保険薬局

令和8年度調剤報酬改定にむけて

ファーマ・トピックス・マンスリー
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方 孝行
令和8年度に実施予定である診療報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会(以下、中医協)による議論がスタートしている。現時点では、外来や入院診療の状況把握と整理や高額医薬品(認知症薬)に関する議論がされている。まだ本格的な議論は展開されていないが、次回改定に向けて様々な整理がなされていくと思われる。
薬局業界に目を向けると、前回の令和6年度改定において非常に多岐に渡る改定がなされたため、次回改定でどのような部分が焦点となり議論されていくのか、中医協での議論を注視する必要があるだろう。さらに言えば、令和6年度改定の際に中医協で議論された敷地内薬局の有無によるグループ全体の減算処置については、今回も議論の俎上にあがることが想定されるため、どのような議論が進められるかは注目度の高いトピックスである。

そうしたなか、厚労省保険局医療課で注視されているのが、“後発医薬品調剤体制加算”と“一般用医薬品の取り扱い” についてだろう。ご存じの通り、選定療養制度が導入されたことにより後発医薬品調剤を行うことでの医療費削減効果と調剤報酬のバランスが取れなくなっており、後発医薬品の使用量による加算をどのように整理するかは非常に難しい問題と言える。ただ後発医薬品の供給が不安定ななか、薬局では取り揃え可能な後発医薬品の管理に大きな労力を割いており、そうした地域医療への貢献は軽視されるべきではないだろう。万が一、後発医薬品調剤体制加算が減算もしくは廃止となるのであれば、前回改定がそうで あったように、その分、どこかの加算を増点、もしくは新たな加算の創設で調整されなければ、薬局経営に大きな影響を与えることは明白である。

次に一般用医薬品の取り扱いについてだが、令和6年度改定から地域の健康支援を行う薬局であるなら、地域の医薬品等の供給拠点としての役割を担うべしという考え方のもと、地域支援体制加算を算定する薬局において、48薬効群の一般用医薬品の取り扱いが施設要件に追加された。このため、地域支援体制加算を算定する薬局においては、48薬効群の一般用医薬品の取り扱いを行っているが、果たしてこの要件が薬局の行動変容を引き起こしているのかは疑問符がつくところだろう。保険局医療課としても、この要件の整理を行う必要があるという認識であり、薬局が地域住民の方々にとって、真の医薬品等の供給拠点となるための要件設定にしなければならないと考えているようだ。もちろん薬局も一般用医薬品の販売を行うことで収益を確保できるのであれば、積極的に一般用医薬品の取り扱いを強化するだろう。その延長線上で地域の健康相談所として薬局が機能し、薬局が地域住民の方々にとってのファーストアクセスの場となることができれば、それは地域医療を支える薬局の理想的な姿になり得る。

だが、現実はそう甘くはない。2023年12月18日~2024年1月31日の期間におよそ5,400薬局の管理薬剤師を対象として実施したアンケート調査において、48薬効群のカテゴリーごとでの販売実績の有無、収益性のメリットについて結果が出ている。同調査で健康サポート薬局の届け出を行っている988薬局の回答では、実にその半数において、9つの薬効群で販売実績がないという実態が明らかとなった(下図参照)。特に、禁煙補助剤や動脈硬化用薬といった薬効群では65%以上の健康サポート薬局で販売実績がなかった。一方、解熱鎮痛薬や風邪薬、整腸薬、一般用点眼薬・人工涙液・洗眼薬などの販売実績は高く、薬局でニーズがあることが示されている。ここからみえてくることは、やはり薬局でも必要とされる薬効群はあり、必要に応じて薬剤師がサポートしながら、患者自身によるセルフメディケーション能力を育成することが、薬剤師に求められている一つの職能であるということだ。
厚労省としては一般用医薬品の実績要件を課したいという思いがあるようだが、そう簡単な問題ではない。販売金額や割合を要件にすれば、その薬局の立地や環境、患者層に大きく影響を受けるだろうし、ましてや販売金額が統一ではないものに対して、どこまで公平性をもって評価するかは大きな課題になると考えられる。ただ、OTC類似薬の保険外しというトピックスも出ている昨今の状況を踏まえると、一般用医薬品販売にも注力する薬局という土台を今から作り上げておくことは、自社の薬局を守ることにつながることは間違いないだろう。


※一般社団法人日本保険薬局協会管理薬剤師アンケート報告書(その2)より一部抜粋


【2025年9月号 Vol.5 Pharmacy-Management 】