保険薬局

薬局の収益性

今後の診療報酬改定の動き
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
医療財源が逼迫する中、薬局を取り巻く診療報酬改定は年々厳しさを増しています。2024年度の診療報酬改定では、基本料が3点増加とプラスの変更があった一方で、主な加算である地域支援体制加算が7点減少したことは見逃せないポイントです。この変更は、賃上げや物価上昇を考慮すると、実質的に薬局経営への負担が増していると考えられます。
こうした状況の中、収益性を向上させる取り組みを進めなければ、事業の継続はますます難しくなります。今回は、加算の獲得に焦点を当てながら、薬局の収益性向上のための具体的な施策について考えていきます。


■薬局の収益を高めるためには

具体的な施策としては、 「顧客数を増やす」  「単価を上げる」  「コストを下げる」 の3つが柱となります。
まず、処方箋枚数を増やすためには、地域での信頼関係の構築や面処方箋の拡大に加え、在宅医療を推進して訪問処方箋の枚数を増やす取り組みが主になります。これにより、地域密着型の薬局としての存在感を高めることにも繋がります。
次に、単価を上げるには、診療報酬の仕組みを理解したうえで加算の獲得を目指すことが重要です。適切な加算を確実に取得することが、薬局の収益性向上に直結します。
一方で、コスト削減においては、細かな節約も大切ですが、コストの大部分を占める医薬品仕入れと人件費の適切な管理が鍵を握ります。無駄を排除し、効率的な運営を追求することが求められます。
いずれの場合も、努力次第で改善が可能な領域に焦点を当て、地道に経営努力を続けることが事業成功のカギとなってきます。

■加算獲得について

収益性向上のために注力すべきは、加算獲得です。中でも、地域支援体制加算、連携強化加算、医療DX推進体制整備加算、後発医薬品調剤加算といった基盤となる加算を確実に取得することは、処方箋枚数全体にプラスの影響を与え、大きな効果が期待できます。
賃上げや物価上昇に対応し、薬価差益が減少している状況下では、加算の獲得がますます重要な収益確保の手段となっています。
加算を獲得するためには、まず従業員に点数の意義と要件について理解を深めてもらうことが必要です。しかし、知識だけでは加算を取得できません。現在の加算要件の多くでは、実績件数のカウントが求められます。そのため、具体的な目標値を設定し、進捗をモニタリングしながら確実に取得へ向けた取り組みを行うことが重要です。
昨今だと、医療DX推進体制整備加算において、マイナ保険証の利用率によって点数が区分されています。このように利用率をしっかり月別でモニタリングして、従業員全員が同じ目標に向かって連携し、定期的に成果を確認することが重要になってきます。

■今後の診療報酬改定の動き

加算の獲得においては、今後の診療報酬改定をある程度予測し、先手を打って対応することが重要です。例えば、地域支援体制加算の要件は、次回の改定でより厳しい基準になる可能性が高いと考えられます。また、医療DX推進体制においては、改定を待たずに期中で要件が変更される可能性も否定できません。
特に注目すべきは、DXの進展による電子処方箋の導入や電子カルテの共有といった国の推進事業です。現在はマイナ保険証の利用率が評価の基準となっていますが、これらの要件が急に変更されることも十分考えられます。
さらに、選定療養制度の導入により、後発医薬品の利用率が上昇した店舗も増えています。このような中で、現行の後発医薬品調剤体制加算が次回の改定でも同じ形で維持されるかは不透明です。
また、医科の動向を見ても、在宅医療のより専門分野に点数が移行する傾向が見られるため、薬局においても在宅医療はよりキーポイントになってくるでしょう。
このように、診療報酬改定の動きを常に見据えながら、日々の実績をモニタリングすることが求められます。事前に準備を進めておけば、改定内容に柔軟に対応し、適切な施策を講じることが可能となるでしょう。未来を見据えた経営努力が、薬局の収益性と持続可能性を高めるカギとなります。

薬局の売上は、処方箋枚数と単価によって決まりますが、処方箋枚数や顧客数は立地や地域特性に大きく影響されるため、必ずしもコントロールが容易ではありません。一方で、単価アップや加算の獲得については、努力次第で改善が可能な領域です。
加算を確実に取得するためには、要件を満たす対応と機能が薬局に備わっていることが前提となります。その上で、取得可能な加算に一つひとつ着実に取り込むことが、収益性向上へのカギとなります。
収益性が低下すれば、地域医療を支える存在としての役割を維持することが難しくなります。だからこそ、コントロール可能な分野に注力し、できることを地道に進めていく姿勢が大切です。地域医療を支えるためにも、継続的な運営を目指して前向きに取り組んでいきましょう。


【2025.1月号 Vol.344 保険薬局情報ダイジェスト】