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専門外来は経営の武器になるか? ―内科クリニック10年目院長からのリアルな相談―

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

近畿地方で開業10年目の内科診療所の院長より、次のようなご相談をいただきました。
「当院の周辺には皮膚科がなく、患者さんからも 『ここで皮膚の相談もできたら助かる』 という声をよく聞きます。そこで、皮膚科の専門外来を開設したいと考えています。皮膚科専門医の友人に相談したところ、週1回であれば協力してもらえることになりました。専門外来を開設するにあたり、注意すべきポイントを教えてください」

【回答】

専門外来は 「始め方」 で9割が決まります。
近年、「患者数を増やしたい」 「地域のニーズに応えたい」 という理由から、専門外来の開設を検討するクリニックが増えています。ただし、専門外来は
  • うまくいけば新たな強みになる
  • 設計を誤ると 「赤字」 「トラブル」 「評判低下」につながる
という、両刃の剣でもあります。
そこで今回は、専門外来を成功させるために、必ず押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。

【ポイント①】 ターゲット患者層と 「診療の軸」 を明確にする

専門外来を検討する際、最初に考えるべきは、「誰の、どんな困りごとを解決する外来なのか」 です。闇雲に診療科を増やすのではなく、
  • 既存患者の年齢層・性別
  • 立地(住宅地・オフィス街など)
  • 周辺医療機関の診療科構成
を踏まえて、自院に最も相性の良い専門外来を選ぶことが重要です。例えば、
  • 女性患者が多い内科の場合 →「女性医師による女性専門外来」 「更年期外来」
  • オフィス街に立地するクリニックの場合 →「禁煙外来」 「ストレス外来」 「生活習慣病専門外来」
  • 糖尿病患者が多く、指導に時間を要している場合 →「糖尿病専門外来」 として診療の質を高める
といった形で、既存診療の延長線上で専門性を深めるのが王道です。また最近では、糖尿病とうつ症状など複数疾患を併せ持つ患者が増え、他科との連携や専門外来化によって、より丁寧な診療が可能になるケースもあります。

表:クリニックにおける診療科別の主な専門外来

作成:MASパートナーズ

【ポイント②】診療体制と採算性を「現実的に」設計する

専門外来は、予約制かつ1人あたりの診療時間が長くなりやすいのが特徴です。
そのため、患者数が安定しない初期段階では、
  • 外部医師の人件費
  • 診療枠の確保
  • 院長自身の診療時間への影響
などを考慮しないと、コスト割れを起こす恐れがあります。特に重要なのが、「どの時間帯に専門外来を入れるか」 です。
例えば、
  • 週1回、午後診療の一部を専門外来枠に充てる
  • 昼休みが長い地域特性を活かし、昼の時間帯を活用する
  • 院長の診療時間を一部調整し、時間を捻出する
など、既存診療とのバランスを見ながら設計する必要があります。
診療科目や診療時間の変更が生じる場合は、保健所・厚生局への変更届が必要になるケースもあります。「知らずに始めていた」 ということがないよう、事前確認は必須です。

【ポイント③】専門外来成功のカギは 「外部医師との関係づくり」

専門外来の成否を左右する最大のポイントは、外部から招く医師との関係性にあります。
多くのクリニックでは、院長の友人・知人や出身大学の医局ネットワークなどを通じて専門医を確保していますが、「採用できても長く続かない」 「温度差がある」 といった悩みも少なくありません。そこで重要になるのが、採用時と採用後の “仕組みづくり” です。
具体的には、
  • 非常勤であっても雇用期間を必ず明示する
  • 年1回は、経営実績・患者満足度を踏まえて契約を更新する
  • 担当患者数の目標を設定し、達成時にインセンティブを設ける
など、「非常勤だから関係ない」 いう意識を持たせない工夫が効果的です。
また、専門外来の評判はそのまま自院の評判につながります。診療方針・対応スタンスについては、開設前のすり合わせや定期的なミーティングを通じて、必ず共有しておきましょう。

【まとめ】専門外来は 「小さく始めて、育てる」 発想が成功の近道

専門外来は、地域ニーズに応え、クリニックの価値を高める有効な手段です。一方で、準備不足のまま始めると、院長やスタッフの負担が増える原因にもなります。
大切なのは、以下の3点を押さえながら、小さく始めて、手応えを見ながら育てていくことです。
  • ターゲットを絞る
  • 無理のない体制を組む
  • 人との関係を丁寧につくる
ぜひ、患者さんにも、スタッフにも、「始めてよかった」 と思われる専門外来づくりに取り組んでいただければと思います。


【2026年1月15日号 Vol.18 メディカル・マネジメント】