組織・人材育成
「良い組織」 と呼ばれていた組織であっても…
組織力が高まるケーススタディ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
組織づくりを学ぶ経営者の勉強会に参加すると、 「良い組織」 と言われる組織と出会うことが多くあります。それは決して 「利益が大きい」 や 「職員満足度・顧客満足度が高い」 「離職率が低い」 といった表面的な話だけではありません。実際にご訪問すると、 「とても居心地の良い雰囲気」 を感じたり、どのスタッフと触れ合っても 「なぜか元気になる」 と気持ちが前向きになったりするなど、言葉で上手く表せないほど心から感動する素晴らしい体験の連続でした。ただし、良い組織が永続的にその状態を維持することは非常に難しいということも学んだのでした。
今回はそんな 「良い組織」 と呼ばれていたクリニックに変化を感じた患者サイドのお話です。
今回はそんな 「良い組織」 と呼ばれていたクリニックに変化を感じた患者サイドのお話です。
ケース
「良い組織」 として10年ほど前に有名になったクリニックと、そこに通う患者Aさんのお話です。
Aさんはとある企業の代表取締役社長で、組織づくりを学ぶいろいろな勉強会に参加することをライフワークとしており、このクリニックとの出会いもその勉強会でした。
Aさんは、このクリニックの院長先生が勉強会で話した 「スタッフを大切にすることで患者さんを大切にする」 という組織づくりの素晴らしさに、当初は 「本当にそんな組織はあるのか?」 と半信半疑だったそうです。しかし、初診時にこのクリニックのホスピタリティの高さに驚いたと言います。
Aさん 「予約をして行ったのですが、初診にも関わらずクリニックの扉を開けて入ったら受付の方が私の名前を呼んだのです。名乗ってないのですよ?心底驚いたので受付の方に 『なぜ私だと分かったのですか?』 と質問すると、 『常連の患者様の顔と名前は把握しているので、初診の予約の方だとすぐに分かりました』 とほほ笑むのです。私はその瞬間このクリニックのファンになりました」
受付だけではなく、医師をはじめとした医療スタッフの言葉遣いや丁寧な姿勢にも感動したAさんは常連となったのです。
その後、そのクリニックは需要拡大に合わせて施設が拡大したのですが、院長先生のスタッフを大切にする思いは薄れることなく、Aさんがクリニックに通い出してから10年が経ちました。ある日、Aさんが診察に訪れると院長先生から声が掛かりました。
院長先生 「私も良い年になりましたので、後の世代に引き継ぐ決心をしました」
院長先生からの急なご挨拶にとても残念に思いましたが、クリニックから去るのは院長先生のみのため、この良い組織の雰囲気は継続するだろうと思い返し、Aさんは 「悲しいニュースだと思わないようにしよう」 と努めたのでした。
ところが経営者が変わってから、Aさんには 「おや?」 と思う出来事がありました。
いつも行っているメンテナンス(効果は長くないが短時間で終了する施術)を希望していたのに、説明もないまま、クリニック側が 「良かれ」 と思ったメンテナンス(効果は長いが長時間かかる施術)に変更していたのです。
Aさんの職業柄つねに時間に追われているため、そもそも効果は長くなくても短時間で終了する施術を希望していることは伝えていました。これまでも同じ施術を行っており、この理由についても施術の中で 「お忙しいですものね」 とスタッフからも伝えられていたのです。
診察室内でトラブルになっていることを察したマネージャーが飛んできて謝罪があったものの、その後も 「患者よりもクリニックにとって効率的な方法」 を優先していると受け取れてしまう対応がなされる出来事は続いたと言います。
Aさん 「組織も人もナマモノですので常に変化するものであることは知っていました。しかし、本当にリーダーだけで組織がこんなに変わるとは……。自分が体験してようやく理解しました。恐ろしい事実は、スタッフは一生懸命仕事をしていることに変わりはないのです。つまり、自分たちが変化していることに気が付いていない……。私自身の会社も気を付けなければなら ないと学びになりました」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
私が心に留めておく必要があると感じたのは、 「良い組織は永続的に良い組織とは限らない」 ということと、 「組織の中にいると、組織が変化していることに気が付くことが難しい(茹でガエル現象=カエルを冷たい水に入れて徐々に水を温めていくと、緩やかな温度変化に気付かず、やがて沸騰した水の中で死んでしまう現象のこと) 」 ということ、そして何より 「リーダーの存在が組織に与える影響は想像以上に大きい」 ということです。
このケースのようにスタッフは同じでもリーダーの変化で組織が変化したというお話はいくつも耳にします。組織の変化に敏感になりたくても、組織の中で気が付くのは難しいもの。このAさんのようにお客様である患者さんやその家族との関わりから僅かな変化がないかどうか意識を向けると、自分たちの変化にも気が付きやすいかもしれません。そして何より、その組織が変化した理由がリーダーにある可能性が高いならば、リーダー自身が省みることで良い変化に繋がることもゼロではないはずです。このケースが皆さまの組織づくりの参考になれば幸いです。
【2025. 6. 15 Vol.3 メディカル・マネジメント】
Aさんはとある企業の代表取締役社長で、組織づくりを学ぶいろいろな勉強会に参加することをライフワークとしており、このクリニックとの出会いもその勉強会でした。
Aさんは、このクリニックの院長先生が勉強会で話した 「スタッフを大切にすることで患者さんを大切にする」 という組織づくりの素晴らしさに、当初は 「本当にそんな組織はあるのか?」 と半信半疑だったそうです。しかし、初診時にこのクリニックのホスピタリティの高さに驚いたと言います。
Aさん 「予約をして行ったのですが、初診にも関わらずクリニックの扉を開けて入ったら受付の方が私の名前を呼んだのです。名乗ってないのですよ?心底驚いたので受付の方に 『なぜ私だと分かったのですか?』 と質問すると、 『常連の患者様の顔と名前は把握しているので、初診の予約の方だとすぐに分かりました』 とほほ笑むのです。私はその瞬間このクリニックのファンになりました」
受付だけではなく、医師をはじめとした医療スタッフの言葉遣いや丁寧な姿勢にも感動したAさんは常連となったのです。
その後、そのクリニックは需要拡大に合わせて施設が拡大したのですが、院長先生のスタッフを大切にする思いは薄れることなく、Aさんがクリニックに通い出してから10年が経ちました。ある日、Aさんが診察に訪れると院長先生から声が掛かりました。
院長先生 「私も良い年になりましたので、後の世代に引き継ぐ決心をしました」
院長先生からの急なご挨拶にとても残念に思いましたが、クリニックから去るのは院長先生のみのため、この良い組織の雰囲気は継続するだろうと思い返し、Aさんは 「悲しいニュースだと思わないようにしよう」 と努めたのでした。
ところが経営者が変わってから、Aさんには 「おや?」 と思う出来事がありました。
いつも行っているメンテナンス(効果は長くないが短時間で終了する施術)を希望していたのに、説明もないまま、クリニック側が 「良かれ」 と思ったメンテナンス(効果は長いが長時間かかる施術)に変更していたのです。
Aさんの職業柄つねに時間に追われているため、そもそも効果は長くなくても短時間で終了する施術を希望していることは伝えていました。これまでも同じ施術を行っており、この理由についても施術の中で 「お忙しいですものね」 とスタッフからも伝えられていたのです。
診察室内でトラブルになっていることを察したマネージャーが飛んできて謝罪があったものの、その後も 「患者よりもクリニックにとって効率的な方法」 を優先していると受け取れてしまう対応がなされる出来事は続いたと言います。
Aさん 「組織も人もナマモノですので常に変化するものであることは知っていました。しかし、本当にリーダーだけで組織がこんなに変わるとは……。自分が体験してようやく理解しました。恐ろしい事実は、スタッフは一生懸命仕事をしていることに変わりはないのです。つまり、自分たちが変化していることに気が付いていない……。私自身の会社も気を付けなければなら ないと学びになりました」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
私が心に留めておく必要があると感じたのは、 「良い組織は永続的に良い組織とは限らない」 ということと、 「組織の中にいると、組織が変化していることに気が付くことが難しい(茹でガエル現象=カエルを冷たい水に入れて徐々に水を温めていくと、緩やかな温度変化に気付かず、やがて沸騰した水の中で死んでしまう現象のこと) 」 ということ、そして何より 「リーダーの存在が組織に与える影響は想像以上に大きい」 ということです。
このケースのようにスタッフは同じでもリーダーの変化で組織が変化したというお話はいくつも耳にします。組織の変化に敏感になりたくても、組織の中で気が付くのは難しいもの。このAさんのようにお客様である患者さんやその家族との関わりから僅かな変化がないかどうか意識を向けると、自分たちの変化にも気が付きやすいかもしれません。そして何より、その組織が変化した理由がリーダーにある可能性が高いならば、リーダー自身が省みることで良い変化に繋がることもゼロではないはずです。このケースが皆さまの組織づくりの参考になれば幸いです。
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