病院

24年度改定を踏まえた地ケアの役割見直し

病床高回転化により年々厳しくなる高稼働率維持
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■病床高回転化により年々厳しくなる高稼働率維持

診療報酬改定のたびに重症度、医療・看護必要度は厳格化されている。おそらく2024年度改定でもその流れは変わらないだろう。もし看護必要度の評価項目からADLを評価するB項目がなくなれば、基準のクリアにはこれまで以上に病床高回転化が求められると見ている。加えて、患者の高齢化や周辺急性期病院との患者確保競争の激化により、手術患者の確保も難しくなっている。その結果、急性期病床では高い稼働率の維持が厳しく、病院経営上、大きな課題と感じているところが少なくない。
2014年度の診療報酬改定で地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料が新設され、サブアキュート・ポストアキュート患者の受け皿として、全国で整備が進んだ。急性期病床の病態が落ち着いた患者を院内の地域包括ケア病棟(以下、地ケア)へ転棟させることで、急性期病床の看護必要度の基準をクリアし、かつ、病院全体の稼働を維持できる。さらには、患者の病態や患者家族などの事情に応じ、リハビリを強化するといった取り組みができるなど、ある程度時間的余裕を持った退院調整ができる。これらの多くのメリットがあるため、地ケアは使い勝手のよい病床として認識されてきた。

■ これまでのテクニック、院内転棟の基準クリアに白内障・ポリペクの直接入院

しかし、20・22年度改定で院内転棟に対する制約が厳しく課せられたことで、少し風向きが変わった。200床以上の病院が地ケアを持つことの意味が問われるようになった。地域に果たす役割の明確化、医療資源の効率的な利用を促す意味で致し方ない方向性と言える。ただし、テクニカルには、白内障やポリペクの患者を地ケアに直接入院させることで、院内転棟割合を下げ、在宅復帰率を上げることが可能であった。
実際、病床機能報告のデータで入院料別に手術部位の割合を比較すると、地ケアは明らかに眼科の割合が高かった=グラフ1=。さらに地ケアについて、院内に急性期病棟を持っているか否かで比較すると、急性期病棟を持つ場合、すなわち、急性期病棟から地ケアに転棟するケースが多いと思われる場合は、手術患者の半数以上が眼科だった=グラフ2=。
急性期病棟をより重症度の高い患者で有効利用する観点から、このような院内の「病床機能分化」は決して間違いではない。しかし、一方で、白内障手術の外来移行などが進まない理由であったことも否めないだろう。

グラフ1  入院料別 手術患者の手術部位割合

グラフ2  院内の急性期病棟有無別 地ケアにおける手術患者の手術部位割合


■地域ニーズに応じた役割見直しを

白内障手術の外来実施は、諸外国と比較し日本は割合が低く、さらに日本国内でも地域差があることが指摘されている。

資料 1  白内障手術の外来実施割合(OECD加盟国比較、都道府県比較)


地ケアの院内転棟クリアのテクニックとなっている白内障入院などの手段を封じることは、白内障手術の外来移行に有効だろう。加えて、院内転棟の制約の厳格化は、地域包括ケアシステムの要として、在宅や介護施設、他院からの患者を積極的に受けることにもつながる一石二鳥の対策と言える。
中医協での議論を踏まえると、短期滞在手術等基本料3の患者は、地ケアの各種実績要件の計算対象から除外されることがほぼ確実だろう。総病床数200床以上で地ケアを持っているところは改めて地域における自院の地ケアの役割を見直す必要がある。もし地域にサブアキュート・ポストアキュートの資源が十分あるならば、地ケアを廃止やダウンサイジングを検討すべきかもしれない。また200床未満であっても、昨今の救急搬送の受け入れの議論等を考えると、地域の課題に応じた役割の見直しをすべきだろう。


【2024. 1. 15 Vol.584 医業情報ダイジェスト】