病院・診療所
院長の経営の意思決定を支える“経営の伴走者”とは?
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
【相談内容】
東京都周辺で内科クリニックを開業して1年目を迎えたA院長から、こんなご相談をいただきました。 「開業時には、開業コンサルタントに物件探しから立ち上げ準備まで、本当にお世話になりました。ただ、開業してからは、その方とのやりとりもすっかりなくなり、今では誰に何を相談すればよいか分からない状態です。顧問税理士にも相談してみましたが、税金やお金のこと以外はほとんど助言がなく、スタッフの人間関係、評価制度、今後の戦略など、クリニック経営の本質的な悩みにはまったく対応してもらえません。
開業医の友人に相談すると、 『税理士は税金の専門家だし、経営コンサルタントは当たり外れが大きく、信頼できる人に巡り合うのは難しいよ』 と忠告されました。でも私は、経営の実務や人の問題まで一緒に考えてくれる “伴走者” のような存在がどうしても必要だと感じています。これは贅沢な願いなのでしょうか?また、そうした存在を見つけるには、どんな基準で選べばいいのでしょうか?」
開業医の友人に相談すると、 『税理士は税金の専門家だし、経営コンサルタントは当たり外れが大きく、信頼できる人に巡り合うのは難しいよ』 と忠告されました。でも私は、経営の実務や人の問題まで一緒に考えてくれる “伴走者” のような存在がどうしても必要だと感じています。これは贅沢な願いなのでしょうか?また、そうした存在を見つけるには、どんな基準で選べばいいのでしょうか?」
【回答】
このような悩みは、多くの開業医が共通して抱える 「開業後あるある」 と言えるでしょう。開業という大きな山を登り切った後にやってくるのは、予想外に静かで孤独な “運営” の日々です。むしろ、本当に悩みが深くなるのは開業してから⸺。それが現実です。
■開業後に必要なのは 「税理士」 より 「相談相手」 ?
開業時は、スケジュールや資金繰り、設備購入など、ある程度 “形式化” された課題が多くあります。一方、開業後の課題は非常に個別性が高く、現場感と人間力が求められるものばかりです。
たとえば、次のような悩みはどうでしょうか?
たとえば、次のような悩みはどうでしょうか?
- スタッフが定着せず、採用に苦戦している
- 勤務歴の長いスタッフの態度が変わってきた
- スタッフ間の「壁」ができて、連携がうまくいかない
- 新しい診療科や設備投資を考えているが、踏み切れない
- 給与や賞与をどう決めればいいか分からない
これらの問題に、 「税金の専門家」 である税理士が答えてくれるでしょうか?あるいは、 「立ち上げのプロ」 である開業コンサルタントが関与し続けてくれるでしょうか?
答えは多くの場合、 「No」 です。
だからこそ、開業後には 「医業に詳しく、実務にも関われる“経営の伴走者” 」 の存在が不可欠なのです。
答えは多くの場合、 「No」 です。
だからこそ、開業後には 「医業に詳しく、実務にも関われる“経営の伴走者” 」 の存在が不可欠なのです。
■院長にふさわしい “ブレーン” の条件とは?
では、どういった人を顧問に迎えるべきか?その基準を整理してみましょう。
1.愚痴が言える存在であること
まず大切なのは、 「この人になら気持ちを話せる」 と思えること。形式的な専門家ではなく、日常の悩みに耳を傾け、気持ちを整理してくれる相手こそが、院長にとって最良のブレーンです。
2.医療現場に理解があること
人材確保・教育・評価制度・シフト管理・クレーム対応……。現場の実情を知っていなければ、的確な助言はできません。医業に特化した経験があるかどうかは、非常に重要なポイントです。
3.数字と現場、両方を語れること
経営は感情だけでは動きません。財務的裏付けがあり、数字にもとづいた助言ができることも不可欠です。資金繰り、昇給や賞与の判断、将来的な事業展開の可否など、冷静な指標も必要です。
4.実務に並走してくれること
「口だけ」 のコンサルタントではなく、実際に求人原稿を見てくれたり、スタッフ面談に立ち会ってくれたり、実務に寄り添ってくれる人を選びましょう。経営の現場は “行動” で変わります。
5.奥様とも信頼関係が築けること
クリニックの経営は、ご夫婦の連携が非常に重要です。院長の右腕である奥様ともコミュニケーションが取れ、信頼される人材であることも大切な選定基準になります。
1.愚痴が言える存在であること
まず大切なのは、 「この人になら気持ちを話せる」 と思えること。形式的な専門家ではなく、日常の悩みに耳を傾け、気持ちを整理してくれる相手こそが、院長にとって最良のブレーンです。
2.医療現場に理解があること
人材確保・教育・評価制度・シフト管理・クレーム対応……。現場の実情を知っていなければ、的確な助言はできません。医業に特化した経験があるかどうかは、非常に重要なポイントです。
3.数字と現場、両方を語れること
経営は感情だけでは動きません。財務的裏付けがあり、数字にもとづいた助言ができることも不可欠です。資金繰り、昇給や賞与の判断、将来的な事業展開の可否など、冷静な指標も必要です。
4.実務に並走してくれること
「口だけ」 のコンサルタントではなく、実際に求人原稿を見てくれたり、スタッフ面談に立ち会ってくれたり、実務に寄り添ってくれる人を選びましょう。経営の現場は “行動” で変わります。
5.奥様とも信頼関係が築けること
クリニックの経営は、ご夫婦の連携が非常に重要です。院長の右腕である奥様ともコミュニケーションが取れ、信頼される人材であることも大切な選定基準になります。
■顧問契約で失敗しないための4つのポイント
1.期待と目的を明確に伝える
何をしてほしいのか、どこに課題があるのかを事前に共有しましょう。 「期待されていない」 と感じるコンサルタントは力を発揮できません。
2.業務内容と料金を明文化する
契約書に 「業務範囲」 「料金」 「頻度」 などを明記することで、お互いが安心して取り組めます。
3.報連相のルールを決める
連絡手段や頻度、緊急時の対応など、スムーズな意思決定の仕組みづくりは経営効率に直結します。
4.奥様の視点を尊重する
現場の感覚を知っているのは奥様です。ご夫婦で納得感のあるパートナー選びが、長期的に良好な関係を築く土台となります。
何をしてほしいのか、どこに課題があるのかを事前に共有しましょう。 「期待されていない」 と感じるコンサルタントは力を発揮できません。
2.業務内容と料金を明文化する
契約書に 「業務範囲」 「料金」 「頻度」 などを明記することで、お互いが安心して取り組めます。
3.報連相のルールを決める
連絡手段や頻度、緊急時の対応など、スムーズな意思決定の仕組みづくりは経営効率に直結します。
4.奥様の視点を尊重する
現場の感覚を知っているのは奥様です。ご夫婦で納得感のあるパートナー選びが、長期的に良好な関係を築く土台となります。
■ 「相性」 もまた、重要な判断基準です
ここまで機能面のお話をしてきましたが、実は一番大切なのは 「人として信頼できるかどうか」 です。
価値観や人生観が合う人、自分の弱さや迷いを見せられる相手⸺そうした “人間としての相性” が、長く付き合う上で何より大切です。
価値観や人生観が合う人、自分の弱さや迷いを見せられる相手⸺そうした “人間としての相性” が、長く付き合う上で何より大切です。
■最後に
経営には、 「数字」 「戦略」 「人材」 ……さまざまな要素がありますが、最終的にそれを決めるのは “院長の意思” です。
その意思決定を支えてくれる相談相手こそ、最良のブレーンであり、経営の伴走者と呼べる存在です。開業後の孤独を一人で抱え込まず、信頼できる “人” とともに、これからのクリニック経営をより確かなものにしていってください。
【2025年8月1日号 Vol.7 メディカル・マネジメント】
その意思決定を支えてくれる相談相手こそ、最良のブレーンであり、経営の伴走者と呼べる存在です。開業後の孤独を一人で抱え込まず、信頼できる “人” とともに、これからのクリニック経営をより確かなものにしていってください。
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