組織・人材育成
自分本位の面談に要注意
組織力が高まるケーススタディ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
年度の後半戦を迎えるに当たり、中間評価のための面談を終えた管理職の皆さまは多いでしょう。職員の皆さまの努力や悩みに改めて気が付き、組織がより良くなるために前向きな面談ができた方もおられる一方、 「こうなってほしい」 と思う課題を抱えた職員との面談で 「また伝わらなかった……」 と嘆く声も聞こえてきます。
今回は、課題を抱える職員を正しく導きたいと思うが職員が変わらない……と嘆くリーダーとの対話から、効果的な 「組織を良くするための面談」 について学んでいきたいと思います。
今回は、課題を抱える職員を正しく導きたいと思うが職員が変わらない……と嘆くリーダーとの対話から、効果的な 「組織を良くするための面談」 について学んでいきたいと思います。
ケース
酷暑の終わりが見えない地域にあるクリニックの院長先生は、とある看護師のことで悩んでいました。この看護師Aさんは長く勤務しており仕事の能力は高いものの、たびたび他のスタッフとトラブルを起こしています。先日も新入職員がAさんの物言いに深く傷ついてしまったとのことで、涙を流して院長先生のもとに退職の意を示したのでした。
簡単に状況を説明すると、とある患者に対する次の予約日時を新人さんが判断して入れたものの、その選択が誤りだったようで、その患者が帰った後に気が付いたAさんが新人さんに対して激しく叱責した、というものです。
院長先生 「Aさん自身は度々他の職員とトラブルを起こしていることを自覚はしていますが、自分自身には非はないと信じているのか、私と何度面談しても変わってくれないのです」
筆者 「それは困りましたね。大変な状況ながらも、院長先生がAさんの良いところは認めているからこそ 『変わってもらいたい』 と面談される姿勢は素晴らしいと思います。ところで、Aさんの面談では院長先生からどのようなお話をされたのですか?」
院長先生 「私からは最初にAさんに対して 『いつも頑張ってくれてありがとう』 と、仕事に対する労いの言葉を掛けました。その後に 『先日の新人さんとの一件についてだけど……もう少し言い方があるのではないか?新人さん怖がってしまっていたよ』 と伝えました」
筆者 「まず労い、そして事象について院長先生が感じた問題について問いかけたのですね。その後のAさんの反応はいかがでしたか?」
院長先生 「それが……なぜAさんが新人さんに指摘をしたのか、という説明を始めたのです。確かに、新人さんの判断は間違っていた のでAさんの言っている内容は理解できました。ただ、私は正直 『一生懸命に言い訳をしている』 と受け止めました。もう何言ってもダメなのかな……」
筆者 「客観的にお話を伺っていて、院長先生が指導したい内容とAさんが指導されたと思っている内容がすれ違っていると感じまし た。院長先生は新人さんに対して恐怖を感じさせるような言動に問題があったとAさんに伝えたかったのだと思います。反面、Aさんは新人さんに叱責するに至った経緯に問題があって指導されたと受け取っているのだと思います。お互いの認識が異なるのですから、 当然、Aさんが院長先生が思うように変化することは考えにくいのではないでしょうか」
院長先生 「驚きました……認識が違っているなど全く考えもしませんでした。どこかで 『私が言った内容を正しく理解するのは受け手の役割である』 と考えていたからかもしれません。そう言えば、 『何が問題だと思っているのか』 ということについて、どの面談でもAさんと認識を合わせることをしてきませんでした。言えば分かるのではなく、自分と相手は違う人間であることを前提として、お互いに理解し合う努力をしなければ前進しませんね」
しばらく考えた院長先生は再びAさんとの面談を設定したのでした。Aさんとのすれ違いが全て解消したわけではないようですが、後日クリニックを訪問すると、クリニックの雰囲気が1歩ずつ前進している様子が伺えたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?このような 「指導する側とされる側で、何が課題になっているのかすれ違っている」 ケースは想像以上に多いようです。 「指導される側が空気を読んで、何を指導されているのか本質を理解すべきだ!」 という意見もあるかもしれませんが、多様な価値観が重要視される世の中において、1つの事象について色々な見方がされることは通常のことだと考えます。
誰もが自分が想像する以上に自分本位で物事を理解しているもの。そして、基本的に仕事において誰もが自分が行っていることは正しいと思って行動しているからこそ、すれ違いが起こり、それがトラブルに繋がってしまうことがあります。従って、 「何が問題なのか」 という点をお互いに共有しないまま、ダメであることを指摘してしまうことは、トラブルが解消されないだけではなく、人間関係にも悪い影響を与えかねません。
「嵐の起こらない良い組織はない」 という組織論の言葉があります。何かが起こったとしてもお互いに 「何が問題なのか」 という点を共有し合うことを大切にしていきませんか?
【2025年9月15日号 Vol.10 メディカル・マネジメント】
簡単に状況を説明すると、とある患者に対する次の予約日時を新人さんが判断して入れたものの、その選択が誤りだったようで、その患者が帰った後に気が付いたAさんが新人さんに対して激しく叱責した、というものです。
院長先生 「Aさん自身は度々他の職員とトラブルを起こしていることを自覚はしていますが、自分自身には非はないと信じているのか、私と何度面談しても変わってくれないのです」
筆者 「それは困りましたね。大変な状況ながらも、院長先生がAさんの良いところは認めているからこそ 『変わってもらいたい』 と面談される姿勢は素晴らしいと思います。ところで、Aさんの面談では院長先生からどのようなお話をされたのですか?」
院長先生 「私からは最初にAさんに対して 『いつも頑張ってくれてありがとう』 と、仕事に対する労いの言葉を掛けました。その後に 『先日の新人さんとの一件についてだけど……もう少し言い方があるのではないか?新人さん怖がってしまっていたよ』 と伝えました」
筆者 「まず労い、そして事象について院長先生が感じた問題について問いかけたのですね。その後のAさんの反応はいかがでしたか?」
院長先生 「それが……なぜAさんが新人さんに指摘をしたのか、という説明を始めたのです。確かに、新人さんの判断は間違っていた のでAさんの言っている内容は理解できました。ただ、私は正直 『一生懸命に言い訳をしている』 と受け止めました。もう何言ってもダメなのかな……」
筆者 「客観的にお話を伺っていて、院長先生が指導したい内容とAさんが指導されたと思っている内容がすれ違っていると感じまし た。院長先生は新人さんに対して恐怖を感じさせるような言動に問題があったとAさんに伝えたかったのだと思います。反面、Aさんは新人さんに叱責するに至った経緯に問題があって指導されたと受け取っているのだと思います。お互いの認識が異なるのですから、 当然、Aさんが院長先生が思うように変化することは考えにくいのではないでしょうか」
院長先生 「驚きました……認識が違っているなど全く考えもしませんでした。どこかで 『私が言った内容を正しく理解するのは受け手の役割である』 と考えていたからかもしれません。そう言えば、 『何が問題だと思っているのか』 ということについて、どの面談でもAさんと認識を合わせることをしてきませんでした。言えば分かるのではなく、自分と相手は違う人間であることを前提として、お互いに理解し合う努力をしなければ前進しませんね」
しばらく考えた院長先生は再びAさんとの面談を設定したのでした。Aさんとのすれ違いが全て解消したわけではないようですが、後日クリニックを訪問すると、クリニックの雰囲気が1歩ずつ前進している様子が伺えたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?このような 「指導する側とされる側で、何が課題になっているのかすれ違っている」 ケースは想像以上に多いようです。 「指導される側が空気を読んで、何を指導されているのか本質を理解すべきだ!」 という意見もあるかもしれませんが、多様な価値観が重要視される世の中において、1つの事象について色々な見方がされることは通常のことだと考えます。
誰もが自分が想像する以上に自分本位で物事を理解しているもの。そして、基本的に仕事において誰もが自分が行っていることは正しいと思って行動しているからこそ、すれ違いが起こり、それがトラブルに繋がってしまうことがあります。従って、 「何が問題なのか」 という点をお互いに共有しないまま、ダメであることを指摘してしまうことは、トラブルが解消されないだけではなく、人間関係にも悪い影響を与えかねません。
「嵐の起こらない良い組織はない」 という組織論の言葉があります。何かが起こったとしてもお互いに 「何が問題なのか」 という点を共有し合うことを大切にしていきませんか?
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