病院

財団医療法人における評議員について考える

評議員にはどのような要件や権限責任等があるのか
あすの監査法人 公認会計士 山岡 輝之
多くの医療法人では、6月に理事会、社員総会あるいは評議員会が開催され、無事終了を迎え一息つかれたところではないでしょうか。
私も理事会等に会計監査人として同席する機会がありますが、最近の理事会や社員総会では積極的な意見が飛び交う場面を見ることも多く、有意義な会議が進められていると感じています。

さて、その中で今回はテーマを少し絞った形でお話したいと思います。ある財団医療法人で「評議員」の確保に苦慮しているというお話を伺いました。
評議員とは財団医療法人で開催される評議員会の構成員であり、医療法人の業務もしくは財産の状況または役員の業務執行の状況について、役員に対して意見を述べたり、その諮問に答えたり、役員から報告を徴することが求められます。
理事長は予算や借入、重要な財産の処分や事業計画の決定等、あらかじめ決められた事項については、評議員会の意見を聴かなければならないこととされています。
では、評議員にはどのような要件や権限責任等があるのでしょうか。

【評議員の適格要件】
  1.  医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
  2.  病院、診療所又は介護老人保健施設の経営に関して識見を有する者のうちから、寄付行為の定めるところにより選任された者
  3.  医療を受ける者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
  4.  上記① ~ ③に掲げる者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者

【兼任の禁止、医療法人における最低人数】
評議員は理事、監事、職員との兼任は禁止されています。また、最低人数は理事の定数を超える数となることから、各財団医療法人の理事数に応じて最低人数は変わってきます。

【評議員の権限】
予算・事業計画・決算の承認、理事、監事の選任・解任・報酬額の決定、寄附行為の変更、合併・分割の同意等

【医療法人に対する義務】
善管注意義務(職務や社会的地位から、一般的に要求される程度の注意義務のこと。)
評議員の場合、個人的な能力や資質を評価して委任を受けていると考えられるため、会議に出席し、積極的な協議を経て、責任ある議決権の行使をすることが最低限求められると考えられます。

【責任(財団医療法人の評議員を前提)】
任務懈怠の場合には、医療法人に対し、これにより生じた損害を賠償する責任を負います。また、任務懈怠により悪意あるいは重過失があった場合には、第三者に対する損害を賠償する責任もあります。また、役員等(評議員、理事、監事)が医療法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等もこの損害を賠償する責任を負う場合には、連帯債務者となります。(別途、免除制度あり)

ここまで見ますと、評議員になるにはそれなりの重責があり、また、適格要件からも医療経営に対するある程度の見識が求められていることがわかります。にもかかわらず、評議員の報酬は安価であることが多く、役割責任と対価が釣り合わないこともあり、評議員の引き受け手は簡単には見つからないのが、多くの財団医療法人が共通して抱える悩みではないでしょうか。

一方、規模の大きい財団医療法人では理事者数も多くなりがちですが、評議員の数は理事者数を上回ることが求められるため、例えば理事者が10人の場合には11人以上の評議員を確保する必要があります。欠員が出た場合、すぐに補充する必要があり、評議員の候補者を事前に確保しておく必要があるかもしれません。

評議員そして評議員で構成される評議員会は、財団医療法人の適正なガバナンスを確保するための重要な組織です。評議員への就任を依頼された際、前向きに検討される方が少しでも増えていくような流れを作っていくことが、財団医療法人のガバナンスにおける今後の課題です。


【2023. 8. 1 Vol.573 医業情報ダイジェスト】