 というヒアリングをしましたが、どれもピンとくる内容ではありませんでした。そこで院長先生はこんな戦略を考えました。
院長先生 「求人募集は職員以外に発信するのだから、今働いている職員に聞いてもピンとくるわけがない。職を求めているイマドキの20代~30代の医療従事者のニーズを探るために、SNSで発信をしよう!」
院長先生はSNSを活用し 「医療従事者の求人ニーズを広く知りたいので、インタビューを受けてくれる若手医療従事者募集!」 と声を掛けたのでした。
インタビューを行い院長先生は満足!……すると思いきや、なかなか院長先生がピンとくる要素は見つけられない様子。
院長先生 「どれも本質をついていると思えなくて……どうしたら良いのだろうか」
スタッフ不足は解消されず仕舞いです。
一方、筆者のもとにはこのクリニックで働くスタッフからの声が届いていました。
スタッフ 「最近の院長先生のやり方には本当にうんざりしています。私たちよりもSNSの世界に目が向いているようで、私たちが何を言おうとも 『世の中ではこんな風に言っているよ』 と。確かに私たちスタッフはクリニックで働いている期間が長いので井の中の蛙になっている可能性は高いと思いますが、院長先生に業務改善の協力をお願いしたくても耳を傾けてくれるとは思えません。以前は我々スタッフと一緒にクリニックを盛り上げていく雰囲気があったのですが、最近はスタッフが置いてけぼり状態です」
このケース、どのような感想を持ちましたか?自らを振り返り、リーダーとしてのあり方を足元から見直す経営者が多い一方で、 【無意識に】 自分以外に組織改善の切り口があると信じて探し続けている経営者にお会いすることも少なくありません。ポイントは、決して自分に課題がないと信じているわけではなく、無意識に組織の課題に自分を登場させずに解決するための方法を探してしまうことがある、ということです。
仕事の場では、誰もが、自分が思う最善の行動をされていると思います。職員全員が最善を尽くしているはずですが、些細なお互いの思い違いやすれ違いが組織の雰囲気を脅かし、そうした小さな歪みが大きな問題となってしまうのが組織です。つまり、小さな歪みにどう気が付くことができるのかが、組織をより良くする近道ではないかと考えます。
実は、このケースで院長先生がスタッフに対して求人改善について質問した際、スタッフから職場改善に関わる要望が出されていました。しかし、そのスタッフの声に対して院長先生は 「求人には直接関係がないから後で考えよう」 と答え、スタッフからすると自分たちの声が後回しにされる対応が取られたそうです。このあと紆余曲折あり、この院長先生は大いに反省されることになるのですが、院長先生ご自身も 「なぜその時に気が付くことができなかったのだろう」 とつぶやいていました。
優秀なリーダーであっても、組織の小さな歪みに気付き、自分自身も含めて組織を振り返るということは本当に難しい挑戦であると感じています。 「難しい」 ということを実感しているリーダーの多くは、自分自身に対して耳の痛い話も告げてくれる存在、信頼できる存在を複数名つくり、そばにいていただくという工夫をしているようです。
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2025-10-01
「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を追加しました
2025-09-21
「疑義解釈資料の送付について(その29)」を追加しました
[お知らせ]
2025-10-10【新刊のご案内】『コンサルタントご一行、病院経営を往く-エビデンスに基づく診療報酬の旅-』
2025-07-04
【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催 『病棟看護管理者が把握しておきたい 「地域包括医療病棟・回復期病棟・療養病棟のマネジメントのポイント 」と 「26年度改定の注目点」 』
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