病院・診療所

存在感が右肩上がりの管理栄養士と栄養食事指導の算定状況

データから読み解く!
株式会社メデュアクト 代表取締役 流石 学
医療機関で管理栄養士のニーズは着実に高まっている。背景には(1)高齢化と入院患者の低栄養問題、(2)チーム医療の拡大、(3)働き方改革・タスクシフト/シェアの政策による後押しがある。近年は入院患者の生命予後に栄養状態が強く関わることも示されており、入院中の栄養介入の必要性は明確になっている。特に高齢者の入院が増加するなかで、管理栄養士の関与を求める声は年々大きくなっている。
同時に、管理栄養士に期待される役割は 「給食管理中心」 から 「病棟常駐・栄養食事指導・退院支援・在宅連携」 に拡張している。特に病棟では、入院前情報の収集、栄養スクリーニング、栄養管理計画の策定、ミールラウンド、退院後の栄養指導・情報連携などが求められている。
管理栄養士の病棟配置が入院料の施設基準に盛り込まれることも増えており、必要な人数もまた改定を重ねるたびに増加している。次期診療報酬改定に向けた議論でも、管理栄養士による介入評価の必要性が指摘され、現行制度で配置が必須となっていない地域包括ケア病棟の栄養管理の在り方が論点の1つになっている。
こうした社会ニーズに加えて、施設基準上の要件もあり、管理栄養士の病床あたりの勤務人数は増加傾向にある。本誌2024年12月1日号においても、令和元年7月と令和5年7月を比較して、病床あたりの管理栄養士数が増加していることを報告した。

■栄養食事指導料の算定状況は?

一方で、昨今の厳しい経営環境下では、人件費の増加を懸念する声も否めない。管理栄養士に限らず、増員した場合の収益面への影響も考慮したうえで増員の可否を判断する医療機関が一般的だろう。今回は、入院栄養食事指導料、外来栄養食事指導料、集団栄養食事指導料の算定状況を確認した。施設基準上の要件を除けば、管理栄養士による直接的な収益は、栄養食事指導による診療報酬が大きなウエイトを占める。
図はNDBオープンデータを元に、3つの栄養食事指導料の算定回数を2018~2023年度で比較したものだ。算定回数は全体としては右肩上がりで、単純に回数だけを見ると外来栄養食事指導料が最も大きなボリュームを占める。
入院栄養食事指導料も緩やかな増加基調で、病棟常駐やチーム介入の広がりを反映していることがわかる。一方、集団栄養食事指導料は減少傾向にあり、コロナ禍の影響を受けたとみられる2020年度以降は、従来の半分に満たない。もともと割合は低いとはいえ、集団指導から個別指導への移行は一層進んでいるようだ。
オンラインによる栄養食事指導(以下、オンライン指導)の実施状況はどうだろうか。同じくNDBオープンデータより、通信機器を用いた外来栄養食事指導料の算定回数をまとめた。2020年改定でオンライン指導への評価(当時は2回目以降の継続的なフォローアップのみ)が導入されている。
社会全体ではオンラインによるミーティング機会が増加しているものの、栄養食事指導に限れば、コロナ流行期の2020年度をピークに減少傾向にある。2022年改定で初回からオンライン指導を算定できるようになり、初回指導に限れば増加しているものの、全体では開始当初の2/3程度まで減少している。なお、外来栄養食事指導料の算定回数に占めるオンライン指導の割合は0.1%である。現状ではオンライン指導はごく一部に限られているようだ。





■ 「食事を整える人」 から 「栄養で治療と生活を支える専門職」  へ

栄養管理を行うこと、それに合わせて栄養食事指導料を算定することは、医療の質の観点からも重要である。
入院に限った話をすれば、一部の高齢患者による在院日数の長期化が課題になっている。その要因の1つとして、フレイルや嚥下機能の低下、併存疾患に伴う低栄養が回復を遅らせてしまうことが挙げられる。
早期退院の鍵は、入院直後からの栄養スクリーニングと個別計画、経口摂取支援、嚥下機能に応じた食形態の調整等を一気通貫で設計することにある。栄養食事指導の点数自体はけっして大きいものではない。しかし、在院日数の短縮や合併症抑制、再入院の減少、リハビリ効果の最大化など、直接的な数字では評価が難しいものの、間接的には病院経営に間違いなく貢献している。
管理栄養士は 「食事を整える人」 から 「栄養で治療と生活を支える専門職」 へと再定義されつつあり、医療機関における存在感は今後さらに高まるだろう。


【2025年11月1日号 Vol.13 メディカル・マネジメント】