病院・診療所

急速な環境変化に精神科病院は地域移行を目指せるのか

データから考える医療経営
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優

■着実に進む精神科病院の入院患者高齢化

精神科病院では、入院患者数は減少する一方で、かつ高齢化が顕著に進んでいる。精神保健福祉資料、通称 「630調査」 の年齢区分別の在院患者数を見ると、1998年には34万人弱いた在院患者数が、2024年は25万人にまで減少した=グラフ1=。しかし65歳以上の在院患者数は、逆に11万人弱から16万人弱に増加した。そのため、65歳以上比率は31%から63%に32ポイント増えた。

グラフ1 精神科病院の在院患者数の推移

精神保健福祉資料(630調査)を基に作成

入院患者の高齢化は、精神科病院に限らず、DPC算定病床や回復期リハビリテーション病床など施設・機能を問わず生じている。しかし、2016年から2023年の65歳以上比率の変化を比較すると、DPC算定病床の2.9ポイント増に対し、精神科病院は6.1ポイント増となっており、高齢化の進展が速い。
入院患者の変化は、減少と高齢化だけでなく疾患の変化も生じている。薬物治療の進化や外来移行などの取り組みにより、統合失調症の入院患者は30年弱で半減に近いペースで減少している=グラフ2=。一方、アルツハイマー病型認知症は同じ期間に4倍に増えている。

グラフ2 精神科病院の在院患者数の推移

精神保健福祉資料(630調査)を基に作成

■地域移行に重点を置く「診療報酬制度」

診療報酬は地域移行・地域定着に重きを置いている=資料=。

資料 地域移行・地域定着に向けた支援に力を入れる精神医療の2024年度診療報酬改定

厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料より引用

しかし、積極的に地域移行に取り組めば、さらなる稼働低下を招く可能性が高い。以前、地域移行機能強化病棟入院料について関係者へのヒアリングなどを通じて調べたとき、冷ややかな反応とその届け出施設数が少なかったことを記憶している。そこで、次回は精神科地域包括ケア病棟入院料や通院・在宅精神療法の療養生活継続支援加算など、新たな評価の仕組みがどの程度浸透しているのか、また精神科病院の機能継続を前提とした生き残り策について考える。


【2025年10月15日号 Vol.12 メディカル・マネジメント】