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「周術期薬剤管理加算」の届出状況は?

周術期薬剤管理加算にかかる施設基準の届出状況は?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
令和4年度診療報酬改定では、麻酔管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の加算として「周術期薬剤管理加算」が新設された。医療安全の取り組みによる周術期医療の質向上を目的に、手術室担当の薬剤師と病棟担当の薬剤師による薬学的管理の連携を評価したものである。
同加算は、手術室に専任の薬剤師を配置すること、病棟薬剤業務実施加算1の届出を行っていること、周術期薬剤管理に関するプロトコールの整備、手術室の専任薬剤師・病棟担当薬剤師・DI担当薬剤師が必要に応じてカンファレンスを行うこと等が施設基準になっている。「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(令和3年9月30日付医政発0930第16号)では、周術期における薬剤管理等の薬剤に関連する業務として下記を挙げている。

  • 手術前における、患者の服用中の薬剤、アレルギー歴及び副作用歴等の確認、術前中止薬の患者への説明、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づく術中使用薬剤の処方オーダーの代行入力、医師による処方後の払出し
  • 手術中における、麻酔薬等の投与量のダブルチェック、鎮痛薬等の調製
  • 手術後における、患者の状態を踏まえた鎮痛薬等の投与量・投与期間の提案、術前中止薬の再開の確認等の周術期の薬学的管理

■ 周術期薬剤管理加算にかかる施設基準の届出状況は?

令和4年9月1日時点における都道府県ごとの周術期薬剤管理加算にかかる届出病院数と病棟薬剤業務実施加算1の届出病院に占める周術期薬剤管理加算の届出病院の割合を図に示した。
全体では病棟薬剤業務実施加算1の届出病院1,984病院のうち、253病院(12.8%)が周術期薬剤管理加算を算定している。

届出病院数の上位は、そもそもの人口が多い東京都39病院、大阪府29病院、埼玉県・神奈川県21病院になるが、これら4都府県は届出割合も20%前後で、全体と比較して高い割合になっている。なお届出割合が20%以上だったのは、島根県、長野県、岡山県、埼玉県、神奈川県、岐阜県の6県だった。届出割合が最も高いのは島根県の28%だが、7病院中の2病院のため、もともとの母数の影響もある。逆に9つの県では、周術期薬剤管理加算の届出病院がまだないようだ。人口あたりの薬剤師数が少ない県が多く、マンパワー面から手術室への配置が難しい実状が考えられる。



■薬剤師不足が原因か?

厚生労働省委託事業「薬剤師確保のための調査・検討事業」の報告書によると、病床規模が大きい病院ほど、急性期機能が高い病院ほど、薬剤師の不足感が強い傾向にある。
施設基準の届出状況を見ても、薬剤管理指導料の届出をしている病院のうち、病棟薬剤業務実施加算の届出もできている病院は1/3程度しかない。病棟薬剤業務の充実が求められている昨今においても、病棟薬剤業務への週20時間以上の配置が困難な病院の方が遥かに多いのが現実だ。
令和4年改定では、専任の薬剤師の配置が求められる評価項目として、今回取り上げた周術期薬剤管理加算だけでなく、術後疼痛管理チーム加算も新設された。研修の修了等が施設基準の要件になっているため、周術期薬剤管理加算よりハードルが高いとはいえ、令和4年9月1日現在、全国でまだ51病院しか届出がない。
今回の題材はあくまで薬剤関連業務の話になるが、先頭グループの病院と後方グループの病院の差がさらに開きつつあることが、データからも見えてくる。言うまでもなく、医療職は高い専門性が問われ、人材育成は一朝一夕には済まない。将来ビジョンのもと、中長期の組織戦略、採用戦略が必要になる。早い段階から届出ができている病院は、戦略的に人材を育ててきた証と言えるだろう。
 医師の働き方改革を目前にして、薬剤部門に限らず、いかにタスクシフト、タスクシェアするかが課題になる。人件費をいかに抑えるかは経営上とても大切だが、人件費の一部を投資として考える発想も必要だろう。


【2022. 11. 15 Vol.556 医業情報ダイジェスト】