介護施設
これからの老健は、たくさんの職員でたくさんの利用者をみる時代
たくさんの職員でたくさんの利用者を
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之
▼老健の議論が開始
8月7日に開かれた介護給付費分科会にて、介護老人保健施設(以下、老健)の介護報酬改定に向けた議論が行われました。老健に関しては、平成24年度改定にて、在宅復帰率とベッド回転率の指標が導入され、在宅復帰が促進されました。さらに平成30年度には在宅復帰機能に加えて、在宅療養支援機能として、在宅復帰率とベッド回転率以外の指標も導入され、超強化型からその他型まで5段階の基本サービス費が設定されるようになりました。
筆者は、全国で多数の老健の支援を行ってきましたが、老健で非常に苦労するのが、ベッド稼働率です。令和4年介護施設経営概況調査結果によれば、老健の収支差率は「1.3%」であり、100床の老健では、2床の空床が出ると赤字になる計算です。実際は、そこまでシビアではありませんが、10床空きが出れば、黒字にはならないでしょう。これから高齢者人口が急増する都市部では、そこまでベッド稼働率が問題になることはないと思いますが、大変なのは地方にある老健です。人口10万人当たりの事業所数では東京都が「6.5」、大阪府「9.5」に対して、鳥取県は29.6」、徳島県「21.2」と4倍以上の差があります。
筆者は、全国で多数の老健の支援を行ってきましたが、老健で非常に苦労するのが、ベッド稼働率です。令和4年介護施設経営概況調査結果によれば、老健の収支差率は「1.3%」であり、100床の老健では、2床の空床が出ると赤字になる計算です。実際は、そこまでシビアではありませんが、10床空きが出れば、黒字にはならないでしょう。これから高齢者人口が急増する都市部では、そこまでベッド稼働率が問題になることはないと思いますが、大変なのは地方にある老健です。人口10万人当たりの事業所数では東京都が「6.5」、大阪府「9.5」に対して、鳥取県は29.6」、徳島県「21.2」と4倍以上の差があります。
▼全国で一番競争の激しい鳥取県
筆者は、全国ダントツで老健が多い鳥取県にあるA老健を支援しています。筆者が支援を始めた時には、入所者の確保ができず、ベッド稼働率が75%まで低下していました。もちろん、この状態では在宅復帰率を高めることもできず、さらに、介護職員の採用も難しく、「今後、ベッドを徐々に削減していくしかないのか」と経営陣は頭を抱えていました。このA老健のある場所は、人口10万人当たりの老健のベッド数が全国平均の2倍もあります。そして、周囲の老健は、すでにリハビリに力を入れて超強化型や強化型を算定しており、今更、リハビリを強化しても入所者確保は難しい状況でした。
▼採用を強化し重度者受け入れを強化
そこで、筆者は、まず看護職員と介護職員の採用を強化し、重症者の受け入れを強化してはどうかとおすすめしました。老健の入所者には、リハビリ目的の入所者もいますが、医療機関や在宅から紹介される医学的管理が必要な入所者もいます。よって、リハビリを強化し、在宅復帰を進めている周囲の老健とは「真逆の戦略」を取り、重度者や在宅復帰困難者を中心に入所を受け入れることにしました。
まずは看護職員と介護職員の採用方法を見直しました。採用方法は、従来のハローワークの紹介に加えて、自法人のホームページをリニューアルし、さらにSNSを始め、自前でも採用できるようにしました。その結果、すぐに予定の人員を採用することができました。どこの施設もそうですが、「職員が不足している」といっても、何十人も不足しているわけではなく、ほとんどが数名です。介護施設では、まだまだホームページやSNSを使った採用を行っているところは少なく、きちんと設計すれば十分に効果があります。そして、職員の増加に合わせて、入所の問い合わせから入所までのプロセスを見直したり、入所後のチームケア体制を構築したりと業務改善を行ったところ、途中、新型コロナウイルスの影響で、入所制限もありましたが、稼働率は取り組みを始めて半年ほどで85%を超えました(図)。今後は、さらに支援相談員、リハビリ職、介護職を増員し、稼働率90%を目指す予定です。また、併設の有料老人ホームがグループホームと連携を強化することで在宅復帰率を高め、現在の加算型から強化型を算定する計画です。

まずは看護職員と介護職員の採用方法を見直しました。採用方法は、従来のハローワークの紹介に加えて、自法人のホームページをリニューアルし、さらにSNSを始め、自前でも採用できるようにしました。その結果、すぐに予定の人員を採用することができました。どこの施設もそうですが、「職員が不足している」といっても、何十人も不足しているわけではなく、ほとんどが数名です。介護施設では、まだまだホームページやSNSを使った採用を行っているところは少なく、きちんと設計すれば十分に効果があります。そして、職員の増加に合わせて、入所の問い合わせから入所までのプロセスを見直したり、入所後のチームケア体制を構築したりと業務改善を行ったところ、途中、新型コロナウイルスの影響で、入所制限もありましたが、稼働率は取り組みを始めて半年ほどで85%を超えました(図)。今後は、さらに支援相談員、リハビリ職、介護職を増員し、稼働率90%を目指す予定です。また、併設の有料老人ホームがグループホームと連携を強化することで在宅復帰率を高め、現在の加算型から強化型を算定する計画です。

▼たくさんの職員でたくさんの利用者を
つまり、A老健が上昇気流に乗ったのは、「少ない職員で、少ない利用者をみていく」という衰退路線から、「たくさんの職員で、たくさんの利用者みていく」と真逆に舵を切ったところにあります。介護施設では、「職員採用は難しい」と思い込み、ハローワーク以外何も手を打っていない施設も多くあります。しかし、筆者の経験では、ホームページやSNSをしっかり活用すれば、まだまだ十分に採用は可能であると思います。今後の老健の運営は、地域のニーズを汲み取り、それに合わせて職員を増やして、利用者を増やしていくことが重要です。
【2023. 9. 15 Vol.576 医業情報ダイジェスト】
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[事務れんらクンの更新情報]
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2025-05-02
令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)(令和7年4月18日事務連絡)を追加しました
2025-05-01
令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.13)(令和7年4月7日事務連絡)を追加しました
[お知らせ]
2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
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