保険薬局
2040年を見据えた在宅療養支援診療所薬剤師の役割と展望
在宅医療の羅針盤
在宅療養支援診療所薬剤師連絡会 副理事 在支診薬剤師 餅原 弘樹
2040年には我が国の高齢化率は35%を超え、生産年齢人口が急減する中で医療・介護需要は歴史的水準に達すると予測されています。この 「2040年問題」 は、持続可能な社会保障制度の維持に向けた喫緊の課題であり、医療提供体制の根本的変革を迫るものです。
2024年度から開始された第8次医療計画では、地域の実情に応じた効率的かつ質の高い医療提供体制の再構築が基本方針として掲げられました。この計画の柱の一つが在宅医療の機能強化であり、各都道府県は在宅療養支援診療所(以下、在支診)等を 「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」 として具体的に位置づけることが義務づけられました。本稿では、こうした医療政策の変化に対し、在支診薬剤師が果たすべき役割やその実践的意義、および今後の展望について考察したいと思います。
2024年度から開始された第8次医療計画では、地域の実情に応じた効率的かつ質の高い医療提供体制の再構築が基本方針として掲げられました。この計画の柱の一つが在宅医療の機能強化であり、各都道府県は在宅療養支援診療所(以下、在支診)等を 「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」 として具体的に位置づけることが義務づけられました。本稿では、こうした医療政策の変化に対し、在支診薬剤師が果たすべき役割やその実践的意義、および今後の展望について考察したいと思います。
在支診薬剤師の役割とイメージ
在宅医療の現場では、患者とその家族を取り巻く膨大な情報が日々生成されます。在支診には、訪問診療の相談から診療開始、転帰に至るまで、連携職種による様々な情報が集約されます。この複雑な情報の中で、薬学的観点から情報を評価・整理し、各ステークホルダーが求める形で提供することが、在支診薬剤師の重要な役割です。
在支診薬剤師は、チーム医療における薬物療法の専門家として、処方設計の妥当性評価、有害事象の早期発見といった薬学的介入を通じて患者アウトカムの最大化に貢献します。患者宅への直接訪問により生活環境や服薬状況を確認することもあれば、医療DXやICTを駆使してチーム全体の意思決定を支援することもあります。主体的介入から補助的介入まで、状況に応じて対面や非対面の手法を組み合わせた柔軟な対応が求められます。在支診薬剤師が 「ハブ」 として中心になるだけではなく、チームへの 「溶け込み」 や課題解決のための 「統合」 といった概念が、実際の機能により近いイメージです。
在支診薬剤師は、チーム医療における薬物療法の専門家として、処方設計の妥当性評価、有害事象の早期発見といった薬学的介入を通じて患者アウトカムの最大化に貢献します。患者宅への直接訪問により生活環境や服薬状況を確認することもあれば、医療DXやICTを駆使してチーム全体の意思決定を支援することもあります。主体的介入から補助的介入まで、状況に応じて対面や非対面の手法を組み合わせた柔軟な対応が求められます。在支診薬剤師が 「ハブ」 として中心になるだけではなく、チームへの 「溶け込み」 や課題解決のための 「統合」 といった概念が、実際の機能により近いイメージです。
2040年を見据えた環境変化
2040年に向けて、医療提供体制と社会環境は大きく変化し、在宅医療のあり方にも影響を及ぼします。第一に、医療提供体制の機能分化がいっそう進むと考えられます。診療所の専門分化により、患者は疾患や臓器ごとに異なる医療機関を受診する傾向にあります。薬局においても、患者が在宅医療へ移行する際、外来対応薬局から在宅専門薬局へと担当が変更されるケースが顕在化し、患者情報の継続的把握が困難になる課題が生じます。
第二に、在宅医療の対象患者層の多様化です。緩和ケアにおいてはがん終末期に限定されず、心不全、呼吸器疾患、認知症といった多様な非がん疾患へと拡大します。医療的ケア児に代表される小児や障害医療に該当する患者も対象となり、薬剤師には幅広い疾患に対する薬学的知識のみならず連携職種の職能理解も要求されます。
第三に、患者・家族の形態変化です。独居高齢者や老老介護世帯の増加により、 「住み慣れた自宅」 が必ずしも最適とは限らないケースが増加し、より複雑で個別化された支援計画が必要となります。
これらの変化は、従来の医療資源の配置や支援の枠組みに再考を迫るものであり、地域包括ケアの本質的再定義にもつながるといえます。これらの課題に対応するためには、幅広い経験を有する在支診薬剤師の知識・経験の集約化とその発展が重要であり、各地域での取り組みと社会全体への発信を横断的に取り組む必要があると考えます。
第二に、在宅医療の対象患者層の多様化です。緩和ケアにおいてはがん終末期に限定されず、心不全、呼吸器疾患、認知症といった多様な非がん疾患へと拡大します。医療的ケア児に代表される小児や障害医療に該当する患者も対象となり、薬剤師には幅広い疾患に対する薬学的知識のみならず連携職種の職能理解も要求されます。
第三に、患者・家族の形態変化です。独居高齢者や老老介護世帯の増加により、 「住み慣れた自宅」 が必ずしも最適とは限らないケースが増加し、より複雑で個別化された支援計画が必要となります。
これらの変化は、従来の医療資源の配置や支援の枠組みに再考を迫るものであり、地域包括ケアの本質的再定義にもつながるといえます。これらの課題に対応するためには、幅広い経験を有する在支診薬剤師の知識・経験の集約化とその発展が重要であり、各地域での取り組みと社会全体への発信を横断的に取り組む必要があると考えます。
薬剤師が担うべき新たな責務:研究と教育への展開
現在、在支診薬剤師の業務内容は施設ごとに多様であり、具体的業務範囲や求められる能力は明確に定義されていません。その実践知は暗黙知のまま共有されていないのが実情です。在支診が 「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」 として期待される以上、薬剤師が配置された施設は、臨床実践の場に留まらず、地域における在宅医療の研究・教育拠点としての機能を担うべきです。また、2040年を見据えた環境変化への課題解決に向け、後進の育成と地域全体のレベルアップも重要な使命です。
筆者らの地域では、病院薬剤師や薬局薬剤師を交えたコミュニティを形成し、定期的な症例検討会や相互研修を通じて知識と経験を共有する取り組みを開始しました。このような活動を通じて在支診薬剤師の専門性を体系化し、その職能を明確に社会に示していくことが、2040年を見据えた地域医療への本質的貢献につながると考えます。
筆者らの地域では、病院薬剤師や薬局薬剤師を交えたコミュニティを形成し、定期的な症例検討会や相互研修を通じて知識と経験を共有する取り組みを開始しました。このような活動を通じて在支診薬剤師の専門性を体系化し、その職能を明確に社会に示していくことが、2040年を見据えた地域医療への本質的貢献につながると考えます。
おわりに
2040年問題は、我が国の医療制度にとって前例のない挑戦です。しかし、これは在宅医療の質を飛躍的に向上させ、薬剤師という専門職の価値を再定義するための絶好の機会でもあります。在支診、病院、薬局といった所属施設の垣根を越え、すべての薬剤師が協働し、それぞれの専門性を地域のために還元すること。それこそが、超高齢社会においても持続可能な地域医療を実現するための確かな鍵となるでしょう。
【2025年10月号 Vol.6 Pharmacy-Management 】
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