保険薬局
令和8年度調剤報酬改定を考える
ファーマ・トピックス・マンスリー
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方 孝行
令和8年度の報酬改定に向けて、いよいよ中央社会保険医療協議会総会(以下、中医協)での議論が本格化している。2025年9月10日に開催された第616回総会では、 「調剤について(その1)」 が議題となり、薬局・薬剤師を取り巻く環境と調剤医療費、調剤に係る診療報酬上の評価について現状が整理された。その上で、次回改定に向けた論 点が提示され、今後はこれらの論点に沿って議論が展開されていく。 「調剤について(その1)」 における論点は以下のとおりである。
【論点】
【論点】
- 地域の医薬品供給拠点の役割を一層充実させる観点から、調剤技術料(調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算等)における評価をどのように考えるか。
- 薬剤師の対人業務を拡充させる観点から、薬学管理料(調剤管理料、かかりつけ薬剤師指導料)における評価をどのように考えるか。
一つ目の論点にある後発医薬品調剤体制加算は、転換期を迎えている。既に触れたとおり、選定療養費制度の開始により後発品使用率は徐々に上昇し、数量ベースでは90%を超えている。これに伴い、支払基金側は 「後発医薬品調剤体制加算は一定の役目を終えつつある」 として、当該加算を薬局の体制加算として存続させることは非合理的である と主張している。一方、薬剤師会は供給不安定な状況下でも丁寧な説明を行い、後発医薬品の使用促進に努めているとして、その努力への評価を求めている。実際、後発医薬品調剤体制加算3を算定する薬局は増加しており、この加算を現状のまま維持することは困難だろう。その財源が医療DX関連や薬局機能に関する加算へ振り分けられ、機能の高い薬局に適切に配分されるのであれば、受け入れざるを得ない状況にあるのも事実である。
また、苦しい経営の中でも賃上げを実施するために調剤基本料引き上げを求めているが、薬局数が増え続けているという矛盾もあり、その要望を通すことは極めて難しい局面にある。さらに、かかりつけ薬剤師指導料は2016年の導入から約10年が経過するものの、国民への周知が進まず、算定割合は処方全体の約1.8%にとどまる。これは、かかりつけ薬剤師の認定要件(在籍年数や勤務時間等)の影響もあるが、令和6年度時点で65.8%を占める基本料1の薬局での算定割合が1.4%という低さは看過できない。また、調剤管理加算の算定状況とポリファーマシー対策への効果についても具体的な検証が必要であり、薬剤師の対人業務が医療にどう貢献しているかを 「見える化」 することが求められている。
そのほか、OTC類似薬の保険給付範囲の見直しや敷地内薬局のグループ減算など、薬局経営に大きな影響を与える議題が取り上げられることも予想されるため、今後も注視が必要である。
先日、ある講演会で保険局医療課の清原薬剤管理官のお話を伺う機会があった。開口一番の 「薬局は非常に厳しい状況にある」 という言葉が印象的だったが、それと同じくらい 「薬局における医療DX推進は高く評価されている」 という言葉も心に残った。医科・歯科より先行して薬局での体制整備がスピード感をもって進められていることが、数値として見える化されているという。ただ、体制整備だけでは不十分である。整えた体制でいかに患者により良い医療を提供できるか、どのようなリスクから患者を守れるか、そこに薬剤師がどのように貢献しているのか──こうした部分を丁寧に見える化することこそ、薬剤師の必要性を確固たるものにするエビデンスとなり得る。
薬局経営にとって調剤報酬改定は頭を悩ませるテーマではあるが、国の進む方向性をいち早く見極め、会社全体としてその方向に歩を進められるかどうかが重要である。医療DX、在宅医療、セルフメディケーション……。多様な課題の中で薬剤師の存在意義を示し、課題解決に努める先にこそ、安定した薬局経営が見えてくるのだろう。

中医協 総会(第616回)資料2 調剤について(その1)より
【2025年11月号 Vol.7 Pharmacy-Management 】
また、苦しい経営の中でも賃上げを実施するために調剤基本料引き上げを求めているが、薬局数が増え続けているという矛盾もあり、その要望を通すことは極めて難しい局面にある。さらに、かかりつけ薬剤師指導料は2016年の導入から約10年が経過するものの、国民への周知が進まず、算定割合は処方全体の約1.8%にとどまる。これは、かかりつけ薬剤師の認定要件(在籍年数や勤務時間等)の影響もあるが、令和6年度時点で65.8%を占める基本料1の薬局での算定割合が1.4%という低さは看過できない。また、調剤管理加算の算定状況とポリファーマシー対策への効果についても具体的な検証が必要であり、薬剤師の対人業務が医療にどう貢献しているかを 「見える化」 することが求められている。
そのほか、OTC類似薬の保険給付範囲の見直しや敷地内薬局のグループ減算など、薬局経営に大きな影響を与える議題が取り上げられることも予想されるため、今後も注視が必要である。
先日、ある講演会で保険局医療課の清原薬剤管理官のお話を伺う機会があった。開口一番の 「薬局は非常に厳しい状況にある」 という言葉が印象的だったが、それと同じくらい 「薬局における医療DX推進は高く評価されている」 という言葉も心に残った。医科・歯科より先行して薬局での体制整備がスピード感をもって進められていることが、数値として見える化されているという。ただ、体制整備だけでは不十分である。整えた体制でいかに患者により良い医療を提供できるか、どのようなリスクから患者を守れるか、そこに薬剤師がどのように貢献しているのか──こうした部分を丁寧に見える化することこそ、薬剤師の必要性を確固たるものにするエビデンスとなり得る。
薬局経営にとって調剤報酬改定は頭を悩ませるテーマではあるが、国の進む方向性をいち早く見極め、会社全体としてその方向に歩を進められるかどうかが重要である。医療DX、在宅医療、セルフメディケーション……。多様な課題の中で薬剤師の存在意義を示し、課題解決に努める先にこそ、安定した薬局経営が見えてくるのだろう。

中医協 総会(第616回)資料2 調剤について(その1)より
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