組織・人材育成

結果を分析し改善につなげる

人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社ToDoビズ 代表取締役 篠塚 功
参議院選挙で自民党が大敗しましたが、その結果を分析して組織を立て直し、政権与党として国民のために頑張ってもらいたいと願います。組織でも人でも、結果を分析することで課題が見えてきます。病院という組織であれば、財務諸表という結果を見れば、経営課題が見えてくるのだと思います。では、病院で働く人については、どうでしょうか。しっかりと結果を捉えることができているでしょうか。人事評価で、人の仕事の結果を捉えることは大事なことですが、最近は、プロセス評価が多くなり、結果を捉える評価が二の次になっているようにも感じます。そこで今回は、人事評価の結果評価と改善について考えます。

結果を捉える評価要素

仕事の結果を捉える人事評価を 「成績評価」 と言います。この評価要素としては、まず、目標管理の目標達成度評価が挙げられます。目標を達成したかという結果を評価します。部署の目標を達成するために、職員一人ひとりが、それに向けた目標を立て活動することは大事なことです。しかし、目標達成だけに邁進し、日頃の自分が担当している仕事がおろそかになるようでは、目標管理を行う意味がありません。病院において最も重要な仕事は、日常的に行われる医療や看護です。例えば、ある看護師が目標を達成するために一生懸命活動したとしても、日々の看護がおろそかになり、患者さんに迷惑をかけたのでは、組織をよくするための目標管理が、逆に問題を引き起こすことになりかねません。
したがって、結果を捉える評価において、担当する業務の結果を捉えることは基本です。この評価を総称して 「担当業務遂行度評価」 と言います。参考までに、この評価要素を一般職と管理職のみ図にしました。図にあるように、一般職であれば、業務の質と量を別々に評価します。業務の質は、業務の結果の出来栄えを評価します。簡単に言えば、患者さんの看護が充実していたかということです。また、業務の量は、業務を遂行した度合いを評価します。例えば、やるべき看護をスピーディーにできたかということです。
これらを評価しないような人事評価では何かと問題が起こります。例えば、行動評価を中心とした人事評価を行っている病院で、何年経っても夜勤を任せられないと言われている数名の看護師の人事評価を確認すると、S~Dの5段階評価でB評価でした。行動評価や目標管理では、日常の仕事上の問題が見えにくいのです。仕事の結果であ れば、仕事のミスが多かった、仕事が遅いといった結果を捉えられるので、この評価のウエイトを大きくしておけば、人事評価の最終結果もC評価となるはずです。あるいは、管理職で、目標管理をしっかりと行い部署の業績を上げている反面、スタッフが大勢退職したという結果があった場合、 「人材育成」 の評価を下げて指導をせざるを 得ません。各階層で、仕事の結果として求められる重要なことは何かを考え、人事評価をすることで、見えにくい課題が見えてきます。

図:担当業務遂行度の評価要素の例


人事評価による改善点は人だけではない

結果は明らかです。参議院選挙で、自民党議員が議席を取れなかったのは確かです。明らかに見えることを評価するのは、難しいことではありません。知識や技能という評価要素も一般的ですが、この看護師は知識や技能があるかというのも、結果から見たほうが分かりやすいのです。例えば、いつも仕事を時間内に終わらせることができないという結果は、業務の量として評価します。この結果から、原因を探り改善することが大事です。我が国では、仕事ができないからと言って、簡単に辞めてもらうことはできません。したがって、仕事が上手くできない結果を見つめて、それを改善する必要があります。例えば、看護記録を書くのが遅いのであれば、早く書くために、どのような能力を身に付ける必要があるのかを、指導育成していかなければなりません。
また、その結果を導き出しているものは、必ずしも部下に問題がある場合だけではありません。部下の仕事がスムーズに行えない職場環境に問題があるのかもしれません。その場合には、上司は、職場を改善しなければならないわけです。すなわち、人事評価から見えてくる改善点は、部下の改善だけでなく、組織の改善にも向けられる必要があります。結果を捉えるというのは、結果を責めるのではなく、人や組織をより良くするために行うことを忘れてはなりません。


【2025年8月15日号 Vol.8 メディカル・マネジメント】