保険薬局
育成と成長の仕組みづくり
薬局経営に求められる組織開発
株式会社pharmake 代表取締役社長 田口 恵実
組織の中で 「人が育つ」 ことは、偶然の結果ではありません。もちろん、出会いや経験、上司との相性など、偶発的な要素が育成に影響を与えることもあります。しかし、組織が持続的に成長していくためには、個人任せではなく、 「人が育つことを前提とした仕組み」 が必要です。
今回は、 「育成と成長の仕組みづくり」 をテーマに、組織の中で人が育ち続けるための環境や構造について考えていきます。
今回は、 「育成と成長の仕組みづくり」 をテーマに、組織の中で人が育ち続けるための環境や構造について考えていきます。
育成を 「仕組み」 で支えるという視点
現場でよく耳にするのは、 「育てたいけど時間がない」 「結局、教える人次第」 といった声です。確かに、指導や教育は人と人との関係の中でしか起こりえません。ただ、それを 「個人の能力」 や 「熱意」 に頼り切ることはリスクでもあるのです。
人が育つ組織には、必ず共通する要素があります。それは、育成を支える 「意図」 と 「設計」 があるということです。つまり、 「育つための経験をどのように提供するか」 「それをどう支えるか」 「どのように振り返るか」 といった視点が、組織として整っているのです。
育成を 「制度」 や 「マニュアル」 で整備するというよりも、 「育ちやすい構造」 として組み込むこと。これが、仕組みづくりの本質です。
人が育つ組織には、必ず共通する要素があります。それは、育成を支える 「意図」 と 「設計」 があるということです。つまり、 「育つための経験をどのように提供するか」 「それをどう支えるか」 「どのように振り返るか」 といった視点が、組織として整っているのです。
育成を 「制度」 や 「マニュアル」 で整備するというよりも、 「育ちやすい構造」 として組み込むこと。これが、仕組みづくりの本質です。
成長を支える3つの仕掛け
育成と成長の仕組みづくりを考える際、私がよくおすすめさせていただくポイントは、以下の3つです。いずれも、経験学習サイクル(経験→内省→概念化→試行)を意識した設計になっています。
このサイクルは、ただ経験させるだけでなく、それを言語化・再解釈し、次の行動につなげていく循環です。組織がこの循環を支援することで、学びは個人の中で深まり、行動の質へとつながっていきます。
1.経験を設計する
人は経験から学びます。ですが、経験をただ 「積む」 のではなく、 「学びのある経験」 にするには設計が必要です。
このサイクルは、ただ経験させるだけでなく、それを言語化・再解釈し、次の行動につなげていく循環です。組織がこの循環を支援することで、学びは個人の中で深まり、行動の質へとつながっていきます。
1.経験を設計する
人は経験から学びます。ですが、経験をただ 「積む」 のではなく、 「学びのある経験」 にするには設計が必要です。
- 例えば、新人にただ任せるのではなく、適度にストレッチがかかる仕事を与える。
- ベテランに任せきりにするのではなく、あえて後輩とペアにして振り返りの時間を設ける。
こうした経験の設計は、経験学習サイクルの 「経験(Concrete Experience)」 を意図的に創り出すことにあたります。 「誰に・どんな役割を・どのタイミングで」 与えるかを考えることで、経験が育成資源になります。
2.振り返りの習慣を組み込む
経験があっても、振り返りがなければ学びは定着しません。
- 1日の終わりに 「今日気づいたことは?」 「自分な ら次どうするか?」 を言葉にする時間をつくる。
- 定例のチームミーティングで 「うまくいったこと・工夫したこと」 を共有する場をつくる。
こうした 「内省(Reflective Observation)」 の機会を日常に組み込むことで、経験が内省につながり、やがて自分の行動パターンや価値観の見直し(概念化)につながっていきます。
3.周囲が “育ち” に関心を持つ
どんなに仕組みを整えても、 「人の成長を見守る目」 がなければうまく機能しません。 「最近どう?」 と声をかける。変化や工夫を見つけて、フィードバックを伝える。
それだけでも、育っている人にとっては大きな推進力になります。 「概念化(Abstract Conceptualization)」 や 「試行(Active Experimentation)」 は一人では行いにくい場面も多く、周囲のフィードバックや関心が次の挑戦を後押しする材料になります。育つのは一人でも、育てるのは組織全体で行う。そう考えると、誰かが関心を向けてくれるという関係性そのものが、育成の仕組みの一部になります。
3.周囲が “育ち” に関心を持つ
どんなに仕組みを整えても、 「人の成長を見守る目」 がなければうまく機能しません。 「最近どう?」 と声をかける。変化や工夫を見つけて、フィードバックを伝える。
それだけでも、育っている人にとっては大きな推進力になります。 「概念化(Abstract Conceptualization)」 や 「試行(Active Experimentation)」 は一人では行いにくい場面も多く、周囲のフィードバックや関心が次の挑戦を後押しする材料になります。育つのは一人でも、育てるのは組織全体で行う。そう考えると、誰かが関心を向けてくれるという関係性そのものが、育成の仕組みの一部になります。
「育成の仕組み」 が文化になるとき
仕組みは、一度つくっただけでは機能しません。継続的に実践され、それが 「この組織では当たり前」 という文化になることではじめて、効果を発揮します。
ここでも鍵になるのは、対話です。 「なぜこの仕組みを取り入れているのか?」 「どんなふうに育ってほしいのか?」 「そのために何を大切にしているのか?」 ――。
こうした問いを、現場の中で繰り返し共有し続けることが、育成の仕組みを文化として根づかせる一歩になります。対話によって意味づけされる仕組みこそが、組織にとっての本質的な学習資源になるのです。
ここでも鍵になるのは、対話です。 「なぜこの仕組みを取り入れているのか?」 「どんなふうに育ってほしいのか?」 「そのために何を大切にしているのか?」 ――。
こうした問いを、現場の中で繰り返し共有し続けることが、育成の仕組みを文化として根づかせる一歩になります。対話によって意味づけされる仕組みこそが、組織にとっての本質的な学習資源になるのです。
まとめ:人は仕組みの中で育ち、仕組みは人の中で育つ
育成と成長は、 「誰かの頑張り」 だけに頼らず、組織としてどう支えていくかにかかっています。
- 経験を設計すること
- 振り返りの機会をつくること
- 育ちに関心を寄せる関係性をつくること
この3つの仕掛けが、組織全体に浸透していくことで、育成は 「仕組み」 として機能しはじめます。そしてその仕組みが、対話と問いを通して組織に根づいていけば、育つ人を育てる、次の世代がまた人を育てていくという循環が生まれていきます。
次回は、 「組織文化と価値観のすり合わせ」 につい て、掘り下げていけたらと思います。
【2025年9月号 Vol.5 Pharmacy-Management 】
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