組織・人材育成

新任考課者研修の目的と主な内容

人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社T o D o ビズ 代表取締役 篠塚 功
毎年6月に、新たに主任以上の役職者に昇進した人(30名程)を対象に、新任考課者研修を2日にわたって開催している法人があります。人事考課が、相対考課から絶対考課へと形を変えた際、以前の部下を横に並べて順位を付ける相対考課であれば簡単にできたため、研修など必要ありませんでした。しかし一定の基準を設定し、それを基に評価をする絶対考課では、研修をしなければ客観的な評価が難しいため、研修は必須になったと考えます。人事考課で、賃金や昇格等の処遇が決まるのですから、客観的な評価をするための研修は必要だったわけです。そして、さらに時代は変わり、人事考課がマネジメントツールとして使われるようになった今日、筆者は、この研修を、部下を持つようになった役職者が、人材マネジメント(育成と部署目標達成)を行えるようになるための研修ととらえて実行するようにしています。そこで今回は、新任考課者研修の目的と内容について考えます。

新任考課者研修の目的

職員が病院等に入職して最初に受ける研修は、新入職員研修です。この研修の目的は、①病院の理念や概要を理解してもらうこと、②仕事の指示・命令の受け方や報告の仕方等の仕事に関する基礎知識を身に付けてもらうこと、③新入職員間の相互理解を深め、共に働く仲間としての連帯感を高めてもらうことなどが挙げられます。
そして、役職に就いて初めて受ける新任考課者研修の目的は、①病院の人事理念や人事制度(等級制度、人事考課制度、賃金制度)を理解してもらうこと、②目標管理の目標の立て方や人事考課の仕方に関する基礎知識や基本的技術を身に付けてもらうこと、③新任役職者間の相互理解を深め、共に人材マネジメントを行う仲間としての連帯感を高めてもらうことなどが考えられます。特に、初めて部下を持ち、マネジメントをしなければならない立場になった者同士、将来困ったことが起これば、助け合う仲間として、絆を深めてもらうことは大事です。

新任考課者研修の主な内容

お互いのコミュニケーションを図ることはもとより、目標設定や人事考課の基本的な仕方を身に付ける上でも、演習は必須と言えます。特に新任考課者研修では、多くの演習を取り入れるようにしています。参考までに、新任考課者研修の2日間のコースが表のプログラムです。これに沿って、主な研修内容について説明します。
初日は、まず、院長等、病院のトップに開会の挨拶をお願いしています。組織のトップの話を聞く機会は意外と少ないので、15分~30分位は、病院の理念やビジョンについて聞く機会を作ることは大事です。次に、人事制度の概要および人事考課や目標管理について、講義によって学習してもらいます。
講義の後、演習を行い、演習1では、5人ほどのグループに分かれ、参加者に自分の目標を発表してもらい、その内容を他の4名の参加者が、目標設定
の基本事項が書かれたチェックシートを用いてチェックをします。自分と同じ新任の役職者がどの程度の目標を立てているのか難易度を理解することと、自分とは違った視点のアイデアを共有することができます。当然、基本事項から外れた部分を知り、修正する機会にもなります。さらに、演習2で、グループで協議し修正した目標を全員の前で発表してもらいます。時間の関係で、全員の発表はできませんが、各グループから2名程の目標を発表してもらうことは可能です。
2日目は、考課者訓練の目的と方法に関する講義をし、事例を使って、事例の人物を評価する考課者訓練を行います。次に、育成面接の準備と方法について講義を行い、事例の人物の能力等分析し育成するための面接メモを作成してもらいます。最後に、作成したメモを使用して、被評価者役にフィードバックするロールプレイングを行ってもらい終了です。これも、グループを代表して2名程に実演してもらいます。
2日間の研修の中に必要なことを入れ込んでいるため、全員の前での発表等は代表者のみになってしまう部分もありますが、目標設定、人事考課、育成面接メモの作成は、全員に取り組んでもらうことができています。
役職者として重要な役割である人材マネジメントを行うために、そのツールである人事考課制度の研修を受けてもらうことは、部下を持つ役職者として活動していく第一歩となります。


表:新任考課者研修プログラムの例


【2025. 6. 15 Vol.3 メディカル・マネジメント】