介護

通所リハビリの月単位報酬制度と開設要件緩和は注目

通所リハの介護報酬改定の議論が開始
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之

▼通所リハの介護報酬改定の議論が開始

7月10日の介護給付費分科会にて通所リハビリに関する介護報酬改定に向けた議論が実施されました。通所リハビリに関しては、過去、通所介護と同じような機能であり、通所介護との違いが不明確な部分が多くありました。しかし、2018年度介護報酬改定にて、「活動と参加のリハビリ」が大きく打ち出され、リハビリマネジメント加算の再編やリハビリ職の配置を評価したリハビリ提供体制加算が新設され、一気にリハビリ機能の強化が行われました。また、この改定では、4時間以上のサービス提供時間の基本サービス費が約10%も下げられたため、通所リハビリの短時間化が推進されました。

その後、改定の度に加算部分のマイナーチェンジを繰り返し、前回の2021年度介護報酬改定では、新型コロナウイルス感染症の対応として、基本サービス費の増加が行われた一方、LIFEが導入されたことに伴い、再度、リハマネ加算の再編が行われました。特に前回の2021年度改定は「自立支援・重度化予防」が打ち出され、そのためには「リハビリ・口腔・栄養マネジメント」が一体的に取り組まれるべきだと強調されました。そして、リハビリに関する加算だけではなく、口腔・栄養マネジメントに関する加算に多くの改定項目が設定され、リハビリ・口腔・栄養マネジメントを一体化した計画書も新たに提示されました。しかし、7月10日の介護給付費分科会の資料によれば、この一体化した計画書を実際に使用している通所リハビリは「27.2%」しかなく、導入は低調な状態にあるようです。

▼加算算定率は低い

筆者は、2018年の改定以降、1日型のサービス提供時間を短縮し、短時間通所リハビリへのリニューアルや診療所における「みなし指定」での通所リハビリの新設などの支援を行ってきました。その過程のなかで、通所リハビリの加算算定の難しさをものすごく感じています。リハマネ加算、移行支援加算、生活行為向上マネジメント加算、入浴介助加算Ⅱなど利用者の活動と参加を促すための加算はたくさんありますが、実際は「手間の割には、収入に結びつかない」ため、その理念や方向性は理解しつつも、これらの加算算定には積極的に取り組むのを躊躇していました。令和2年7月20日の介護給付費分科会の資料では、これらの加算の算定率は10%にも満たないものも多くあり、全国的に通所リハビリは、これらの加算が算定できない状況があるようです。

▼月単位報酬体系が再び議論

そこで、前回の改定で提案され、2024年度改定でも議論されることとなったのが、「月単位報酬体系」です。今までの通所リハビリの評価は、「サービス提供時間」と「利用者数」+「加算」であったのを、ストラクチャー・プロセス・アウトカムをポイント制にして、「強化型」「加算型」「通常型」に区別して評価するというものです。これから具体的にどのような項目がポイントになるか議論されるところですが、すでに図のような項目が議論の対象になっており、今まで加算算定に躊躇していた、リハマネ加算や移行支援加算などの算定率がポイントにカウントされるようになれば、今後は、これらの加算算定に取り組まざる得なくなるでしょう。

総合評価に向けた考え方として検討がされた項目
  1. リハ専門職の充実した配置(特にSTの配置)
  2. 歯科衛生士、管理栄養士の積極的な参画
  3. リハビリテーションマネジメントの充実
  4. 中重等度者等の受け入れ体制(重度療養管理加算、中重度者ケア体制加算)
  5. 大規模事業所の役割としての地域づくりの拠点機能
  6. 目標達成による修了後の定期評価の継続
  7. 医療機関等との連携強化 等
    第219回社会保障審議会介護給付費分科会資料 令和5 年7月10日(月)

▼医師、開設場所の要件緩和

また、通所リハビリの運営は、常勤医師の配置と開設場所の要件が厳しく、ここ数年、通所リハビリの事業所数が増加していないことから、要件緩和を求める声が挙がっています。筆者の支援先でも、何とかスペースを確保して、既存のリハビリ室内にみなし指定で「定員5名」の通所リハビリの開設支援を何件かしましたが、満員になっても、スペースの問題で定員を増加することができず、新規利用者をお断りするケースが多々あります。もし、開設場所の要件が緩和され、通所介護のように近隣の空き店舗や貸事務所で通所リハビリが開設できれば、今後、高齢者が増加する地域では、通所リハビリが増加していくと思います。
月単位報酬体系の導入や開設要件の緩和が実際に行われた場合、通所リハビリの運営方法や経営戦略は大きく変わってくると思います。今後も議論は進んでいくため、注目していきたいと思います。


【2023. 8. 15 Vol.574 医業情報ダイジェスト】