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まだまだ急性期365日リハビリは少ない

診療報酬ズームアップ
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■急性期365日リハビリ実施のトリガーになる加算

2026年改定を議論する本年8月21日の中医協、入院・外来医療等の調査・評価分科会では急性期の早期リハビリに関するデータが示された。それによると、①発症後早期のリハビリ介入が効果的であるが、急性期では入院後4日目以降の介入が38%を占める、②急性期一般入院料1~6における土日祝日のリハビリ実施割合は、平日と比べて低かった、③急性期一般入院料1~6において金曜日に入院した患者は、入院後3日以内にリハビリを開始した患者割合が低かった。まだまだ、急性期病棟においては365日リハビリ実施が十分ではないことが問題視された。
診療報酬や介護報酬における加算は厚労省からのメッセージまたはシグナルと言われる。その強いメッセージとして、前回2024年改定では急性期365日リハビリ提供等を施設基準にした急性期一般入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る)、専門病院入院基本料(7対1、10対1に限る)に対して加算できる 「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」 (以下、リハ栄腔)(120点×14日間)が新設された。
リハ栄腔は病棟ごとに届出が可能であり、当該病棟の患者全員に対して、入院48時間以内にADL、栄養状態、口腔状態に関する評価を行って、多職種によるADL低下防止体制を確保した場合に算定できる。病棟ごとに専従(1人は専任でも可)のリハビリセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)2名と専任の管理栄養士1名の配置が必要になる。
2024年改定時に厚労省保険局の眞鍋馨医療課長(当時)は 「患者の状態と必要な介入のタイミングには曜日は関係ないことから今回、土曜日や日曜日、祝日にきちんとリハビリを行える体制を求めることにした。リハビリ分野で急性期に必要に応じて十分なリハビリ提供していただきたいというメッセージになればと思っている」 (社会保険研究所、社会保険旬報、2024年6月21日号、P16)と述べている。ところが、届出状況は本年8月1日(一部は7月1日)現在の全国厚生局調査で297病院とまだまだ多くはない。

■回リハの365日リハは常態になり、急性期365日もキックオフへ

同加算のミッションは、急性期365日リハビリ提供体制を促すことである。点滴には土・日・祝日の休みはないのに、急性期リハビリには休みがあるのは働く側の論理でしかない。そもそも患者の状態とリハビリ介入のタイミングに曜日は関係ない。筆者は22年前の医学通信社 「月刊保険診療」 2003年2月号に 「アメリカの医療機関レポート:回復期リハビリ病院」 というタイトルで、ハワイ、オアフ島のRehabilitation Hospital of the Pacific(REHAB)94床を見学した模様を書いた。22年前の記事であるが 「朝6時30分からリハビリが開始され、セラピストはシフト制勤務で18時30分までリハビリを実施している。土曜、日曜も通常のリハビリ提供を行っている」  と伝えた。当時は介護保険開始の2000年に新設された回復期リハビリ病棟における先駆的な病院で365日リハビリが開始されたばかりで、まだまだ少数派であった。REHABの理学療法士にその旨を伝えたら 「オーマイガー」 と驚かれた。それが22年経った現在では回復期リハビリテーション入院料1、2では365日リハビリが義務となった。そして、急性期365日リハビリも2024年改定でキックオフされた。

■2040年を待たずに急性期365日リハは常態になる

2022年度の病床機能報告から全国の病院における設置主体別100床あたりのリハビリセラピスト数を見ると、学校法人(国公立・私立の大学病院)7.3名、国公立8.5名、公的9.9名、民間16.4名となっていた。民間は回リハや地ケアを併設する病院が多いために100床あたり人数は必然的に多くなる。回リハ、地ケアを持つ病院を除外した一般病棟のみを持つ病院でみても、100床あたりは学校法人5.0名、国公立6.5名、公的6.4名、民間8.9名と、これも民間病院が多くなっていた。
地方に行くほど、急性期のトップランナー病院は公立病院が多く、リハビリセラピストが少なく、日曜・祝日はほぼ実施していない場合が多い。なかには土日は完全週休2日のリハビリ部門もある。筆者は独立間もない2000年から 「人件費比率を下げるには、必要な部署の人を増やす」 という逆張り的な論調を主張してきた。病院の人件費比率は 「人件費/医業収益」 で計算されるため、分子の必要な部署の人を増やせば、それ以上に分母の収益が増えて相対的に人件費比率は下がるという論理だ。
とくにリハビリセラピストは1日18単位実施すれば月間80万円前後の医業収益を得る。人件費は若手ならば、その半分にも満たないだろう。対象患者がいる限りはリハビリセラピストの人件費は 「費用」 (コスト)ではなく、患者さんのADL向上という質向上に寄与する 「原価」 である。これが公立病院における医療を知らない本庁人事課には理解されていない。もちろん、不要な部署や一定の必要職員数以上に増加した場合は余剰人員となる。
セラピストが少ない地域No.1急性期の某県立中央病院に金曜夜に脳梗塞で救急入院したら、厚労省データにあったようにリハビリ開始は早くても月曜であり、それもぜいぜい1~2単位程度と少ない。もし、貴方や家族が患者だったら、早期介入による手厚い脳血管リハがADL回復のために最も必要な時期に、そのような病院に入院したいであろうか。


【2025年10月1日号 Vol.11 メディカル・マネジメント】