病院・診療所
警察、弁護士から来院患者の照会があった場合の対処方法は?
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
【相談内容】
近畿地方の外科系の有床診療所の院長からの相談です。
「最近、警察や弁護士から電話で当院の患者さんに関する照会が数件ありました。回答することは個人情報保護法に抵触しないのか?また、どのように対応すべきか教えてほしい」というご相談がありました。
「最近、警察や弁護士から電話で当院の患者さんに関する照会が数件ありました。回答することは個人情報保護法に抵触しないのか?また、どのように対応すべきか教えてほしい」というご相談がありました。
【回 答】
今回はQ&A形式にて回答させて頂きます。
質問1) 警察からの電話で、患者の病名などについて問い合せがありました。患者情報を電話にて回答しなければならないのでしょうか?
回答1) 電話照会は電話の相手が警察官かどうかの確認もできませんし、記録も残りませんので、原則としてお断りすることをお勧めします。まずは公文書等による照会を要求することをお勧めします。
質問2) 弁護士から弁護士法23条にもとづく弁護士照会ということで患者の照会書類を送付するので回答してほしいという依頼がありました。弁護士照会は個人情報保護法に抵触しないのでしょうか?
回答2) 弁護士会から照会が行われる場合があります。弁護士会照会と呼ばれるものです(弁護士法23条の2)。これは弁護士が受任した訴訟などに関して証拠を収集する等の場合に、当該弁護士が所属する弁護士会に依頼し、当該弁護士会が団体等に照会を行うものです。この照会も弁護士法に根拠規定があるため、回答を行っても個人情報保護法違反とはなりません。
しかし刑事・民事上の守秘義務との関係では、弁護士会照会は罰則規定のない、言ってみれば“法的効力の弱い照会”であることから、無制限に回答を行うことには慎重にして頂くことをお勧めします。
厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報ガイダンスQ&A」のQ4-4の解説は、弁護士会照会への対応について、回答することは個人情報保護法23条に抵触しないとしつつも、回答するか否かは「個別の事例ごとに判断が必要」と明記しています。
質問3) 警察署長から「捜査関係事項照会書」と題する書面が届きました。照会事項は、当院に通院している患者さんの「病名と通院期間」です。回答しなければなりませんか。患者さんの同意を得ずに回答した場合、個人情報保護法違反にならないでしょうか?
回答3) 「捜査関係事項照会書」は、刑事訴訟法197条2項に基づく照会で公文書ですが、任意捜査ですので医療機関には照会に応ずる法的義務まではありません。しかし、患者の病名や通院期間のように、カルテを見れば容易に回答できる事実の照会には、回答するのが一般的です。なお、この照会に対する回答は、個人情報保護法の「法令に基づく場合」に該当するので、患者の同意がなくても、同法違反にはなりません。
警察からの患者照会に関する公文書の様式は警察署によって若干の違いはあるものの、おおむね下記のような様式になります。ご参考にしていただければ幸いです。

質問4) 照会事項は、当院の患者さんBさんの「カルテおよびクリニックが採取した血液の検体」の任意提出です。Bは殺人事件の被害者であり、当院にてすでに死亡しているので、Bの同意は得られませんが任意提出に応じるべきでしょうか。
回答4) 任意提出ですから、クリニックが応じないことも可能です。ただ、今回のケースでは、警察がBさんを被害者とする殺人事件の捜査を行っており、その証拠としてカルテおよび血液の検体を必要としているものと推察されますので、貴院が任意提出することは、犯人を処罰することに役立つのでBさんの意思に反するものではないと考えられます。また、貴院が拒絶した場合、警察は裁判所の捜索差押令状をとって差押えることも可能です。いずれ提出させられる可能性がありますので、このケースでは応じて頂くことをお勧めいたします。
以上のとおり、警察、弁護士からの照会は個人情報保護法には抵触しませんし、できる範囲で協力頂くことをお勧めしますが、回答する内容については個別の事例ごとに判断し慎重にご回答頂くことをお勧め致します。
【2022. 12. 15 Vol.558 医業情報ダイジェスト】
質問1) 警察からの電話で、患者の病名などについて問い合せがありました。患者情報を電話にて回答しなければならないのでしょうか?
回答1) 電話照会は電話の相手が警察官かどうかの確認もできませんし、記録も残りませんので、原則としてお断りすることをお勧めします。まずは公文書等による照会を要求することをお勧めします。
質問2) 弁護士から弁護士法23条にもとづく弁護士照会ということで患者の照会書類を送付するので回答してほしいという依頼がありました。弁護士照会は個人情報保護法に抵触しないのでしょうか?
回答2) 弁護士会から照会が行われる場合があります。弁護士会照会と呼ばれるものです(弁護士法23条の2)。これは弁護士が受任した訴訟などに関して証拠を収集する等の場合に、当該弁護士が所属する弁護士会に依頼し、当該弁護士会が団体等に照会を行うものです。この照会も弁護士法に根拠規定があるため、回答を行っても個人情報保護法違反とはなりません。
しかし刑事・民事上の守秘義務との関係では、弁護士会照会は罰則規定のない、言ってみれば“法的効力の弱い照会”であることから、無制限に回答を行うことには慎重にして頂くことをお勧めします。
厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報ガイダンスQ&A」のQ4-4の解説は、弁護士会照会への対応について、回答することは個人情報保護法23条に抵触しないとしつつも、回答するか否かは「個別の事例ごとに判断が必要」と明記しています。
質問3) 警察署長から「捜査関係事項照会書」と題する書面が届きました。照会事項は、当院に通院している患者さんの「病名と通院期間」です。回答しなければなりませんか。患者さんの同意を得ずに回答した場合、個人情報保護法違反にならないでしょうか?
回答3) 「捜査関係事項照会書」は、刑事訴訟法197条2項に基づく照会で公文書ですが、任意捜査ですので医療機関には照会に応ずる法的義務まではありません。しかし、患者の病名や通院期間のように、カルテを見れば容易に回答できる事実の照会には、回答するのが一般的です。なお、この照会に対する回答は、個人情報保護法の「法令に基づく場合」に該当するので、患者の同意がなくても、同法違反にはなりません。
警察からの患者照会に関する公文書の様式は警察署によって若干の違いはあるものの、おおむね下記のような様式になります。ご参考にしていただければ幸いです。

質問4) 照会事項は、当院の患者さんBさんの「カルテおよびクリニックが採取した血液の検体」の任意提出です。Bは殺人事件の被害者であり、当院にてすでに死亡しているので、Bの同意は得られませんが任意提出に応じるべきでしょうか。
回答4) 任意提出ですから、クリニックが応じないことも可能です。ただ、今回のケースでは、警察がBさんを被害者とする殺人事件の捜査を行っており、その証拠としてカルテおよび血液の検体を必要としているものと推察されますので、貴院が任意提出することは、犯人を処罰することに役立つのでBさんの意思に反するものではないと考えられます。また、貴院が拒絶した場合、警察は裁判所の捜索差押令状をとって差押えることも可能です。いずれ提出させられる可能性がありますので、このケースでは応じて頂くことをお勧めいたします。
以上のとおり、警察、弁護士からの照会は個人情報保護法には抵触しませんし、できる範囲で協力頂くことをお勧めしますが、回答する内容については個別の事例ごとに判断し慎重にご回答頂くことをお勧め致します。
【2022. 12. 15 Vol.558 医業情報ダイジェスト】
同カテゴリーの記事:

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20
[事務れんらクンの更新情報]
2025-03-02「医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」を追加しました
2025-03-01
「疑義解釈資料の送付について(その20)」を追加しました
2025-02-01
「疑義解釈資料の送付について(その19)」を追加しました
[新着記事]
2025-03-07薬局の収益性
2025-03-07
ベースアップ評価料の算定にチャレンジしょう!①
2025-03-07
医療機関の固定資産管理について考える①
2025-03-04
災害薬事を考える
2025-02-25
新入院患者数の動向は?
2025-02-21
新たな地域医療構想の方向性
2025-02-21
言いにくいことと、聞きにくいこと
2025-02-19
医療機関におけるジョブポスティングについて考える
2025-02-17
未熟な新人スタッフを教育し成長させた事例
2025-02-14
乳房トモシンセシス加算と読影料の留意点