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「ミーティングなんてムダ……」 と言わせない! 不満が出る会議の処方箋

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

開業して3年目を迎えた院長夫人からのご相談です。これまで院内のミーティングはあまり実施してこなかったものの、最近はスタッフ間の連携不足やモチベーションの低下が気になり、月1回のスタッフミーティングを開始されたそうです。ところが、 「意味がない」  「時間のムダ」 といった否定的な声が一部から上がるようになり、続ける意義自体に疑問を感じているようです。建設的な場にしたいけれど、何をどう見直せばよいのか⸺。組織づくりの現場で多くの方が直面するリアルなお悩みです。

【回 答】

ミーティングを単なる連絡の場に終わらせず、スタッフが前向きに参加したくなる価値ある時間に変えることが鍵です。
院内ミーティングは、ただ集まって情報共有をするだけの “義務的な場” にしてしまうと、どうしても 「意味がない」  「時間を取られた」 など消極的な印象を与えがちです。けれど、場のあり方を少し見直すだけで、スタッフのモチベーションや院内の雰囲気は大きく変わります。ここでは、スタッフの主体性を引き出し、ミーティングを  “やって良かった” と思える時間に変える7つのポイントをご提案します。

1.目的を明確にし、ゴールを共有する
ミーティングの目的が曖昧だと、雑談や連絡事項だけで終わってしまいます。 「今日はレセプト業務の改善策を決める」  「患者さん対応マニュアルの見直し案を検討する」 など、1回ごとに明確なゴールを設定しましょう。議題を事前に周知しておくと、参加者も準備ができ、会議の質が格段に上がります。

2.スタッフ主体で進める工夫を
院長や管理職が一方的に話すだけの “上意下達” 型ミーティングは、聞き手の意欲を奪いがちです。議長や書記を毎回持ち回りで担当してもらったり、 「今日のひとこと」  「最近うれしかったこと」 など、全員が発言する時間を設けたりしましょう。誕生日のスタッフには 「今年頑張りたいこと」 を語ってもらうなど、ちょっとしたスピーチタイムもおすすめです。こうした小さな工夫が、“自分も会議に関わっている”という実感を生み、チームの一体感を高めます。

3.アイスブレイクで空気を和らげる
ミーティング冒頭の数分間は雰囲気づくりに最適です。 「今月のMVPスタッフ発表」  「誕生日のお祝い」 「最近感じた感謝エピソード」 など、明るい話題からスタートすることで心理的なハードルが下がり、発言しやすくなります。継続することで、院内に “前向きな空気” が根づきます。

4.前回の振り返りと進捗確認を必ず
「会議で話しただけで終わり」 ではミーティングの意味がありません。前回決めたアクションの進捗を全員で確認し、実行できていない部分があればその理由を丁寧に聞きましょう。ただし、できなかったことを責めるのではなく、 「なぜ難しかったか」  「どうすれば実行できるか」 を一緒に考える姿勢が大切です。ミーティングを “課題解決の場” と再定義すると、スタッフも安心して意見を出しやすくなります。

5.進行フォーマットを定めてリズムを作る
毎回進行が違うと参加者は戸惑いがちです。 「開会→アイスブレイク→3分間スピーチ→前回の議事確認→委員会・部門報告→議題討議→改善提案→まとめ・次回予告」 といった基本的な流れを定めることで、全体の進行がスムーズになり、議論に集中しやすくなります。

6.リーダーとしての姿勢を示す
ミーティングの雰囲気はリーダーの立ち居振る舞いに大きく左右されます。 「当院が目指す姿」  「大切にしたい価値観」 を毎回短くでも語り続けましょう。また、スタッフの意見に真摯に耳を傾け、否定や批判ではなく “受け入れる姿勢” を心がけることも大切です。安心感が広がれば、自然と活発な意見交換が生まれます。

7.避けるべきNG行動をチェック
  • 過去の失敗を責める
  • 自分の考えを一方的に押しつける
  • 自慢話を長々と語る
  • 抽象的な表現で結論を曖昧にする
  • 誰かにレッテルを貼る、人格を評価する
こうした行動はスタッフの意欲を削いでしまうので、注意しましょう。

【まとめ】 “やること” が目的ではなく “良くする” ための手段
ミーティングそのものが目的になってしまうと、義務感ばかりが強くなります。本来は 「院内をより良くするため」  「連携を深めるため」 の手段であることを忘れず、スタッフが 「参加して良かった」  「来月も話し合いたい」 と思えるような時間に育てていきましょう。スタッフミーティングの形や進め方は、クリニックごとに正解が異なります。ご夫婦で協力し合いながら、ぜひ主体性と安心感に満ちた場をプロデュースしてください。きっと、院内に新しい風が吹き始めるはずです。


【2025年8月15日号 Vol.8 メディカル・マネジメント】