病院・診療所

医療従事者が夢を持てる診療報酬が必要

診療報酬ズームアップ
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■看護補助者と事務職員に手厚いベースアップ配分へ

昨年12月24日、2026年度の診療報酬改定率について、下記のように本体部分を3.09%引き上げることが決定された。

【2026年度診療報酬改定率】
+3.09% ※26年度+2.41%、27年度+3.77%
① 26・27年度の賃上げ対応+1.70%
 ※26年度+1.23%、27年度+2.18%
② 26・27年度の物価対応 +0.76%
 ※26年度+0.55%、27年度+0.97%
③ 食費・光熱水費分 +0.09%
④ その他
 ・24年度改定以降の経営悪化への緊急対応分 +0.44%
 ・その他 +0.25%
各科改定率医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%
⑤効率化・適正化 ▲0.15%

賃上げ対応分が①1.70%、物価対応分が②0.76%となったが、薬価等を0.87%引き下げるため、全体改定率は 3.09%-0.87%=2.22% となる。診療報酬本体の改定率が3%を超えるのは1996年度の3.4%以来30年ぶりである。
特筆すべき点は、①賃上げ対応分1.70%の財源で医療現場での生産性向上の取り組みと併せて、26年度と27年度でそれぞれ3.2%分のベースアップを措置すること。他産業との人材獲得競争に直面し、慢性的な人手不足の看護補助者及び事務職員については、それぞれ5.7%として上乗せ措置を講じる。
一般企業と就職戦線で重なる事務職員の人材確保難はすでに始まっている。日本経済新聞2025年4月14日朝刊には 「初任給30万円以上130社、25年度倍増 地銀や私鉄伸び」という記事が掲載されていた。病院経営にマネジメントが必要と言われて久しいが、このように初任給30万円超の企業が現れては、なかなか4大新卒確保も難しい。インフレ経済下で自分たちの商品価格を自由に値上げできる資本主義経済下の一般企業と診療報酬という公定価格による社会主義経済下の病院との給与格差は拡大するばかりだ。
弊社クライアントも例年は定期的に安定確保できていた4大新卒者が、25年度は 「応募すらない」 と嘆いていた。また、医療事務系専門学校は定員割れ等で閉校も多くなっており、事務職員採用困難に拍車をかけている。今回の事務職員ベースアップがあったとしても、短期的に一般企業との格差を埋めるのは難しいが、今後も継続的な配慮をしていかないと、ますます医療業界の人材不足に拍車がかかってしまう。なお、26年改定におけるベースアップ関連の具体的な点数配分方法はこれからの答申や告示を待たないと詳細は不明だ。

■本年1月下旬からの改定スケジュール

改定予定としては、本年1月下旬に点数が●●点と伏せ字になった 「個別改定項目について」 (いわゆる短冊)が中央社会保険医療協議会(中医協)で示される。ちなみに、前回改定は2024年1月26日だった。そして、2月上旬(前回2024年2月14日)に答申によって点数が確定して、「個別改定項目について」 (短冊)が発出される。3月上旬(前回2024年3月5日)に告示によって細かな施設基準等の通知等が発出され て、分厚い 「診療報酬点数表改正点の解説」 (いわゆる白本)が発行される。
公表された診療報酬点数の内容に疑義が生じるために3月下旬に事務連絡(Q&A)として 「疑義解釈資料の送付について」 (前回はその1が2024年3月28日付け)が発出される。そして、4月1日から新点数施行だったが、前回2024年度改定から2ヶ月遅れの6月1日からとなった。今回も6月からである。その理由は電子カルテベンダーの働き方改革のためである。

■インフレ経済下26年改定の一丁目一番地は物価や賃金、人手不足等への対応

改定の基本方針は、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会と医療部会において昨年12月9日に了承された。改定の 「基本的視点」 は、例年通り4つの視点になっており、これに沿って中医協で議論されて診療報酬点数が配分されていくわけだ。

【2026年改定における4つの基本的視点】
① 物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】
② 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
③ 安心・安全で質の高い医療の推進
④ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

4つの基本的視点の一丁目一番地にあたる視点①は、「重点課題」 として 「物価や賃金、人手不足等への対応」 になっている。前回24年度改定時はインフレ経済の兆しはあったが、物価は今ほど高騰していなかったため、前回の視点①は 「人材確保・働き方改革等の推進」 だった。前々回22年度改定時は新型コロナのパンデミック中だったため、視点①は 「新型コロナウイルス感染症等対応」 であった。このように視点①は改定時の医療環境に合わせた最重要課題への対応となる。
今回のように本体改定率が3%を超えるのは、1996年度の3.4%以来30年ぶりとなった。逆に言うとデフレ経済下で診療報酬も失われた30年であった。改定はインフレ経済下で病院7割、診療所4割が赤字という未曽有の医療機関経営危機下で行われる。厚労省の改定現場責任者である林医療課長は 「新しい歴史をつくっていく改定」 と日経ヘルスケア25年11月号のインタビューで述べている。今後も継続的な診療報酬引き上げを行って、医療従事者が夢を持って医療機関で働けるような賃金体系を構築する必要がある。


【2026年2月1日号 Vol.19 メディカル・マネジメント】