組織・人材育成
今年の春闘の結果と病院の処遇改善への姿勢
人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社ToDoビズ 代表取締役 篠塚 功
企業の賃金が上がり続ける中、病院の賃金はどのような状況にあるのか気になるところです。そこで、賃上げ率を中心に、今年と10年前の状況を表にしました。企業の数値は日本経済団体連合会の春季労使交渉の妥結結果を載せています。病院の数値は今年は四病院団体協議会が実施した緊急調査の結果を使用し、10年前は全国病院経営管理学会が行った調査結果です。
これを見ると、10年前は、病院の賃上げ率は中小企業よりは高い率でしたが、今年は明らかに低くなっています。一昨年から企業の賃上げ率は大幅に伸びており、病院は中小企業にも追いつかなくなりました。このような状況では、若い人材は企業に採られてしまうのではないかと危惧します。そこで今回は、現在支援している病院のケース等を参考に、病院の処遇改善の必要性について考えます。
これを見ると、10年前は、病院の賃上げ率は中小企業よりは高い率でしたが、今年は明らかに低くなっています。一昨年から企業の賃上げ率は大幅に伸びており、病院は中小企業にも追いつかなくなりました。このような状況では、若い人材は企業に採られてしまうのではないかと危惧します。そこで今回は、現在支援している病院のケース等を参考に、病院の処遇改善の必要性について考えます。
職員の賃金について現状を分析し把握する
2024年度にベースアップ評価料が新設されたこともあり、病院も10年前と比べれば賃上げ率は高くなっていますが、企業との格差は大きくなるばかりで、人材の確保が一層厳しくなることは目に見えています。
したがって、これからの人材確保に向けて、賃金をどのように改善するかは、喫緊の課題と言えましょう。例えば、筆者が支援している病院では、中高年の賃金水準が高いことから、45歳以降の賃金カーブを寝かせて、それを原資に初任給を大きく持ち上げ、若い年代の賃金水準を大幅に上げる検討を進めています。病院は年功的な賃金体系も少なくはないので、年齢の高い人の賃金は高いが初任給は企業と比べて低いという病院では、その配分を見直せば、若い人材の確保も可能となります。また、別の病院では、現状の退職金額を分析したところ、勤続年数の短い職員の退職金額が統計数値よりも高い状況にあったため、これを見直して原資を捻出し、月額賃金を上げる検討を進めています。
病院の人件費比率は、企業と比べて非常に高く、これ以上賃金を上げることは経営的に不可能と諦めている所も多いと思われます。しかし、現状を把握しているかと言えば、そうでもないと思われます。例えば、ある別の病院では、定期的に賃金分析を行っていますが、業界の中では、水準は低くないことが分かっています。最近の賃上げ率は低いとしても、水準自体が高いのであれば問題はありません。このように、人材の確保に向けた処遇の改善は、まずは自院の賃金等の状態を把握するところから始めるべきでしょう。
賃金の状態の把握については、職種別に、所定内賃金、総支給額、年間賃金の3種類でプロットして、統計数値と比べた際に、若年層や看護師の賃金が低いとか、逆に、中高年や事務の賃金が高いといったことが見えてきます。また、所定内賃金は低いけれども、賞与が高いために年間賃金は高いといったこともあるでしょう。さらには、退職金についても、勤続年数ごとに金額をプロットしてみれば、統計数値と比べて、勤続年数の短い職員の退職金の水準が 高い状態にあることなどが見えてくるはずです。まずは賃金全般について現状を調べ把握することで、人件費の無駄な使い方がないかを確認し、無駄な部分は減らし、必要な部分に持っていくといった形で賃金制度を見直すことが、人材の確保と病院の経営において重要なことと考えます。
したがって、これからの人材確保に向けて、賃金をどのように改善するかは、喫緊の課題と言えましょう。例えば、筆者が支援している病院では、中高年の賃金水準が高いことから、45歳以降の賃金カーブを寝かせて、それを原資に初任給を大きく持ち上げ、若い年代の賃金水準を大幅に上げる検討を進めています。病院は年功的な賃金体系も少なくはないので、年齢の高い人の賃金は高いが初任給は企業と比べて低いという病院では、その配分を見直せば、若い人材の確保も可能となります。また、別の病院では、現状の退職金額を分析したところ、勤続年数の短い職員の退職金額が統計数値よりも高い状況にあったため、これを見直して原資を捻出し、月額賃金を上げる検討を進めています。
病院の人件費比率は、企業と比べて非常に高く、これ以上賃金を上げることは経営的に不可能と諦めている所も多いと思われます。しかし、現状を把握しているかと言えば、そうでもないと思われます。例えば、ある別の病院では、定期的に賃金分析を行っていますが、業界の中では、水準は低くないことが分かっています。最近の賃上げ率は低いとしても、水準自体が高いのであれば問題はありません。このように、人材の確保に向けた処遇の改善は、まずは自院の賃金等の状態を把握するところから始めるべきでしょう。
賃金の状態の把握については、職種別に、所定内賃金、総支給額、年間賃金の3種類でプロットして、統計数値と比べた際に、若年層や看護師の賃金が低いとか、逆に、中高年や事務の賃金が高いといったことが見えてきます。また、所定内賃金は低いけれども、賞与が高いために年間賃金は高いといったこともあるでしょう。さらには、退職金についても、勤続年数ごとに金額をプロットしてみれば、統計数値と比べて、勤続年数の短い職員の退職金の水準が 高い状態にあることなどが見えてくるはずです。まずは賃金全般について現状を調べ把握することで、人件費の無駄な使い方がないかを確認し、無駄な部分は減らし、必要な部分に持っていくといった形で賃金制度を見直すことが、人材の確保と病院の経営において重要なことと考えます。
夜勤手当の改善や年度末業績賞与の支給など現場の意見を聴く
別の病院では、夜勤者の確保も重要なことから、来年度、夜勤手当の大幅な見直しを検討しています。年間賃金で見れば、決して賃金水準は低くはないのですが、夜勤手当だけを見れば低いため、看護師が夜勤を敬遠しがちになることが課題として挙げられており、これを改善しようというわけです。先述の分析だけではなく、現場の声を聴き、それに対処することも必要です。この病院では、人事賃金制度委員会を運営しており、各部門の代表が真剣に職員の人事労務について考え、処遇も含め働き甲斐のある職場を作るために協議を続けています。先日も、目標の経常利益を達成したら、年度末に全職員に一律2万円を特別業績賞与として支給してはどうかといった意見なども出ていました。業界の中ですでに高い賃金水準を維持し、高い賃上げ率を確保できない中で、職員に少しでも処遇の面で喜んでもらえる方策を考えているのです。企業との処遇における格差が大きくなる今日、職員の処遇について諦めることなく、真剣に考える組織の姿勢が、職員を引き留めることにつながると信じています。
表:春季労使交渉の結果(企業と病院)

※病院の2025年賃上げ額は、「2024年看護師所定内給与の平均額(厚労省賃金構造基本統計調査)」に四病院団体協議会が行った調査結果の2.5%を掛けた推定値。
【2025年10月15日号 Vol.12 メディカル・マネジメント】
表:春季労使交渉の結果(企業と病院)

※病院の2025年賃上げ額は、「2024年看護師所定内給与の平均額(厚労省賃金構造基本統計調査)」に四病院団体協議会が行った調査結果の2.5%を掛けた推定値。
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