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入院期間Ⅱはすでに“中央値”に近い? -退院患者調査から2026年改定論点を読み解く-

データから読み解く!
株式会社メデュアクト 代表取締役 流石 学
DPC/PDPS(以下、DPC制度)に関する改定内容のひとつに、入院期間Ⅱを平均在院日数から在院日数の中央値へ移行することがある。
中医協総会では 「点数設定方式について、より実態に即した点数設定とする観点から、標準化が一定程度進んだ診断群分類について、一定の激変緩和措置を講じつつ、入院期間Ⅱを平均在院日数から在院日数の中央値へ移行することについて、どのように考えるか。」 として論点に挙げられた。さらに支払側からは、改定にかかる意見のなかで 「将来的に中央値に統一するべき」 と述べられている。
平均値から中央値に移行することで、多くの診断群分類において入院期間Ⅱの日数が短くなることが見込まれる。入院期間Ⅱを目安にして、日頃の病床管理を行っている病院は多いはずだ。鶏が先か卵が先かの議論になるかもしれないが、DPC制度の目的のひとつが急性期医療の標準化であり、標準的な医療としての在院日数が入院期間Ⅱであると考えれば、パスの日数設定も含め、在院日数の目安とすることは自然な選択といえる。そのため入院期間Ⅱの変更は、現場に病床管理の見直しを迫ることになる。

■入院期間Ⅱは本当に平均在院日数だったのか

2023年度 「退院患者調査」 の公開データを用いて、DPC対象病院における件数上位20の診断群分類を確認したところ、平均値と中央値の差が1日以上の診断群分類は7つあった。そのうち高齢者の代表的な疾患である誤嚥性肺炎、股関節・大腿近位の骨折、心不全は、平均値と中央値が3日以上も離れている。
入院期間Ⅱと突き合わせると、DPC対象病院における各診断群分類の平均在院日数という前提のはずだが、必ずしもそうではないことがわかる。「060380xxxxx0xx:ウイルス性腸炎手術・処置等2 なし」 は平均値5.64日に対して、入院期間Ⅱは5日となっており、前提に基づく日数設定といえる。しかし、「040081xx99x0xx:誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし」 は平均値20.60日に対して、2022年制度18日、2024年制度19日となっており、平均値と比較して1日以上の差が生じている。「160800xx01xxxx:股関節・大腿近位の骨折人工骨頭挿入術 肩、股等」 にいたっては、平均値25.50日に対して、2022年制度22日、2024年制度23日となっており、3日前後の差が生じている。むしろ中央値の方が近い。

■平均値、中央値、入院期間Ⅱを時系列にすると…

「160800xx01xxxx(24年制度では160800xx02xxxx):股関節・大腿近位の骨折人工骨頭挿入術肩、股等」 を取り上げ、2014年度以降の公開データを用いてDPC対象病院における在院日数の平均値、中央値と各年度に設定されている入院期間Ⅱの推移を図にまとめた。
この10年を振り返ると、地域包括ケア病棟の導入や回復期リハビリテーション病棟に早期転棟させる動きもあり、平均値、中央値ともに2020年度まで年々短縮する傾向にあった。病床管理のトレンド変化はあっても、当該診断群分類の在院日数の平均値と中央値は3~4日程度の差が生じている。
ここでは入院期間Ⅱの動きに着目したい。2014年制度では入院期間Ⅱは28日だった。その後、平均在院日数が短縮するにつれて入院期間Ⅱも短くなり、16年改定以降は26日→24日→23日→22日と改定ごとに短縮していった。平均値が短くなったために、入院期間Ⅱも短くなっているものと理解していたが、平均値の短縮スピード以上に入院期間Ⅱの日数が短くなっている。入院期間Ⅱの日数はDPC対象病院の過去実績に基づくが、それを考慮しても中央値に合わせた設定に見える。
2026年改定の見直しポイントになってはいるものの、実はそれ以前から改定のたびに中央値に近づける方向で設定されてきた可能性もうかがえる。パスの見直しをはじめ、医療の効率化を図る観点からも、政策誘導として入院期間Ⅱを短縮することは妥当と考えるが、医療という規制産業のなかでは、前提条件の約束はお互いに守り合いたいように思う。
現場対応としては、新制度の日数設定を確認して、自院のデータと照らし合わせるところから始めたい。


図 年度ごとの在院日数の平均値・中央値と入院期間Ⅱの日数


【2026年2月1日号 Vol.19 メディカル・マネジメント】