介護施設

ついに通所介護も減少で通所3施設が総崩れ

意外と知らない介護経営のポイント
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之
7月30日に厚労省より発表された 「介護給付費等実態統計」 にて、衝撃的な事実が発表されました。通所3施設(地域密着型通所介護、通所介護、通所リハビリ)ともに請求事業所数が減少に転じたのです(表)。
今までも地域密着型通所介護と通所リハビリは減少傾向にありましたが、ついに通常規模型以上の通所介護も減少となり、通所施設が総崩れの様相を呈してきました。高齢者や要介護者は増加しているにもかかわらず、なぜ、このように通所施設が減少してきたのか、考察したいと思います。


表:介護給付費等実態統計 令和7年4月審査分

▼通所施設減少の要因

①物価・人件費の高騰
通所施設の収入構造は 「報酬単価×定員数」 で上限が決まっています。よって、物価や人件費が上がったからと言って、一般企業のように価格を上げたり、定員以上の利用者を受け入れたりすることはできません。もし定員以上の利用者を受け入れてしまうと3割減算という厳しいペナルティが課されます。
人件費に関しては、2024年度介護報酬改定における介護職員処遇改善加算の再編で、若干上がりましたが、それでも全産業の平均賃金よりもかなり差が開いています。令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果では、令和5年度と比較して賃金は上昇したものの、賞与込みの給与は、全産業平均の 「38.6万円」 に対して 「30.3万円」 とまだ8万円以上の差があります。
また、筆者の経営する通所介護でも、人件費以外にも送迎車の車両費、燃料費や光熱水費などの費用も数年前と比較すると1.5倍~2倍に増加しています。これらは、時々、補助金が出ていますが、とてもそれでは賄いきれないくらいの価格高騰であり、すべて施設側の 「手出し」 になっています。

②ゼロゼロ融資の返済が開始
新型コロナウイルス感染症がまん延し、通所施設では 「休業」 を余儀なくされた施設も多くありました。これらの収益のマイナス面を、新型コロナウイルスの特例にて 「金利ゼロ、保証料ゼロ」 のいわゆる 「ゼロゼロ融資」 で乗り切ったところも多くあったと思います。しかし、この借入金の返済が昨年度から開始されました。
返済の原資のほとんどは、当然、介護報酬になりますが、売上上限が決まっている通所施設においては、コロナ前よりも収益が上がっていないと返済の原資が担保されずに返済ができないという状態になります。

▼通所不足のA町の現状

このまま介護報酬が今のように 「緊縮政策」 を継続すれば、地域によっては、通所施設が不足する事態になるのではないでしょうか。筆者のコンサルティング先のA町では、通所施設がもともと少なく、さらに、昨今の介護報酬の緊縮政策によって、新規参入の施設もなく、通所施設が不足しています。A町の第9期介護保険事業計画には、 「最後まで自分の家で過ごしたい」 という方が9割以 上もいますが、一方で、通所施設が不足していることで、在宅で生活できるようなレベルの方も入所施設に入所しています。残念ながら、A町の住民は、 「最後まで自分の家で過ごしたい」 という思いはかなえられていません。また、通所レベルの利用者を入所させているわけですからA町の介護保険利用者の介護給付費は、全国平均の1.5倍になって、A町の財政を圧迫しています。誰にとっても良 くない状況なのです。これを解決するためには、通所の介護報酬の大幅な上昇を行い、地域の通所のサービス量の担保を行う必要があります。

▼とにかく集客の仕組みを作ること

一方、事業所側も努力が必要です。なぜ、通所施設が減少しているのかというと、 「稼働率が低い」 からです。ご存じの通り、通所では、稼働率と収益は 「完全に相関」 しています。よって、稼働率を上げる努力が必要です。
しかし、多くの通所は 「ケアマネジャーからの紹介待ち」 です。すでに、中山間部や一部の地域では、通所施設に対する需要と供給が逆転し、 「供給過多」 になっています。そうなると、その地域の通所施設の稼働率が画一的に減少していくのではなく、利用者が増加する通所と減少する通所の 「二極化」 が起こります。
増加する通所は、間違いなく、 「集客の仕組み」 を持っており、毎月、安定的に新規の利用者が紹介されています。一方、 「待ちの通所」 は、1か月に1人か2人の紹介しかなく、既存利用者の終結数のほうが上回ってしまい、結果、稼働率が減少しています。筆者は、これからの通所運営でもっとも重要なのは 「集客の仕組みが作れるかどうか」 だと思っています。


【2025年9月15日号 Vol.10 メディカル・マネジメント】