介護施設

介護施設の生産性向上は実現可能か

意外と知らない介護経営のポイント
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之
10月27日の厚労省の介護保険部会では、介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等について議論されています。今回の議論に限らず、今後の介護保険制度の維持のためには、介護現場の生産性向上は避けて通れません。
今回の議論のなかでは、不足する介護職員の数を前提に考えると、2040年までになんと20%以上の業務効率化(労働時間等)が必要となるとしています。そのためには、介護職員数の増加に取り組みながら、一方で、まだまだ 「アナログ」 な介護施設の生産性 を上げることが必要だと指摘しています。

▼普及率 「9.8%」 と低調なケアプランデータ連携システム

生産性向上の具体策として挙げられているのが、介護ロボットやICTなどの活用です。私の経営する通所介護でもそうですが、確かに現場レベルでいえば、いまだにケアマネジャーとのやりとりは 「紙媒体」 であり、郵送やFAXを使っています。また、日々の連絡方法は 「電話一択」 で、メールやオンラインはまったく使用されていません。
厚労省は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとサービス提供を行う事業所とのやりとりのオンライン化を進めるために 「ケアプランデータ連携システム」 を作りましたが、残念ながら8月末時点で普及率は9.8%と低調で積極的に使用されているとは言えません。その要因の一つが、このケアプランデータ連携システムが有料で年間21,000円のライセンス料が必要なことです。2025年6月から1年間の無料キャンペーンで普及を促していますが、2年目からは21,000円必要になるため、導入に慎重な居宅介護支援事業所が多いのではないでしょうか。
さらに、そもそも現在の 「紙媒体」 でのやりとりが 「非効率」 だと思っているケアマネジャーがそれほどいないのではないでしょうか。筆者の経営する通所介護でも、郵送や時には 「手持ち」 で実績報告をしていますが、ここが、ケアマネジャーとサービス提供の事業所が直接顔を合わせて話ができる 「情報共有の場」 となっています。また、利用サービス提供の事業所にとっては、自施設のサービス内容や空き状況を伝える 「訪問営業の場」 にもなっています。よって、ケアマネジャーもサービス提供の事業所も 紙媒体が非効率だと分かっていても、 「紙媒体の方がメリットがある」 と思い、ケアプランデータ連携システムの導入には消極的です。

▼報酬のつかない項目の義務化が生産性を下げていないか

また、現場の生産性が上がらない理由の一つとして、ここ数回の介護報酬改定で報酬のつかない取り組みの義務化がかなり増加しています。例えば、BCPの義務化、法定研修の増加など、現場レベルではかなりの負担になっています。確かに、これらが不要だとは思いませんが、法定研修で言えば、毎月1回研修を実施しなければ、必要な研修を完遂できないくらいの量になっています。特に通所や訪問事業所のように人員も時間も限られている事業所では 「時間外勤務」 で実施しなければならず、職員と経営者のどちらにもかなりの負担となっています。しかし、これらを一生懸命取り組んでも 「1円」 ももらえません。
また通所リハビリでは、前回の介護報酬改定で、入院中に疾患別リハビリ料を算定していた利用者には、入院中の 「リハビリ実施計画書」 の取り寄せが運営基準に組み込まれ、実質的な義務化となりました。もし、これに取り組まない場合は、運営基準違反として、行政指導の対象になります。しかしながら、通所リハビリがこのリハビリ実施計画書の取り寄せを頑張ったとしても、その報酬はまったくありません。要は、手間だけ増えて、収入は増えずということになっています。
さらに、もともと規定されている各種計画書や実施記録、モニタリング、請求業務など、介護施設にはかなりの間接業務が存在します。確かに、これらを介護ソフトに落とし込めば生産性は上がりますが、それでも記入する項目は紙カルテでも介護ソフトでも同じなので、限界はあります。
食事介助や入浴介助のような直接業務の生産性向上はなかなか難しく、取り組んだとしてもそれほど生産性が上がるとは思えません。よって、介護現場の生産性向上には、介護ロボットやICT、DXなどの導入も必要ですが、現場の負担を減らすための法定研修実施方法や、計画書を始めとした書類業務の効率化などの要件緩和も必要なのではないでしょうか。


第127回社会保障審議会介護保険部会


【2025年12月15日号 Vol.16 メディカル・マネジメント】