病院・診療所
最低賃金引上げの影響と補正予算からの補助金
診療報酬ズームアップ
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高
■2025年度最低賃金は全都道府県で1000円超
厚生労働省は2025年9月5日に都道府県ごとに決める2025年度の最低賃金の全国加重平均が1121円になったと発表した。これは2024年度より66円の上昇で過去最高となっている。最低賃金とは、国が最低賃金法に基づき、使用者が労働者に支払う賃金の最低額を定めたものであり、最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがある(最低賃金法第40条)。
2025年度は全都道府県で1000円を超えており、最高額の東京は1226円、続いて神奈川1225円、大阪1117円となっている。一方、最低額は高知・宮崎・沖縄の1023円だった。最高額に対する最低額の比率は83.4%で2024年度より1.6ポイント上昇しており、改善は11年連続となっている。昨年度、全国最下位だった秋田は80円引き上げて、国の目安を16円上回る1031円とした。同県では一定額以上の賃上げをする企業への支援金を検討している。
引き上げ額最大は熊本82円、隣県の大分が81円で続いている。隣県との最低賃金引き上げ競争が激化し、39道府県が国の目安を超えていた。その背景には全国最下位だけは回避したいという県の思惑がある。47都道府県最下位は不名誉なために他県の様子を見ながら後出しジャンケンをした県もあったようだ。
2025年度は全都道府県で1000円を超えており、最高額の東京は1226円、続いて神奈川1225円、大阪1117円となっている。一方、最低額は高知・宮崎・沖縄の1023円だった。最高額に対する最低額の比率は83.4%で2024年度より1.6ポイント上昇しており、改善は11年連続となっている。昨年度、全国最下位だった秋田は80円引き上げて、国の目安を16円上回る1031円とした。同県では一定額以上の賃上げをする企業への支援金を検討している。
引き上げ額最大は熊本82円、隣県の大分が81円で続いている。隣県との最低賃金引き上げ競争が激化し、39道府県が国の目安を超えていた。その背景には全国最下位だけは回避したいという県の思惑がある。47都道府県最下位は不名誉なために他県の様子を見ながら後出しジャンケンをした県もあったようだ。
■現在の時給ではエッセンシャルワーカー確保が難しい
現在、多くの病院ではエッセンシャルワーカー(病院機能維持に欠かせない業務に従事する、必要不可欠な労働者)に該当する看護補助者、調理補助者、清掃担当者の採用が困難になっている。ハローワークの求人時給を見ると各都道府県の最低賃金プラス100円強くらいの金額で募集されているが、この金額では誰も応募してこない現実がある。
看護職員のタスクシフト(業務移管)として、多くの病院では看護補助者を採用したいのだが、都会では他に多くの時給が良い仕事があり、売手市場となっている。看護補助業務や介護要員は3K(きつい、汚い、感染症の危険)職場である。調理補助者は朝食の早出勤務があるために敬遠される。2040年に高齢者人口がピークを迎えるまで、これらの職種に対する需要は確実に増加する。しかし、高齢化による人口減で限界集落的な地方ではそもそも若い働き手がいない。弊社が関係する地方病院もほとんどが看護補助者として外国人を雇用している。
最低賃金の引き上げは働く側にとっては嬉しいが、支払う側、特に経営状態が芳しくない中小企業や医療機関・介護施設にとっては重荷である。なかでも2026年6月までは診療報酬改定による点数引き上げがなく、さらにそのお金が入金されるのは2ヶ月後の8月だ。これは多くの人を必要とする 「労働集約型産業」 の病院においてはまさしく死活問題である。
看護職員のタスクシフト(業務移管)として、多くの病院では看護補助者を採用したいのだが、都会では他に多くの時給が良い仕事があり、売手市場となっている。看護補助業務や介護要員は3K(きつい、汚い、感染症の危険)職場である。調理補助者は朝食の早出勤務があるために敬遠される。2040年に高齢者人口がピークを迎えるまで、これらの職種に対する需要は確実に増加する。しかし、高齢化による人口減で限界集落的な地方ではそもそも若い働き手がいない。弊社が関係する地方病院もほとんどが看護補助者として外国人を雇用している。
最低賃金の引き上げは働く側にとっては嬉しいが、支払う側、特に経営状態が芳しくない中小企業や医療機関・介護施設にとっては重荷である。なかでも2026年6月までは診療報酬改定による点数引き上げがなく、さらにそのお金が入金されるのは2ヶ月後の8月だ。これは多くの人を必要とする 「労働集約型産業」 の病院においてはまさしく死活問題である。
■砂漠のオアシスと言える補助金が決定したが、そのサイズは小さかった
このような状況に対して高市内閣による 「砂漠のオアシス」 と言える2025年度補正予算による医療機関補助金額が2025年11月28日に決定した。補正予算の規模は政府全体で18兆3000億円。うち厚労省所管分は2兆3252億円となっている。
【厚労省所管分2兆3252億円の内訳】
(1)「医療・介護等支援パッケージ」:1兆3649億円 (医療1兆368億円 介護等3281億円)
(2)物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた支援等:360億円
(3)医療・介護の確保、DXの推進、「攻めの予防医療」 の推進等:2277億円
(4)創薬力強化に向けたイノベーションの推進、医薬品等の安定供給確保や品質・安全性の確保等:1527億円
この中に医療従事者の処遇改善支援、物価上昇対策として5341億円が計上されている。病院には基礎的支援として1床当たり賃金分8.4万円、物価分11.1万円の計19.5万円を支給する。有床診療所では1床当たり8.5万円、無床診療所では1施設当たり32万円とされた。A病院院長は 「病院団体要望の1床400万円に対して、1桁足りない気がするが、今回はもらえるだけ良しとしなければ」 と言っていた。
他に全身麻酔手術件数または分娩取扱数(分娩取扱数にあっては3を乗じた数)が800件以上、2000件以上の病院(救急車受入件数3000件未満に限る)にあっては、それぞれ1施設当たり2000万円、8000万円を加算で支給とされた。救急車を多く受け入れている病院ほど経営状態が芳しくないというデータに基づき、「救急に対応する病院への加算」 として、▽1施設当たり救急車受入件数1件以上~1000件未満:500万円 ▽同1000件以上:1500万円 ▽同2000件以上:3000万円 ▽同3000件以上:9000万円 ▽同5000件以上:1.5億円 ▽同7000件以上:2億円――が支給される。ただし、この救急加算と全身麻酔手術件数または分娩取扱数の加算との併給は不可になっている。
この補助金だけで2026年改定を乗り越えるのはなかなかキツい病院が多いであろう。「資本主義経済」 である我が国はインフレに転じて物価が上がり、税収や社会保険料収入も増加している。だが、国が公定価格や使途を決定する 「社会主義経済」 の診療報酬は、インフレの兆候はあったものの、まだまだデフレだった2023年12月に決定された2024年診療報酬改定率で運用されている。そのアウトカムとして病院の7割が赤字という未曽有の経営危機を招いた。もっと強いカンフル剤が必要であろう。
【2026年1月1日号 Vol.17 メディカル・マネジメント】
【厚労省所管分2兆3252億円の内訳】
(1)「医療・介護等支援パッケージ」:1兆3649億円 (医療1兆368億円 介護等3281億円)
(2)物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた支援等:360億円
(3)医療・介護の確保、DXの推進、「攻めの予防医療」 の推進等:2277億円
(4)創薬力強化に向けたイノベーションの推進、医薬品等の安定供給確保や品質・安全性の確保等:1527億円
この中に医療従事者の処遇改善支援、物価上昇対策として5341億円が計上されている。病院には基礎的支援として1床当たり賃金分8.4万円、物価分11.1万円の計19.5万円を支給する。有床診療所では1床当たり8.5万円、無床診療所では1施設当たり32万円とされた。A病院院長は 「病院団体要望の1床400万円に対して、1桁足りない気がするが、今回はもらえるだけ良しとしなければ」 と言っていた。
他に全身麻酔手術件数または分娩取扱数(分娩取扱数にあっては3を乗じた数)が800件以上、2000件以上の病院(救急車受入件数3000件未満に限る)にあっては、それぞれ1施設当たり2000万円、8000万円を加算で支給とされた。救急車を多く受け入れている病院ほど経営状態が芳しくないというデータに基づき、「救急に対応する病院への加算」 として、▽1施設当たり救急車受入件数1件以上~1000件未満:500万円 ▽同1000件以上:1500万円 ▽同2000件以上:3000万円 ▽同3000件以上:9000万円 ▽同5000件以上:1.5億円 ▽同7000件以上:2億円――が支給される。ただし、この救急加算と全身麻酔手術件数または分娩取扱数の加算との併給は不可になっている。
この補助金だけで2026年改定を乗り越えるのはなかなかキツい病院が多いであろう。「資本主義経済」 である我が国はインフレに転じて物価が上がり、税収や社会保険料収入も増加している。だが、国が公定価格や使途を決定する 「社会主義経済」 の診療報酬は、インフレの兆候はあったものの、まだまだデフレだった2023年12月に決定された2024年診療報酬改定率で運用されている。そのアウトカムとして病院の7割が赤字という未曽有の経営危機を招いた。もっと強いカンフル剤が必要であろう。
【2026年1月1日号 Vol.17 メディカル・マネジメント】
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2025-11-02「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.17)(令和7年10月1日事務連絡)」を追加しました
2025-10-22
「疑義解釈資料の送付について(その30)」を追加しました
2025-10-01
「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を追加しました
[お知らせ]
2026-01-26【セミナーのご案内】2026年度診療報酬改定を踏まえたリハビリ機能強化による病院の経営戦略
2026-01-14
【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催 これからの薬局経営の方向性と戦略
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【セミナーのご案内】日総研主催「重症度、医療・看護必要度 「新基準」への対応と看護マネジメント」
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ちゃんと覚えないと大変なことになるのに!

