保険薬局
地域に根ざし、暮らしを支える在支診薬剤師の多面的な取り組み
在宅医療の羅針盤
在宅療養支援診療所薬剤師連絡会 理事 在支診薬剤師 深堀 泰弘
地域包括ケアの実現に向けた地域薬剤師の新たな役割
地域包括ケアの重要性が広く認識されるようになった昨今、薬剤師の役割も大きく変容しつつあります。従来の 「調剤」 や 「薬学的管理」 といった枠を超え、医療と生活を橋渡しする存在として、地域の暮らしに寄与する包括的な支援が求められるようになっています。
とりわけ、在宅療養支援診療所のような地域密着型の医療機関においては、薬剤師が多職種と連携しながら、患者一人ひとりの生活文脈に即した支援を行う機会が増えています。我々が実践していることは、あくまでその一端にすぎませんが、こうした取り組みの積み重ねが、地域社会の健やかな持続性に貢献していると感じています。
とりわけ、在宅療養支援診療所のような地域密着型の医療機関においては、薬剤師が多職種と連携しながら、患者一人ひとりの生活文脈に即した支援を行う機会が増えています。我々が実践していることは、あくまでその一端にすぎませんが、こうした取り組みの積み重ねが、地域社会の健やかな持続性に貢献していると感じています。
個別性に立脚したプライマリ・ケアの支援
プライマリ・ケアの現場では、薬剤師には高度な専門知識に加え、患者の語りや背景に深く共鳴できる感受性が求められます。薬剤の適正使用だけではなく、治療の意味づけや選択が、その人の価値観・人生観とどう結びつくのか――その問いを共有する姿勢が、いま強く求められています。
たとえば我々の現場では、以下のような視点を重視しています。
たとえば我々の現場では、以下のような視点を重視しています。
- 患者の経験を探る:病気をどう受け止めているか、その語りに耳を傾け、内的経験を理解しようとする。
- 全人的に理解する:病状だけでなく、生活史や家庭環境、地域とのつながりを含めた多面的な理解を図る。
- 共通の理解基盤を見出す:十分な情報提供と対話を通じて、患者・家族・医療者がともに治療方針を考える関係を築く。
- 信頼に基づく関係を強化する:患者を 「支援される存在」 としてではなく、 「意思決定の主体」 として尊重し、関わりを深めていく。
こうした実践は、個別化医療の深化にとどまらず、地域における自己決定と相互扶助の文化を育む基盤ともなり得ます。薬剤師の専門性が、医療の枠を超えて、暮らし全体と結びついていく可能性を感じています。
医療とつながる、地域参加のプラットフォーム
医療の現場が地域社会の内部に根を張る中で、薬剤師が果たす役割も拡張しています。たとえば、地域の医療・福祉・保健の専門職と協働しながら、住民主体のオンライン勉強会や文化イベントを開催するといった取り組みも見られます。これらは、単なる啓発や交流を目的とするのではなく、 「健康とは何か」 「支えるとはどういうことか」 といった根本的な問いを共有し、再構築していく試みでもあります。
とりわけ、文化活動や創作の発表機会を提供する場は、次のような多面的な効果を生み出しています。
とりわけ、文化活動や創作の発表機会を提供する場は、次のような多面的な効果を生み出しています。
- 自己表現と承認の機会の創出
- 外出・交流による身体的・精神的活性化
- 「社会的処方」 による孤立の予防とつながりの再構築
- 支援者間の学び合いと専門職としてのモチベーションの維持・向上
医療やケアの中で語られにくい 「個人の想いや創造性」 に光を当てるこれらの実践は、ヘルスプロモーションや健康生成の視点からも、再評価されるべきアプローチです。薬剤師がこうした場に関与することは、地域の健康を 「医療外」 から支える方法のひとつであると考えています。
地域と医療をつなぐハブとしてのコミュニティスペース
「誰かに相談できる場がある」 という安心感が、人の健康や生活の質に大きな影響を与えることは、数多くの研究や実践が示してきました。そうした意味で、地域に開かれたコミュニティスペースの存在は、単なる 「居場所」 以上の意味を持ちます。
薬剤師が運営や企画に関与するコミュニティスペースでは、健康相談や情報提供はもちろん、体操などの身体活動、カフェ機能を通じた交流の機会が設けられています。そこでは、医療や福祉の利用者だけでなく、地域住民全体が気軽に足を運び、語らい、支え合うことができます。
これは、医療と地域生活のあいだにある 「見えない境界線」 を和らげる試みであり、まさにBPS(生物・心理・社会)モデルに基づいた支援の具現化です。薬剤師が地域の 「つながり」 を媒介する存在として機能することで、その専門性はより広い社会的価値を持ち始めます。
薬剤師が運営や企画に関与するコミュニティスペースでは、健康相談や情報提供はもちろん、体操などの身体活動、カフェ機能を通じた交流の機会が設けられています。そこでは、医療や福祉の利用者だけでなく、地域住民全体が気軽に足を運び、語らい、支え合うことができます。
これは、医療と地域生活のあいだにある 「見えない境界線」 を和らげる試みであり、まさにBPS(生物・心理・社会)モデルに基づいた支援の具現化です。薬剤師が地域の 「つながり」 を媒介する存在として機能することで、その専門性はより広い社会的価値を持ち始めます。
おわりに ― 「生き方を支える」 薬剤師であるために
あるとき、訪問先の患者さんが 「最期は家で死にたいんだ」 と話されたことがありました。その言葉を聞いたとき、私は 「どこで死ぬか」 ではなく、 「どのように生き切るか」 という問いとして受けとめました。
薬剤師として、薬を届けることだけでは足りないと感じる場面が、日々あります。生活の中に踏み込み、言葉にならない思いを汲み取り、ときに一緒に迷いながら進んでいく――。その積み重ねこそが、薬剤師の新しい役割を形づくっているのだと思います。
地域に根ざし、人に寄り添い、暮らしを支える。その姿勢を大切にしながら、これからも 「生き方を支える医療」 に関わり続けていきたいと、私は思っています。
【2025年9月号 Vol.5 Pharmacy-Management 】
薬剤師として、薬を届けることだけでは足りないと感じる場面が、日々あります。生活の中に踏み込み、言葉にならない思いを汲み取り、ときに一緒に迷いながら進んでいく――。その積み重ねこそが、薬剤師の新しい役割を形づくっているのだと思います。
地域に根ざし、人に寄り添い、暮らしを支える。その姿勢を大切にしながら、これからも 「生き方を支える医療」 に関わり続けていきたいと、私は思っています。
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「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を追加しました
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2026-01-26【セミナーのご案内】2026年度診療報酬改定を踏まえたリハビリ機能強化による病院の経営戦略
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【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催 これからの薬局経営の方向性と戦略
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