組織・人材育成

褒めたのに!

新人さんとの向き合い方について考える
株式会社メディフローラ 上村 久子
2024年度がスタートした4月にこの原稿を書いています。2024年度診療報酬改定の施行は6月ですが、4月から新入職員を迎えた職場は多いのではないかと思います。新人さんと言えば、「最近の若い人との接し方が分からない…」というご相談をよく伺います。今回はそんなイマドキ新人さんに対して一生懸命褒めることを意識した院長先生のケースをご紹介することで、より良い新人さんとの向き合い方について考えていきたいと思います。

ケース:

新人看護師Aさんとの接し方に悩むクリニックの院長先生のお話です。
Aさんは非常におとなしくコミュニケーションが苦手で人見知りなのですが、ご両親の勧めもあり、看護師の資格を取得しました。Aさんの努力が実り看護師免許を取得するものの、新卒採用時期に体調を崩したことから学校卒業後は自宅療養に入り、その後、初めての就職先としてこのクリニックを選んだという経緯があります。

実はこのクリニックで「新卒」を採用するのは初めて!これまで組織開発を学んできた院長先生はAさんの背景を把握した上で「うちのクリニックで育てる!」と意気込んでいました。
院長先生はAさんが委縮しないよう、出来たことを大げさに褒め、明るい雰囲気を保つよう努めていました。
Aさんは最初、その雰囲気に少しずつ心を開いていたようですが、技術やスキルの取得について思うようにいかない場面が徐々に増えてきたのでした。院長先生はそれでも少しでも出来たところを褒めていましたが、なかなか出来ることが増えない状況にもどかしい思いを抱えていました。

ある時、Aさんに出来ない部分の指導をしていると、Aさんの表情が暗くなっていることに気が付きます。
院長先生は内心「暗い表情で、返事もしているのか、していないのか、という状態の人の相手は正直しんどい…」と、モヤモヤが募ります。

Aさんはその後、徐々に出勤時や退勤時の挨拶が無くなっていき、職場の雰囲気がかなり悪化してしまっているとのこと。

院長先生「褒めて育てようと意気込んでいましたが、Aさん自身がコミュニケーションを取ろうとしないので…分かってもらうにはどうしたら良いのか…」

このケース、どのような感想を持ちましたか?
新人さんに対して「辞められてしまったら困る!」と褒めて育てることを意識して接していると語られるリーダーの方は少なくありません。褒めることは「認める」ことに繋がりますので、デジタルネイティブ世代にとって承認を意味するSNSにある「イイね!」や「GOODボタン」の重要性を考えると非常に有効なコミュニケーション手法だと考えます。一方で、「褒める」内容を吟味する必要はあると私は考えます。

「褒める」には2種類あると考えます。例えば、お子様がパズルを完成させた際に、以下のどちらの意味に近い褒め方をされますか?

①完成させてスゴイ!

②最後まであきらめないでスゴイ!

この2つは明確に違いがあります。①は結果を褒めており、②はプロセスを褒めているという違いです。つまり、①は自分ではコントロール出来ないもの、②は自分でコントロール出来るものと言い換えることが出来ます。

今回ご紹介したケースの場合、出来ているという結果を重視して褒めており、確認したところ院長先生はプロセスについてはコメントしていませんでした。Aさんにとって、結果という自分にコントロール出来ないものばかり評価されていたということは、望ましい結果が出ない状況では自分は褒められないため、「私は承認されていない」という自己認識から否定的な思考になり、前向きなコミュニケーションという行動が伴わなくなってしまったのです。

結果を褒めることは決して悪いことではありません。出来たことについて承認することは大切です。
ただ、それだけに偏ってしまうと結果が伴わない場合に自己否定に陥り兼ねません。承認をする、ということをご本人のより良い改善に向けたモチベーションにするためには、ご自身でコントロール出来る“過程”を褒めることも意識しては如何でしょうか。きっとより良い反応が得られると思いますよ!ご自身が誰かを褒めるときに使われる「言葉」に注目してみてくださいね。


【2024. 5. 1 Vol.591 医業情報ダイジェスト】

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