病院
第16回 経営計画の策定
コストの削減について
株式会社前進 代表取締役 岡本 有[経営計画の具体的内容]
前回に引き続き、収支改善の3要素(図1参照)のうちコストの削減について説明します。
[医療材料費の削減]
「コストの削減」は3要素のうち一番難易度が低いものとなっていますが、それはコストの削減の手法は企業経営で行うものと共通するものがあり、それほど医業に関する専門知識を必要としないからです。
病院のコスト構造は図2のようになっています。
前回はこのうち、人件費(給与費)について説明しました。今回は「医薬品費」「診療材料費」の削減について説明します。
病院のコスト構造は図2のようになっています。
前回はこのうち、人件費(給与費)について説明しました。今回は「医薬品費」「診療材料費」の削減について説明します。
[削減の目標設定]
医薬材料費は変動費です。人件費・委託費などと異なり、収入に応じて変動する費用であり、企業では原価と呼ばれるものです。したがって、コスト削減の目標も対収入比率で設定します。
図2では対収入比率は薬品比率が12.3%、材料比率が10.3%、医薬材料比率はあわせて22.6%となっています。これで黒字が2.3%になるというわけです。筆者が在籍していた病院は400床弱のDPC病院でしたが、薬剤比率が10%程度、材料比率が12~13%程度でした。一般的に医薬材料比率25%程度が、黒字病院のメルクマールになりますが、病院の性格によっても異なります。内科系の病院であれば薬剤比率が多くなりますし、循環器や整形などの手術が多く、高額のカテーテルや人工関節などを使う病院であれば、材料比率が高くなります。また、回復期の病院は、急性期に比べてそれほど高額の薬や材料を使わないので、医薬材料比率は15%程度が一つのメルクマールになります。このように、医薬材料比率が何%が適正かは病院の診療内容や種別によって異なりますので、自院の現状と同様の病院をベンチマーキングしながら目標を設定しなければなりません。
図2では対収入比率は薬品比率が12.3%、材料比率が10.3%、医薬材料比率はあわせて22.6%となっています。これで黒字が2.3%になるというわけです。筆者が在籍していた病院は400床弱のDPC病院でしたが、薬剤比率が10%程度、材料比率が12~13%程度でした。一般的に医薬材料比率25%程度が、黒字病院のメルクマールになりますが、病院の性格によっても異なります。内科系の病院であれば薬剤比率が多くなりますし、循環器や整形などの手術が多く、高額のカテーテルや人工関節などを使う病院であれば、材料比率が高くなります。また、回復期の病院は、急性期に比べてそれほど高額の薬や材料を使わないので、医薬材料比率は15%程度が一つのメルクマールになります。このように、医薬材料比率が何%が適正かは病院の診療内容や種別によって異なりますので、自院の現状と同様の病院をベンチマーキングしながら目標を設定しなければなりません。
[削減の実際の方法]
実際にどのように削減するかということですが、「費用=単価×量」のうち、まずは単価について削減しなければなりません。
王道はベンチマーキングと競争入札、それと粘り強い交渉力ですが、業者の整理統合も一つのポイントです。
筆者の在籍していた病院では、5つの薬剤卸が入っていましたが、どの卸も同一の値引き率で、価格は膠着状況になっていました。そこで、筆者はある一つの業者に絞り、大胆なシェアの拡大を提案すると同時に思い切った値引き率を提示するように要請しました。この方法が成功し、薬剤値引き率は最終的には10%台後半まで獲得することができました。
材料についても、ベースマーカーの値引き率が97%、消費税を含めれば逆ざやという状況でしたが、同じような手法により償還品の原価率を80%台前半にまで下げました。
100床規模の病院で薬剤卸が4社も5社も入っているところがあります。それぞれの得意品目で競わせているということですが、本当にそうでしょうか。そういう病院に限って価格の下げ止まりが起きているところが多いようです。業者を整理することにより、一社あたりのシェアを拡大するとともにスケールメリットを生かして共存協会を図りながら価格を下げることを是非検討してみる必要があります。
医師の協力に裏付けられたメーカーとの交渉も重要です。もちろん病院が直接メーカーと交渉することは禁じられていますが、卸各社の経営状況を考えるときにメーカーの協力を要請することは避けては通れません。これには、ある程度の購買力を背景にした高度な交渉力が必要ですが、まだされていないならば、一度試してみてはいかがでしょうか。
量の削減は、医療従事者も意識して取り組んでいますが、これにもベンチマーキングが必要です。市販のソフトなどで、診断群ごとの薬剤の使用量などが一目瞭然で比較できるようになっています。筆者のいた病院では、この比較により眼科の術後の抗生剤使用を半減し、コスト削減に成功しました。
【2022. 9. 15 Vol.552 医業情報ダイジェスト】
王道はベンチマーキングと競争入札、それと粘り強い交渉力ですが、業者の整理統合も一つのポイントです。
筆者の在籍していた病院では、5つの薬剤卸が入っていましたが、どの卸も同一の値引き率で、価格は膠着状況になっていました。そこで、筆者はある一つの業者に絞り、大胆なシェアの拡大を提案すると同時に思い切った値引き率を提示するように要請しました。この方法が成功し、薬剤値引き率は最終的には10%台後半まで獲得することができました。
材料についても、ベースマーカーの値引き率が97%、消費税を含めれば逆ざやという状況でしたが、同じような手法により償還品の原価率を80%台前半にまで下げました。
100床規模の病院で薬剤卸が4社も5社も入っているところがあります。それぞれの得意品目で競わせているということですが、本当にそうでしょうか。そういう病院に限って価格の下げ止まりが起きているところが多いようです。業者を整理することにより、一社あたりのシェアを拡大するとともにスケールメリットを生かして共存協会を図りながら価格を下げることを是非検討してみる必要があります。
医師の協力に裏付けられたメーカーとの交渉も重要です。もちろん病院が直接メーカーと交渉することは禁じられていますが、卸各社の経営状況を考えるときにメーカーの協力を要請することは避けては通れません。これには、ある程度の購買力を背景にした高度な交渉力が必要ですが、まだされていないならば、一度試してみてはいかがでしょうか。
量の削減は、医療従事者も意識して取り組んでいますが、これにもベンチマーキングが必要です。市販のソフトなどで、診断群ごとの薬剤の使用量などが一目瞭然で比較できるようになっています。筆者のいた病院では、この比較により眼科の術後の抗生剤使用を半減し、コスト削減に成功しました。
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