病院・診療所

「地域包括診療加算」運用の留意点

請求業務のポイント解説
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
2024年診療報酬改定では、かかりつけ医による早期からの適切な意思決定支援や介護との連携を推進するために、地域包括診療加算、地域包括診療料において施設基準の要件が追加されました。
地域包括診療加算は、地域包括診療料と比較して届出医療機関数や算定回数が多く、近年はさらに増加する傾向にあります。
本稿では、 「地域包括診療加算」 について、その運用の留意点をお伝えいたします。
A001 再診料                75点
[届出要]注12 地域包括診療加算1 +28点
        地域包括診療加算2 +21点

【対象患者】
次の6疾病(疑いを除く)のうち2つ以上を有する患者
脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る)、認知症

●Point:運用手順

  1. 患者を診療する担当医を決める。
  2. 患者又は家族からの求めに応じ、文書を交付、説明する。
  3. 患者の同意を得る。
  4. 担当医が指導、診療を行う。
【文書】
  • 別紙様式47(「地域包括診療加算」・「認知症地域包括診療加算」に関する説明書)を参考にする。
  • 初回算定時に、署名付同意書を作成する。直近1年に4回以上受診の場合は、同意の手書きは省略可。電子カルテ情報共有サービスの患者サマリーに、記録と同意の旨を入力した場合は交付と見なす。

Q1:生活面の指導を、看護師が行ってよいのでしょうか。

A1:服薬、運動、休養、栄養、喫煙、家庭での体重や血圧の測定、飲酒、その他の療養を行う上での問題点等、生活面の指導は、担当医の指示を受けた看護師、管理栄養士、薬剤師が行っても差し支えません。(地域包括診療加算通知ウ参照)

●Point:カルテ記載と添付の留意点

  1. 患者の受診しているすべての医療機関を把握し、処方されている医薬品をすべて管理し、カルテに記載する。
  2. お薬手帳もしくは薬局からの文書のコピーをカルテに添付、または投薬内容をカルテに記載する。
  3. ③健診や検診の結果等をカルテに記載する。
  4. 初回算定時に作成した患者の署名付の同意書をカルテに添付する。

●Point:算定ポイント

  1. 初診時や訪問診療時(往診含む)は算定できない。
  2. 地域包括診療料と地域包括診療加算は、どちらか一方に限り届出ができる。
  3. 他医療機関でも、6疾病のうち重複しない疾病を対象とする場合に限り、地域包括診療加算、地域包括診療料、認知症地域包括診療加算、認知症地域包括診療料を算定できる。
  4. 地域包括診療加算を算定する場合は、7種類以上を投薬時の減算規定は適用しない。
  5. 原則として院内処方だが、患者ごとに院内処方と院外処方を分けてもよい。院外の場合は、24時間対応の薬局と連携が必要。

Q2:厚生労働省 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援を行う指針を定めることとありますが、指針には具体的にどのような内容を盛り込む必要がありますか。

A2:次の内容が盛り込まれる必要があると考えられます。
  1. 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされること。
  2. 本人と医療・ケアチームによる十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本として、人生の最終段階における医療・ケアを進めること。
  3. (家族等も含めた)本人との話し合いが繰り返し行われること。
  4. 人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続きとして、【本人の意思が確認できる場合】【本人の意思が確認できない場合】【複数の専門家からなる話し合いの場の設置】によること。

●Point:請求誤り、個別指導による指摘が多い事項

 厚生労働省保険局 「保険診療確認事項リスト(医科)令和6年度改訂版」 に、請求の誤りが起きやすく、個別指導の指摘の機会が比較的多い事項として次の点が提示されています。
□ 対象患者に該当していない。
□ 患者の同意を[ 得ていない・得たことが明らかではない ]。
□ 患者の担当医以外が診療した場合に算定。
□ 患者が受診している医療機関を全て把握していない。
□ 他の医療機関で処方されているものも含め、直近の投薬内容の全てについて診療録に記載がない。
□ 重複投薬や飲み合わせ等について管理していない。
□ 健康診断や検診の[ 受診勧奨を行っていない ・ 結果等について診療録に記載がない ]。
□ (直近1年間の受診歴が4回未満であるにも関わらず) 初回算定時に患者の署名付の同意書を[ 作成していない・診療録に添付していない ]。
□ 院内掲示により[ 健康相談・介護保険に係る相談・予防接種に係る相談・相談支援専門員からの相談・リフィル処方箋 ]の対応が可能なことについて周知されていない。
(施設基準についての記載は一部の為、届出の際は、施設基準の詳細をご覧下さい)


【2025年8月15日号 Vol.8 メディカル・マネジメント】