介護

リハビリ特化通所介護の稼働率が過去最高

この1年で取り組んだ2つのこと
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
5月8日に新型コロナウイルスが2類から5類に変わったことにより、筆者の支援先である短時間通所リハビリやリハビリ特化型通所介護では新規利用者の紹介が急増しています。その動きと同様に、筆者が岡山県倉敷市で経営しているリハビリ特化型通所介護「リハビリテーション颯倉敷(定員18名、3時間×2単位制)」では、5月の新規利用者数が10名を超え、6月に入ってもその勢いが続いており、過去最高の稼働率となる見込みです。

コロナ禍におけるこの3年間は、「第〇波」が来るたびに、ケアマネジャーからの新規利用者は無くなり、さらに既存の利用者の利用控えによって、非常に厳しい経営環境を強いられていました。特に昨年2月は利用者とスタッフの感染も相次ぎ、2週間の休業を行いました。その影響で、その後、数か月間は稼働率が回復せず、やっと回復してきたと思ったら「第〇波」で再度、稼働率が低下していました。

さらに追い打ちをかけるようにスタッフの退職も相次ぎ、事業所自体の存続も危ぶまれる時期もありました。しかし、筆者が信頼を寄せる20代のイケイケ管理者の作業療法士は「必ず回復してみせます」という根拠ない自信を持ち、どんなに過酷な状況でも弱音を吐くことはなく前向きに日々の業務に当たっていました。 筆者もこの管理者に励まされ「スタッフの退職を引きずるのではなく、新しいスタッフで新しいチームを作ろう」「来ていない利用者を嘆くより、来ている利用者を大切にしよう」と前向きに取り組むことができました。

1 スタッフのエンパワメントを引き出すこと

まず、昨年2月のコロナ休業後に取り組んだのは、スタッフの教育です。常勤スタッフ6名中3名が短期間で退職するという緊急事態でしたが、ありがたいことにすぐに3名のスタッフを採用することができました。看護大学を卒業し、新卒で弊社に就職した看護師は利用者の信頼を得て、自ら学びながらどんどん成長しています。また、第二就職で、入職した生活相談員は、介護職からの転職で、最初は苦労していましたが、利用者契約、アセスメント、通所介護計画作成などの業務を一通りできるようになりました。そして、まったく異業種から早期退職後のセカンドキャリアとして就職した50代の男性介護職員は、持ち前の体育会系のノリですぐに利用者からの人気を得て、さらに、20代の管理者、看護師、生活相談員の心の支えとなってくれています。

筆者は、この新しく入った3名の職員に「辛いこともあると思うが、新卒、第二新卒、セカンドキャリアと人生の重要な時期にいることを忘れず、ここで成長してほしい」と訴えてきました。筆者が参加する月1回の会議では、経営理念、方針、自立支援など今まで「当たり前」だと思って言ってこなかったことについて改めて語るようにしました。特に、「積極的に仕事に取り組むことがどれだけ自分を成長させるか」や「仲間と協力し、助け合うことで、自分の力以上を出せるようになる」と訴え続けました。また、管理者が毎月、個人面談の時間を持ち、しっかりとフォローしてくれました。
1年後、この新しく入ったスタッフによって、以前よりも多くのことに取り組めるようになりました。そのおかげで、徐々に新規利用者の紹介数は増加し、ケアマネジャーに褒めていただく機会がコロナ前よりも増えてきました。

2 利用者のためになることを徹底的にやる

新しいスタッフを中心にこの1年間で取り組んできたのは、「利用者のためになることは何でもやろう」ということです。言い出したのは筆者ですが、具体的な内容は、スタッフが考えてくれました。例えば、「皆勤賞」を導入し、その月、休まず通ってくれた利用者を表彰するようにしました。最初は賞状授与だけでしたが、半年継続でメダル、1年間継続でトロフィーなどグレードアップし、令和5年5月は利用者80名中、55名が皆勤賞となりました。
また、管理栄養士がいないので、十分な栄養管理ができるわけではないのですが、それでもできることを考えてインボディー・ジャパン社の「Inbody 270」という体組成計を導入しました。Inbody270は、体重、脂肪量、筋肉量だけではなく、体内の水分量やミネラル量、タンパク質量も分かるため、今まで口頭で食事内容や水分摂取量を聞くしかなかったのが、客観的なデータで出てくるようになりました。また、リハビリによって筋肉量の増加や脂肪量の低下も分かるので、利用者のモチベーションアップになっています。



コロナの影響が減少したことで、利用者が増加していることが一番の要因であると思いますが、それ以外にもスタッフの教育や利用者へのサービス充実など地道に取り組んできたことが利用者の急増につながっていると思います。


【2023. 7. 15 Vol.572 医業情報ダイジェスト】