保険薬局
地域医療を支える仕組みの構築
ファーマ・トピックス・マンスリー
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方 孝行
令和6年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算、連携強化加算、在宅薬学総合体制加算の施設要件として、地域の行政機関や薬剤師会等を通じた薬局情報の周知を求めることが記載された。このリスト化についてはさまざまな意見があったが、地域医療を支えるための薬局の見える化として実装され、現在、都道府県薬剤師会や地域薬剤師会ごとに夜間・休日・在宅等の対応薬局リストが整理されている。さらに厚労省のHPにおいても 「地域における薬局機能に係る体制について」 の項で各都道府県のリンクが紹介され、必要な情報を入手できるようになっている。
では、この情報はどのように活用されているのか。日本保険薬局協会による管理薬剤師向けの調査を参照すると、地域の薬局の 「夜間・休日の調剤、在宅対応体制等の情報」 が地域医療や患者にとって有効活用されているかどうかを問う設問では、同様の調査を行った2024年8月時点と比較すると、 「大いに活用されている」 「活用されている」 と評価した薬局は20.3%から24.6%に増加したと報告されている。徐々にではあるが、このリストが活用されていることが現場レベルでも感じられていることが確認された。
一方で 「あまり活用されていない」 「まったく活用されていない」 という否定的評価も依然として43.0%あった。否定的な評価の主な要因としては、かねてから課題に挙げられていた地域医療を担う多職種や地域住民への認知度の低さ、情報更新の頻度が不明確であることなどが挙げられており、周知方法や情報の新鮮さという点での課題が指摘されている。
利活用の方法としては、主に 「地域の薬局の夜間・休日対応(輪番含む)情報を把握するため」 という意見が多く、やはり夜間・休日の薬局の対応状況は多職種や地域住民にとって必要な情報であることがわかる。これをいかに見える化するかが地域医療を支える薬局として必要なタスクとなっていることがみえてくる。
さらに、このアンケート調査の結果からは、 「地域住民が地域の薬局の各種機能や実績を把握するために有用性が高いと思う」 という意見が少なく、患者にとって薬局の機能や実績は薬局を選ぶ際の指標となっていないことが浮き彫りになった。これは地域に根差した薬局運営を目指す薬局経営者にとっては、解決しなくてはならない課題の一つであろう。
また、 「薬局と連携する多職種が地域の薬局の各種機能や実績を確認するために有用性が高い」 という意見も15.6%と低いことも気がかりである。現場の薬剤師がこういった感覚を持っているということは、すなわち多職種にとって連携する薬局の機能や実績は、その薬局を選ぶ優先順位としては決して高くはないという実情が伺える。では、どのような基準で連携する薬局を決めているのか。恐らく薬局の立地や、連携のしやすさ(門前薬局であることや顔の見える関係であること)などが優先されており、その薬局の実績や機能は重要な指標とは認識されていないのだろう。認定薬局制度が確立されて数年たつが、その可視化は不十分であり、多職種からも依然として理解されていない実態が浮き彫りになった。
では、薬局では地域医療を支えるためにどのような仕組みを構築していく必要があるのか。もちろん、夜間・休日の対応によりシームレスな医療の提供というものは必須になるが、それ以上に必要になることが地域の薬局間での連携であろう。今後、医療的リソースの低下が懸念されているため、少ないリソースで地域医療を支えていくためには、より強固な連携体制を構築していく必要がある。第607回中央社会保険医療協議会総会の資料にある診療報酬改定結果検証部会の報告内で、 「ほかの薬局と連携した在宅業務」 や 「在宅移行初期の対応状況」 が紹介された。これによると、他の薬局と連携した在宅業務の実施有無については 「ある」 が17.6%であった。 「ある」 と回答した場合において、他薬局との役割分担については 「患者の急変等による緊急訪問を分担」 が56.0%を占めており、薬局間で連携して急変した在宅患者への対応を行っている事例が報告された。また在宅移行初期の対応状況では11.6%の薬局で実施されており、対象患者としては実に56.9%が認知症だった。算定要件にある対象患者とはいえ、今後増えていくであろう認知症患者に対して薬局が在宅医療の導入時にしっかりと介入していることが示唆されている。
在宅医療や夜間・休日における医療を必要とする患者がいる。 こうした患者が地域医療のなかで適切な支援を受けられる仕組みが整えられ、その地域の薬局が適切な医療を提供していくことは、今後ますます重要となる。地域医療を支える仕組みの構築は患者・多職種の薬局の見える化に貢献するだけでなく、 地域の薬局がその機能を発揮する上でも有用であることが期待される。
【2025.6月号 Vol.2 Pharmacy-Management】
では、この情報はどのように活用されているのか。日本保険薬局協会による管理薬剤師向けの調査を参照すると、地域の薬局の 「夜間・休日の調剤、在宅対応体制等の情報」 が地域医療や患者にとって有効活用されているかどうかを問う設問では、同様の調査を行った2024年8月時点と比較すると、 「大いに活用されている」 「活用されている」 と評価した薬局は20.3%から24.6%に増加したと報告されている。徐々にではあるが、このリストが活用されていることが現場レベルでも感じられていることが確認された。
一方で 「あまり活用されていない」 「まったく活用されていない」 という否定的評価も依然として43.0%あった。否定的な評価の主な要因としては、かねてから課題に挙げられていた地域医療を担う多職種や地域住民への認知度の低さ、情報更新の頻度が不明確であることなどが挙げられており、周知方法や情報の新鮮さという点での課題が指摘されている。
利活用の方法としては、主に 「地域の薬局の夜間・休日対応(輪番含む)情報を把握するため」 という意見が多く、やはり夜間・休日の薬局の対応状況は多職種や地域住民にとって必要な情報であることがわかる。これをいかに見える化するかが地域医療を支える薬局として必要なタスクとなっていることがみえてくる。
さらに、このアンケート調査の結果からは、 「地域住民が地域の薬局の各種機能や実績を把握するために有用性が高いと思う」 という意見が少なく、患者にとって薬局の機能や実績は薬局を選ぶ際の指標となっていないことが浮き彫りになった。これは地域に根差した薬局運営を目指す薬局経営者にとっては、解決しなくてはならない課題の一つであろう。
また、 「薬局と連携する多職種が地域の薬局の各種機能や実績を確認するために有用性が高い」 という意見も15.6%と低いことも気がかりである。現場の薬剤師がこういった感覚を持っているということは、すなわち多職種にとって連携する薬局の機能や実績は、その薬局を選ぶ優先順位としては決して高くはないという実情が伺える。では、どのような基準で連携する薬局を決めているのか。恐らく薬局の立地や、連携のしやすさ(門前薬局であることや顔の見える関係であること)などが優先されており、その薬局の実績や機能は重要な指標とは認識されていないのだろう。認定薬局制度が確立されて数年たつが、その可視化は不十分であり、多職種からも依然として理解されていない実態が浮き彫りになった。
では、薬局では地域医療を支えるためにどのような仕組みを構築していく必要があるのか。もちろん、夜間・休日の対応によりシームレスな医療の提供というものは必須になるが、それ以上に必要になることが地域の薬局間での連携であろう。今後、医療的リソースの低下が懸念されているため、少ないリソースで地域医療を支えていくためには、より強固な連携体制を構築していく必要がある。第607回中央社会保険医療協議会総会の資料にある診療報酬改定結果検証部会の報告内で、 「ほかの薬局と連携した在宅業務」 や 「在宅移行初期の対応状況」 が紹介された。これによると、他の薬局と連携した在宅業務の実施有無については 「ある」 が17.6%であった。 「ある」 と回答した場合において、他薬局との役割分担については 「患者の急変等による緊急訪問を分担」 が56.0%を占めており、薬局間で連携して急変した在宅患者への対応を行っている事例が報告された。また在宅移行初期の対応状況では11.6%の薬局で実施されており、対象患者としては実に56.9%が認知症だった。算定要件にある対象患者とはいえ、今後増えていくであろう認知症患者に対して薬局が在宅医療の導入時にしっかりと介入していることが示唆されている。
在宅医療や夜間・休日における医療を必要とする患者がいる。 こうした患者が地域医療のなかで適切な支援を受けられる仕組みが整えられ、その地域の薬局が適切な医療を提供していくことは、今後ますます重要となる。地域医療を支える仕組みの構築は患者・多職種の薬局の見える化に貢献するだけでなく、 地域の薬局がその機能を発揮する上でも有用であることが期待される。
【2025.6月号 Vol.2 Pharmacy-Management】
同カテゴリーの記事:

2023-11-01

2023-11-01

2023-11-01

2023-11-01
[事務れんらクンの更新情報]
2025-06-01「疑義解釈資料の送付について(その27)」を追加しました
2025-05-27
「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
[新着記事]
2025-07-08地域医療を支える仕組みの構築
2025-07-07
2026年診療報酬改定議論がキックオフ
2025-07-03
職業人である意識を持つこと
2025-07-03
大卒初任給30万円を目標とする
2025-07-02
「なかなか育たないスタッフ」を見捨てずに戦力化する方法
2025-07-01
乳幼児育児栄養指導料~カルテ記載と運用の留意点~
2025-06-27
法人同士の連携は進むのか
2025-06-26
生産性向上の取り組みを加速させる2つのしかけ
2025-06-26
現役薬剤師・葦立ひとみの☆ななころびやおき☆
2025-06-25
機嫌が悪い?~自分の言動に責任を持つ~
2025-06-24
変化をチャンスにする組織づくり
2025-06-23
管理職等のマネジメント研修の年間計画と実践