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乳幼児育児栄養指導料~カルテ記載と運用の留意点~

請求業務のポイント解説
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
小児医療において、小児科診療所は、地域における医療と保健、福祉、教育との橋渡しの役割・機能を担っています。
本稿では、その一環となる育児、栄養その他療養上の指導の対価である 「乳幼児育児栄養指導料」 とそのカルテ記載について、運用の留意点をお伝えいたします。

B001-2-3 乳幼児育児栄養指導料(初診時) 130点
注2情報通信機器を用いた場合 113点
(注2は情報通信機器を用いた診療の 施設基準の届出が必要)

【対象患者】
3歳未満の初診患者
※初診後、即入院になった場合は算定できません。

【算定対象の医療機関・医師】
小児科を標榜する保険医療機関の小児科担当医
※ 「内科・小児科」 や 「産科・小児科」 など、医師1人で複数科を標榜する場合も算定可能です。

Q1:算定にあたり、適応疾患や状態は、規定されているのでしょうか。
A1:乳幼児育児栄養指導料は、通知等で適応疾患や状態が規定されていません。

●Point: 他の医学管理料との比較
① 外来栄養食事指導料との規定に違い

② 小児関係の医学管理料との併算定
乳幼児育児栄養指導料は、小児外来診療料、小児かかりつけ診療料に含まれるため、併算定できません。

●Point: カルテ記載の留意点
育児、栄養、その他療養上必要な指導について、カルテに指導の要点を記載する必要があります

<カルテ記載の具体例>
記載内容の具体例は次の通りです。カルテに選択式マスターを組むと運用上便利です。
  • 下痢症状時には、離乳食を止め、ミルクだけにする。
  • 下痢症状の持続での血便に注意する。
  • 発熱時、水分摂取をこまめにする。
  • 体重の減少に注意する。
  • むくみに注意する。
  • 尿の色に注意する。
  • 手指は清潔にする。
  • 早く起床し、朝食を必ず食べ、生活リズムを整える。
  • 魚、大豆製品の摂取頻度を増やし、バランスよく食べる。
  • 毎日60分以上、楽しく体を動かすようにする。
なお、個別指導における厚生局の主な指摘事項として 「個々の患者の状態に応じた記載になっていないこと」 (令和3年度 東海北陸厚生局)、 「指導の要点について診療録への記載が不十分であること」 (令和元年度 近畿厚生局)といった点が挙げられています。

Q2:3歳の誕生日を含む月は、どのように算定したらよいでしょうか。
A2:3歳未満が要件のため、誕生日前までに受診した場合は算定できます。誕生日以降は、算定できません。

Q3:初診料を算定しない初診の場合でも算定できますか。
A3:算定できません。乳幼児育児栄養指導料が算定できるのは、初診料を算定する場合のみです。( 平成18年4月28日 疑義解釈(その5))

【参考】初診料に関する算定の留意点
 「保険診療確認事項リスト(医科)令和6年度改訂版」 (厚生労働省保険局)では、初診料にかかる改めるべき不適切な例として次の項目を挙げています。

  • 現に診療中の患者に対して新たな傷病の診断を行った際に、初診料を算定している。
  • 慢性疾患等明らかに同一の疾病又は傷病の診療を行った場合にもかかわらず、初診料を算定している。
  • 健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、[ 当該保険医・当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医 ]が治療を開始した場合にもかかわらず、初診料を算定している。
  • 看護に当たっている者から、症状を聞いて薬剤を処方し、初診料を算定している。
※前の疾患が治癒し、新たな疾患で初診料を算定する場合は、1号紙上で、転帰することに留意下さい。
令和5年度の主な指摘事項や東北厚生局の 「保険診療と個別指導(医科)」 においても、 「1号紙に、傷病名・開始および終了年月日・転帰について記載がない又は不十分である。」 として、診療録記載の頻出指摘事項に挙げられています。


【2025. 5. 15 Vol.2 メディカル・マネジメント】