組織・人材育成

最低賃金の上昇と医療機関のパートタイム・有期雇用職員の賃金制度

人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社ToDoビズ 代表取締役 篠塚 功
令和7年の地域別最低賃金の全国加重平均は1,121円となり、昨年の1,055円より66円引き上げられました。引上げ率は6.3%です。最低賃金の発効日は、都道府県ごとに異なり、10月1日~翌年3月頃までに適用されます。筆者のクライアントも来年3月1日から適用される予定で、先日相談を受けました。正職員については、採用確保の観点から最低賃金に関係なく賃金改定を行う方針ですが、パートタイム等の職員については、従来は最低賃金を下回る職員のみ改定をしてきたとのことです。他の医療機関では、パートタイムや有期雇用職員にも賃金表を適用し、定期昇給などを行っているのか知りたいとの相談でした。
そこで今回は、パートタイム・有期雇用職員の昇給の実態とあるべき姿について考えます。

パートタイム・有期雇用職員の昇給実態

厚生労働省 「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」 によれば、パートタイム・有期雇用職員の定期昇給を行っている割合は正職員に比べて低く、基本給決定において最低賃金を重視する割合が高いことが分かります(図表1、2)。このことから、パートタイム職員等では、定期昇給制度が整備されておらず、相談を受けた病院のように、最低賃金の上昇に合わせて昇給しているケースも多いものと推察します。
令和2年4月1日に、パートタイム・有期雇用労働法が施行され、正職員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇において、不合理な差を設けることが禁止されたことはご承知のとおりです(同一労働同一賃金)。この総合実態調査は、法律が施行された翌年の調査ですから、現在は、もう少し昇給についても、正職員と同様に制度化しているところは増えていると考えられます。

パートタイム・有期雇用職員の定期昇給の必要性とその方法

「同一労働同一賃金」 の原則からすれば、正職員と同一職務であり、正職員に定期昇給を行っているのであれば、パートタイム等職員に定期昇給制度がないことは、不合理な待遇差とされる可能性がないわけではありません。
パートタイム・有期雇用労働法が施行される前に、某医療機関で、職務評価を実施した際、パートタイムの医療従事者の職務内容が高いレベルを示しているにも関わらず、時間給が、正職員より低い職員が散見されました。厚生労働省が推奨している要素別点数法という仕事の大きさを評価する手法(職務評価)で、医療従事者の職務を評価したわけですが、看護師や臨床検査技師など国家資格を有する職員の職務内容は、正職員と同レベルの状況になる傾向にありました。したがって、同一労働同一賃金の観点からも定期昇給制度は必要です。
パートタイム職員等の賃金制度の整備については、いくつか方法が考えられます。例えば、正職員の賃金表に準拠して臨時職員賃金表を整備し(月給で表す)、パートタイム職員については、その賃金額の時間単価を計算して支給する形にします。あるいは、時給の賃金表を作成して運用するケースも多いです。何れにしても、職種別に勤続や経験に応じた賃金表を作成する必要があります。昇給については、作成した賃金表に沿って行うわけですが、フルタイムの有期労働者であれば、正職員と同じように毎年昇給をしてもよいでしょう。しかしパートタイムについては、2年に1回の昇給とするなど、勤務時間数に応じて変えなければ、フルタイム職員等との公平性が保てません。あるいは、昇給の幅を変えられるような賃金表とし、パートタイムの職員は、勤務時間数に応じてフルタイム職員の半額にするなど調整が必要です。さらに、パートタイム職員等においても人事考課を行うのであれば、人事考課の結果を昇給に反映させる賃金表も考えられます。
パートタイム等職員であっても、最低賃金の上昇に合わせた改定のみでは、外的要因に依存した不安定な賃金制度となります。同一労働同一賃金の原則だけでなく、不足している医療従事者の確保の観点からも、パートタイム・有期雇用職員に対して定期昇給のある賃金制度を整備することが望まれます。医療機関では、子育ての期間は、パートタイムで働きたいという看護師さんも多いと思われますから、これらの職員も意欲を持って働ける環境を整えることが、組織の安定的な運営につながります。

図表1 : 定期昇給をしている割合(単位%)


図表2 : 基本給決定の際の考慮点(複数回答、医療・福祉の主な項目抜粋、単位%)



【2025年12月15日号 Vol.16 メディカル・マネジメント】