財務・税務
医療機関の固定資産管理について考える①
なぜ固定資産管理が重要なのか
あすの監査法人 公認会計士 山岡 輝之
医療機関が保有する固定資産は、金額が高額である、資産数が多いというイメージがあると思います。私も同じ意見ですが、加えて、 「購入時は一生懸命検討するが、購入してからの管理がずさん」 「高額の固定資産を購入する割には利用価値を検証していない」 「固定資産を紛失しても誰も気づいていないのではないか」 といったイメージも会計監査を通して感じることがあります。しかも、このレベル感は各医療機関でかなりの開きがあると感じています。
私の関与先である医療機関であっても、例えば、固定資産の現物確認を定期的に実施している、固定資産の除売却や部署移動の手続が適切にできているといった典型的なポイントが十分に対応できているかと言うと、問題なく対応しているとは言い切れません。
今回は、医療機関で求められる固定資産管理、特に固定資産購入後の現物管理について考えてみたいと思います。
私の関与先である医療機関であっても、例えば、固定資産の現物確認を定期的に実施している、固定資産の除売却や部署移動の手続が適切にできているといった典型的なポイントが十分に対応できているかと言うと、問題なく対応しているとは言い切れません。
今回は、医療機関で求められる固定資産管理、特に固定資産購入後の現物管理について考えてみたいと思います。
医療機関が保有する 「固定資産」 とは?
土地や建物は当然に固定資産ですが、医療機関の大切な固定資産には医療用器械備品(医療機器)があります。また、医療用以外のパソコンや事務管理の器械備品、車両運搬具のほか、リース契約により賃借しているさまざまなリース資産も固定資産に該当します。その他、電子カルテやソフトウェアライセンスなどの無形の固定資産も存在します。
なぜ固定資産管理が重要なのか
もし、固定資産の管理が不十分だったとしたら、医療機関でどのような問題が起きると思いますか?想定される問題をいくつか挙げてみたいと思います。
①情報漏洩リスク
病院が管理する固定資産には、さまざまな個人情報や機密情報が含まれている医療機器やIT機器を多く保管しています。これらの固定資産が知らぬ間に紛失していたとなれば、たちまち医療機関の信用問題にかかわります。過去、病院の薬剤師がハードディスクを盗難し、個人情報の漏洩問題に発展した事件があります。医療機関は端末紛失による情報漏洩リスクが高く、厳密な情報セキュリティ管理の観点からも固定資産管理が重要となります。
②盗難発見リスク
固定資産の現物管理を実施していない場合、あるはずの固定資産がなくてもその事実にすら気づかない可能性があります。固定資産が見つからない理由には、廃棄・売却・施設内移動などが考えられますが、その理由が盗難だとすれば、単純な問題として片づけられない事態になってしまいます。病院が保有する資産は、売却すれば価値のある資産もあることから盗難リスクは高いと考えるべきです。高額かつ簡単に持ち運びができる資産もあるため、このような固定資産は特に注意が必要になります。
③不必要な契約、税金の支払い
医療機器をはじめとする固定資産では、その機能を維持するため、さまざまな保守契約を結び、メンテナンス管理を外部に委託しているケースが大半です。固定資産の管理が不十分な場合、例えば、使えなくなった固定資産、現物は存在しているが利用していない、あるいはほとんど利用していない固定資産、すでに廃棄済みの資産に対し、保守対象資産をそのまま見直すことなく契約を続けてしまうようなミスが起きてしまいます。また、リース契約により固定資産を取得している場合も多いと思いますが、リース台帳のメンテナンスが不十分であれば、リース契約の管理や見直しも困難になってしまいます。
他にも、医療機器や設備等の償却資産には償却資産税が課される点にも留意する必要があります。すでに使用していない、あるいは廃棄済みの固定資産を台帳上整理し、固定資産の状況を正確に把握しなければ、必要以上の税金を納めることになりかねません。
他にも、医療機器や設備等の償却資産には償却資産税が課される点にも留意する必要があります。すでに使用していない、あるいは廃棄済みの固定資産を台帳上整理し、固定資産の状況を正確に把握しなければ、必要以上の税金を納めることになりかねません。
④業績判断の誤り
会計的な話になってしまいますが、会計上、固定資産は固定資産台帳に計上された資産が貸借対照表に計上され、減価償却費も固定資産台帳に計上された結果を前提に計算されます。
当然ですが、固定資産台帳と固定資産の現物とが整合していなければ、会計結果は正確に反映されないことになります。
当然ですが、固定資産台帳と固定資産の現物とが整合していなければ、会計結果は正確に反映されないことになります。
なかなか進まない固定資産の現物確認
医療機関における固定資産管理の重要性は、公立病院であれば包括外部監査などの各監査、その他医療機関でも会計監査等で散々指摘されるポイントであり、その都度、固定資産の現物確認(現物と台帳との突き合わせ)をすべきと改善案を提示されることが多いと思います。
しかし、固定資産があちこちに保管され、固定資産と現物の突合をしようと思っても、正直、どこから手を付けていいかわからないと悩まれている医療機関も多いのではないでしょうか。
次回は、これまでの経験を踏まえ、固定資産台帳に残しておきたい情報、また、固定資産の現物確認の実施方法、そして、固定資産台帳のメンテナンス方法について考えてみたいと思います。
【2025. 1. 1 Vol.607 医業情報ダイジェスト】
しかし、固定資産があちこちに保管され、固定資産と現物の突合をしようと思っても、正直、どこから手を付けていいかわからないと悩まれている医療機関も多いのではないでしょうか。
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