病院・診療所

「在宅自己注射指導管理料」について運用の留意点

請求業務のポイント解説
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
コロナ禍以降、通院負担の軽減など患者のQOLを向上させるため、 「在宅自己注射指導管理料」 の対象薬が増加しています。
本稿では、医療機関よりご質問が多く、解釈を誤りやすい 「在宅自己注射指導管理料」 について、運用の留意点をお伝えいたします。

C101 在宅自己注射指導管理料(月1回)
1 複雑な場合  1,230点 〔1,070点〕
2 1以外の場合
 イ 月27回以下 650点 〔566点〕
 ロ 月28回以上 750点 〔653点〕
注2 導入初期加算 +580点
注4 バイオ後続品導入初期加算 +150点
〔 〕内はオンライン指針に則り情報通信機器で行った場合届出要

【対象患者】
指定の対象疾患に対して、厚生労働大臣が定める注射薬(別表第9)の自己注射を行う外来患者

Q1:算定要件となっている導入前の2回以上の外来に関する解釈を教えて下さい。2回目の外来で、在宅自己注射指導管理料を算定してよいのでしょうか。

A1: 「2回以上の外来」 で指導を行った日以降に算定が可能となります。 「2回以上の外来」 については、2回目の外来で指導した日に算定できます。その場合、事前指導に関する記録と在宅自己注射指導管理料に関する記録は、それぞれカルテに記載するようにして下さい。

●Point:導入前に十分な指導を行った場合に、在宅自己注射指導管理料を算定できる

入院、2回以上の外来、往診、訪問診療により、医師から患者への教育、指導が必要です。ただし、アナフィラキシーの場合は例外となります。

【運用手順】
  1. 導入前は、医師が十分な教育期間で、患者に指導する(自己注射の回数は明確に指示する)
  2. 指導内容を詳細に記載した文書を作成する
  3. 文書を患者に交付する
  4. 衛生材料等を必要かつ十分に支給する

●Point:他の管理料との併算定

  •  「B001 7」 難病外来指導管理料は、在宅自己注射指導管理料 「1 複雑な場合」 は算定できませんが、 「2 1以外の場合」 は併算定できます。
  •  「B001‐2‐12」 外来腫瘍化学療法診療料、 「第6部通則6」 外来化学療法加算は、いずれも併せて算定できません。
  •  「B001‐3」 生活習慣病管理料Ⅰ、 「B001‐3‐3」 生活習慣病管理料Ⅱは、主病が糖尿病で、在宅自己注射指導管理料を算定している場合は、併せて算定できません。
 「B001 13」 在宅療養指導料は、医師の指示のもと、看護師または保健師、助産師が30分以上指導を行った場合に、併せて算定できます。その際、カルテには実施時間○:○○~○:○○と明記してください。指導場所は、プライバシーが配慮された専用の場所である必要があります。

Q2:緊急受診で、在宅自己注射に係る注射を投与した場合は、注射及び注射薬の費用は算定できますか。
A2:算定できます。その際、レセプトには 「820100656:緊急時」 である旨、 「850100133: 緊急受診年月日」 を記載する必要があります。

●Point: 「G000」 皮内、皮下及び筋肉内注射、 「G001」 静脈内注射及び別表第9の注射薬の費用

在宅自己注射指導管理料を算定している場合、外来受診時の在宅自己注射に関わる皮内、皮下及び筋肉内注射、静脈内注射及び別表第9の注射薬の費用は、算定できません。ただし、緊急受診は、例外として算定できます。

Q3:導入初期加算についてです。初めて導入初期加算を算定後、2ヶ月毎に受診しています。2、3回目は、受診毎に算定してよいでしょうか。
A3:算定は、初回指導月から3月限りです。2回目は導入初期加算3月目にあたるため算定できますが、3回目は算定できません。

●Point:その他在宅自己注射指導管理料の算定ポイント

  1. 管理料は、指示回数による
  2. 2以上の医療機関で、異なった疾患に指導管理している場合は、それぞれの医療機関で管理料を算定できる。その場合、処方薬等を把握する。
  3. 同一の指導管理をする場合は、主たる指導管理を行っている医療機関で、管理料を算定する。
  4. 注の加算は、管理料を算定していない場合は算定できない。
  5. 導入初期加算の算定は、前医から通算する。
  6. 同一の医療機関で、2つ以上の在宅療養指導管理を行う場合は、主たる在宅療養指導管理料を算定する。
  7. 管理料は月1回の算定だが、血糖測定器に用いるチップを複数月渡した場合は、 「C150」 血糖自己測定器加算を複数月分算定する。(3月限度)必要に応じて、 「C151」 注入器加算、 「C153」 注入器用注射針加算も算定する。
  8. 薬剤処方がない場合も、指導していれば算定できる。その際レセプトには、残分があるため当月処方なしと記載する。

●Point:カルテ記載

次の事項を記載する必要があります。
  1. 在宅療養を指示した根拠
  2. 指示事項(方法、注意点、緊急時の措置を含む)
  3. 指導内容の要点
※厚労省「保険診療の理解のために(令和7年度)」及び「特 定共同指導における指摘事項(令和6年度)」に、医科診療 報酬に関する留意事項として記載されています。


【2025年9月15日号 Vol.10 メディカル・マネジメント】